アレクサとの対話ではまりがちなサイクル

さてアマゾンの「エコー」というスマートスピーカーのサービスもユーザーを拡大しています。スピーカーに向かって「アレクサ、今日の天気を教えて」みたいに使うアレです。

スマートスピーカーの向こうにいるアレクサとはアマゾンの人工知能の名前で、あなたの嗜好を学習しながら、天気を教えてくれたり、アマゾンでの買い物をしてくれたりと徐々になじんだサービスを提供してくれるものです。

そして、個人にとって人工知能が一番なじむ領域が、音楽のチョイスです。

アマゾンには何段階かの音楽ダウンロードサービスがあって、無料のものから有料の価格が高くなるに従って、選べる曲の数が増えてきます。

それをアレクサと対話しながら、「この曲をまたかけて」とやっているうちに、どんどんアレクサが好みを覚えてくれて、自宅の室内のBGMがだんだん洗練されて、居心地がよくなってくるわけです。

無料ないしは定額で選べる音楽のラインナップもうまくできていて、たとえば好きなアーティストの曲を聴いていて、同じアーティストの別の曲をリクエストすると、それが有料だったりします。

でも、「今聴きたい」と思うと、結構気軽にそれを買ってしまう。そうやって、ライブラリの中に自分が購入したお気に入りの音楽が増えていくのです。

そして一度このサイクルにはまってしまうと、音楽はオンラインダウンロードでしか買わなくなるという現象が起きてしまいます。

すでにダウンロードの増加とメガヒット曲の減少で、音楽メディア販売業態の経営は苦しくなっていますが、アマゾンがそこにとどめを刺しに来ます。

このような未来が予測される中で、アマゾンエフェクトの影響を受ける小売業態、メディア業態では未来予測を先回りした戦略対応が求められているのです。

鈴木貴博(経営戦略コンサルタント)
(『THE21オンライン』2020年07月13日 公開)

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