(本記事は、遠畑雅氏の著書『仕組み化であなたの物件の稼働力と収益力を最大化』サンライズパブリッシングの中から一部を抜粋・編集しています)
問題物件でも改善の余地はある?
問題がひとつもない100点満点の物件など、この世には存在しません。とは言え、仮に60点の物件でも、あらゆる手段を駆使して100点満点に近づける努力をするのが、賃貸業を営む不動産オーナーとしての仕事だと考えています。
100点満点を目指すためには、物件を可能な限り100%稼働させ続けることと、物件から生み出される収益を最大化していくことが必要です。収益の最大化を狙うには、売上を上げるか、経費を下げるかの2つの方法しかありません。
物件の稼働を上げるためには、空室を埋めるリーシングを促進しなければなりません。
「問題物件や不利な融資条件で物件を購入してしまい、高値掴みをしてしまった」「修繕費がかかり過ぎる」「金融機関への返済金額が大きい」など、不動産オーナーは様々な悩みを抱えていることと思います。
そのような問題物件は売却してしまう、という選択肢ももちろんありますが、ここ数年以内に購入した物件は金融機関への返済が進んでおらず、大抵は残債が売却価格を上回ってしまい、儲けが出ないばかりか相当な現金の内入れをしないと売却は難しいでしょう。
購入してしまった以上は、不動産オーナーとして所有物件ときちんと向かい合うしかありませんが、物件のどの部分が「問題」なのか、オーナー自身がきちんと把握できていないケースも多々あります。
一方で、想定どおりのキャッシュフローが出ている90点くらいの物件でも、問題が顕在化していないだけで、将来起こり得るリスクを抱えている可能性もあります。
そのため人間と同様に、物件も定期的に“健康診断”を行うことが有効で、そうすれば問題が発生する前に様々な対策を講ずることが可能となるのです。
弊社では不動産オーナーとのコンサルティングの際に、図1−3のチェックシートを用いて、物件の管理運営状態を項目ごとに赤(要対応)・青(問題なし)・黄色(注意)に色分けしています。すると、どこに問題があるかが明確になるとともに、着手すべき事項が整理されて優先順位が見えてくるのです。
こうして、不動産の管理運営状況の各項目を「要対応」「問題なし」「注意」の3つに区分けした上で、まずは「要対応」から着手し、次に「注意」に対応していくという流れです。
図1−3の例では、管理会社、客付け、リフォーム会社、融資に問題があり、「要対応」となっています。
しかし、管理会社に問題があると言っても、管理委託費が高いのか、管理の仕事の内容に問題があるのか、または管理会社の担当者の仕事ぶりに要因があるのかを知るためには、より詳しいヒアリングが必要です。問題の事象と解決策を一緒に考えていき、弊社コンサルタントから解決に結びつく適切な意見をお伝えしています。
このように、ヒアリングによる分析結果をもとに、不動産オーナーに第三者意見をお伝えすることを弊社では「セカンドオピニオンサービス」と呼んでいます。医療業界でセカンドオピニオンは、かかりつけ医(主治医)以外の医師に求める第2の意見と定義されますが、物件についても同様に、主観を入れずに第三者の意見として客観的に分析することによって、問題点を顕在化できます。
具体的には、前述のチェックシートを用いて物件の管理運営状態を把握した上で、マーケティング分析を行い、物件のソフト戦略、ハード戦略の両面からのアプローチを行います。
マーケティング分析とは、物件の競争環境をリサーチして、物件そのものの特徴や競争力を把握することです。そして、物件に入居していただくお客様である入居者像(ペルソナ)を明確にします。単身者、DINKS、ファミリーでそれぞれ戦略が異なるため、この分析結果は物件のソフト戦略、ハード戦略の重要なベースとなるのです。
ソフト戦略とは、入居の募集条件、募集対象を指します。つまり、マーケティング分析を通じて導き出された適正な家賃設定や入居者像をもとに、リーシングを促進するなどが代表的です。長らく空室が続いている物件でも、募集条件を少し調整したり、入居者のターゲットを緩和するだけで、入居が決まるケースも少なくありません。
対するハード戦略とは、物件の建物、設備、部屋の内装などに関わる戦略を指します。まず基本となるのが3S(整理、整頓、清掃)です。どんなに良い物件でもごみが散らかっていたり、放置自転車が敷地内に置いてあったら、印象が悪いのは言うまでもありません。日頃から、管理会社に徹底した定期清掃を依頼することが必要となります。
また、必要に応じて人気設備を取り入れることも、ハード戦略のひとつです。これはあくまで、マーケティング分析よる入居者像(ペルソナ)に合うものを揃えることが前提です。近年は30代以上の単身者も多く、目の肥えた方も増えています。アクセントクロスやホワイト系のフローリングで内装をおしゃれに見せることは、競合物件との差別化に有効です。これには高級ホテルの内装などが参考になるでしょう。
さらに、最近ではコロナ禍の影響で室内で過ごす時間が増えているので、宅配ボックスの需要も上昇しています。
そして、ハード戦略で最もコストがかかるのが、外壁塗装・屋上防水などの大規模修繕です。外壁塗装は物件の見た目の第一印象を左右する大切な要素ですが、長らく放置してしまうと塗装の防水機能が低下して、建物の劣化を早めてしまいます。こうした機能面を維持する意味でも、定期的に修繕を行う必要があるでしょう。
以上のように「セカンドオピニオンサービス」は、マーケティング分析の結果をもとに物件のソフト戦略、ハード戦略の両面からのアプローチを行うことを指します。
いかなる問題物件であっても改善の余地はあります。諦めずに解決方法を追求しましょう。
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