国内企業物価は前月比で再び下落に転じる

企業物価指数
(画像=PIXTA)

10月12日に日本銀行から発表された企業物価指数によると、20年9月の国内企業物価指数は前年比▲0.8%(8月:同▲0.6%)と7ヵ月連続のマイナスとなり、下落幅は前月から拡大した。事前の市場予想(QUICK集計:前年比▲0.5%、当社予想も同▲0.5%)を下回る結果となった。また、消費税を除いた9月の国内企業物価指数は、前年比▲2.3%(8月:同▲2.2%)と16ヵ月連続のマイナスとなった。

世界的な経済活動の再開に伴い、非鉄金属が前年比7.6%(8月:同6.6%)と3ヵ月連続の上昇となったものの、前月までの国内企業物価の持ち直しの主因であった石油・石炭製品(消費税を含むベース)が、原油価格の頭打ちを受けて前年比▲13.9%と前月(同▲14.0%)からほぼ横ばいとなったことや、農林水産物の下落幅拡大(8月:前年比▲0.3%→9月:同▲2.0%)などが国内企業物価のマイナス幅を拡大させる要因となった。

国内企業物価指数は前月比では▲0.2%(8月:同0.1%)と4ヵ月ぶりに下落に転じた(夏季電力料金引き上げの影響を除くと前月比▲0.1%)。前月比で内訳をみると、ガソリン(8月:前月比3.7%→9月:同▲0.1%)、灯油(8月:同7.9%→9月:同▲0.3%)、軽油(8月:同7.9%→9月:同▲0.2%)が4ヵ月ぶりにマイナスに転じたものの、ジェット燃料油が同5.3%(8月:同6.3%)のプラスとなったため、石油・石炭製品は前月比0.1%(8月:同4.4%)とかろうじて前月比プラスを維持した。また、非鉄金属は同0.9%(8月:同2.8%)と5ヵ月連続のプラスとなった。一方、既往の原油安を受けて、電力・都市ガス・水道が前月比▲1.4%のマイナスとなったほか、農林水産物(同▲0.6%)や金属製品(同▲0.4%)などが前月から下落し、国内企業物価を押し下げた。

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(画像=ニッセイ基礎研究所)

輸入物価は持ち直しペースが鈍化

20年9月の輸入物価指数(1)は、契約通貨ベースでは前月比0.4%(8月:同1.6%)と4ヵ月連続のプラスとなったものの、上昇幅は前月から鈍化した。一方、9月の円相場は前月比▲0.3%の円高水準となったことから、円ベースでは前月比0.2%(8月:同1.1%)となり、上昇幅は契約通貨ベースを下回った。

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(画像=ニッセイ基礎研究所)

契約通貨ベースで輸入物価指数の内訳をみると、経済活動の再開に伴う需要の増加により、金属・同製品が前月比2.3%(8月:同4.0%)と4ヵ月連続でプラスとなった。また、原油の上昇(8月:前月比23.6%→9月:同3.6%)などにより、石油・石炭・天然ガスは前月比0.6%(8月:同4.7%)と4ヵ月連続のプラスとなった。一方、電気・電子機器(前月比▲0.1%)や繊維品(同▲0.1%)はマイナス寄与となった。

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(1)輸入物価指数は、消費税を除くベースで作成されている

先行きは前年比▲2%前後の推移が続く見込み

20年9月の需要段階別指数(国内品+輸入品)(2)をみると、素原材料が前年比▲17.9%(8月:同▲20.0%)、中間財が前年比▲3.2%(8月:同▲3.1%)、最終財が前年比▲1.7%(8月:同▲1.5%)となった。国際商品市況の持ち直しを受けて素原材料の下落幅が縮小を続けている一方、国内の最終需要が弱いため川下への価格転嫁が抑制されており、中間財、最終財の持ち直しは頭打ちとなっている。

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(画像=ニッセイ基礎研究所)

また、消費者物価(生鮮食品を除く総合)と関連性の高い消費財は前年比▲2.2%(8月:同▲2.0%)と17ヵ月連続のマイナスとなった。

世界的な経済活動の再開に伴い国際商品市況は回復が続いていたが、欧米における新型コロナウィルスの感染再拡大などを受けて原油価格の上昇が頭打ちとなるなど、商品市況の持ち直しペースはこのところ鈍化している。今後も世界経済は弱い動きが続くとみられ、商品市況の更なる上昇余地は限定的だろう。10月には消費税率引き上げによる押し上げ効果が剥落するため国内企業物価指数のマイナス幅はさらに拡大し、当面は前年比▲2%前後での推移が続く公算が大きい。

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(2)需要段階別指数は、消費税を除くベースで作成されている


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藤原光汰(ふじわら こうた)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部 研究員

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