「卵を一つのかごに盛るな」という投資の格言がある。しかし、分散投資をするにしても、やみくもにさまざまな資産に投資すればいいというわけではない。相関係数について知り、異なる値動きをする資産にバランスよく投資することが大切だ。今回は、分散投資をするうえで重要な相関係数について、詳しく解説していく。
相関係数とは ? 効果的に分散投資をするために
相場は常に変動リスクにさらされている。相場の変動リスクを低減するうえで、分散投資は効果的な手法だ。
1つの商品に100万円を投資している場合と、異なる値動きをする5つの商品に20万円ずつ投資している場合を考えてみてほしい。後者の方がリスクが低いのは明白だろう。これが「卵を一つのかごに盛るな」という格言が表す分散投資の効果だ。
しかし、ひとくちに分散投資をするといっても、何を基準に商品を選ぶべきか悩む人が多いだろう。分散投資をする時の基準の1つに、相関係数がある。
相関係数とは、2つの変数の間にある関係性を測る指標だ。相関係数はマイナス1からプラス1の間で表される。プラスなら正の相関関係があるといい、マイナスなら負の相関関係があるという。相関係数が0である場合は、2つの変数は独立していることになる。
投資においては、商品の連動性を明らかにする際に相関係数が用いられている。相関係数を理解することで、「卵を一つのかごに盛るな」という格言を本当の意味で活かせるだろう。
事例で学ぶ相関係数 ! 分散投資をするなら負の相関に注目
続いては、事例をもとにより具体的に相関係数について解説していく。
たとえば、コロナウイルスの影響で人々が自宅で過ごすようになり、外食産業は深刻な打撃を受けた。一方で、スーパーマーケットでは売上高が増加している。この場合、外食産業とスーパーマーケットの株価を集計すると、相関係数はマイナスになり、負の相関関係がみられる可能性がある。
一方、人々が自宅で過ごす時間が増えることで、動画サービスを提供する会社の売上高が増えたとする。この場合、スーパーマーケットと動画サービスを提供する会社の株価を集計すると、相関係数はプラスになり、正の相関関係がみられるかもしれない。
つまり、相関係数がプラスで正の相関関係にある商品をいくつも選んで分散投資をしても、実は全くリスクを低減できていない可能性がある。分散投資では、負の相関関係にある商品を選び、価格の変動リスクを商品同士が打ち消し合うようにすることが重要だ。
相関係数を使って急落に強いポートフォリオを組む
私たちが支払った年金保険料を運用する機関である年金積立金管理運用独立行政法人 (GPIF) は、2018年度末のポートフォリオ検証するにあたり使用した債券と株式に関する相関係数として、以下のデータを公表している。
- 国内株式―国内債券 相関係数-0.16 負の相関関係
- 外国債券―国内債券 相関係数-0.26 負の相関関係
- 外国株式―国内債券 相関係数-0.33 負の相関関係
- 外国債券―国内株式 相関係数0.14 正の相関関係
- 外国株式―国内株式 相関係数0.79 正の相関関係
- 外国株式―外国債券 相関係数0.52 正の相関関係
他にも、より詳細な投資商品ごとの相関係数も色々なサイトで公表されているため、分散投資をする際には積極的に参考にするようにしたい。大切なのは、相関係数がマイナスの資産を組み合わせ、価格変動リスクを抑えることだ。
たとえば、リターンが低くあまり魅力的に見えない投資商品であっても、自分がメインで保有している投資商品と負の相関関係にあるなら、リスクヘッジとしてポートフォリオに加えるのも1つだ。
投資商品のリターンだけに注目したり、さまざまな種類の商品に分散投資したりするだけでは、急落時に大きな損失を出してしまうだろう。しかし、相関係数に注目したポートフォリオを組むことで、相場が急落した時も、あわてることなく落ち着いて対処できる。
相関係数について理解して賢く活用し、より分散投資効果を高めるようにしたい。(提供:大和ネクスト銀行)
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