(本記事は、遠畑雅氏の著書『仕組み化であなたの物件の稼働力と収益力を最大化』サンライズパブリッシングの中から一部を抜粋・編集しています)
大空室時代の満室経営とは
日本の人口は2010年をピークに減少に転じており、図5−1のとおり2050年には総人口が1億人を割り込み、物件の借り手である生産年齢人口は3000万人以上減少することが予想されています。いずれにしても全体のパイは少なくなっていき、大空室時代を迎えるのは間違いなさそうです。
大空室時代では、全国の空室率が40%になるだろうとの試算もあります。これは主に次の3つが要因ですが、それぞれの対策をお伝えしましょう。
(1)世帯数の減少により賃貸住宅の需要が減少している
前述のとおり、人口減少に伴い世帯数は減少傾向にあります。ということは、賃貸住宅の需要も全国的に減少していることが容易に推測できます。このように、マクロかつ長期的な視点で見た場合、人口減少している日本で不動産投資をすることは理屈上は危険な行為に見えるでしょう。
しかしながら、日本という国単位ではなく、町や地域ごとの人口動態という見方をすると話は変わります。
2020年7月現在、日本という国には1億2600万人が住んでいます。人口が減少している地域が多いのは事実ですが、近年人びとは、郊外から都会、地方の中核都市に移動しており、むしろ流入超過で人口が増加している地域すらあるほどです。
ここで人口動態を把握する上で利用できる、便利なツールをご紹介しましょう。経済産業省と内閣官房が提供している「RESAS - 地域経済分析システム」です。
このツールを使えば、保有している物件がある市区町村の将来(2020年7月現在で2045年まで)の人口の動向がわかります。これから購入する物件の市区町村のリサーチをする場合にも便利ですので、ぜひ活用下さい。
実際、私も地方物件を複数所有していますが、満室経営が続いています。小さな市区町村でも隣接する地域が発達すれば、相乗効果により人口が増加する場合もあります。仮に人口が減少している町でも、これからお伝えする満室経営の方法を実践すれば、競合物件と戦っていける可能性もあります。
そのためには、これからの社会の動きを予測しなければいけません。利便性の低い市区町村は淘汰され、ミニ東京のような地方の中核都市の人口がさらに増えることも想定できます。また、新型コロナウイルス感染症の影響でリモートワークが根付いてくると、地方に住んで働くワークスタイルが定着して、地方物件の人気が出る可能性も考えられるでしょう。都心はOKで地方はNGと決めつけるのではなく、社会の動きや人口動態のリサーチを事前に徹底して行う必要があります。
(2)新築物件の過剰な供給
人口が減少しているにもかかわらず、新たに賃貸住宅が建設され続けているのはなぜでしょうか。これは、現金よりも収益用不動産を建てたほうが相続税の課税対象の評価額が下がることから、節税対策としてのニーズが高いためと言えます。また、アパート・マンションの新築業者が、地主にアプローチを続けていることも理由のひとつと言えるでしょう。
節税商品として物件を購入している層は不動産賃貸業のプロではありませんので、経営能力という観点からは競合とはなり得ません。むしろ、このようなオーナーが賃貸経営に行き詰まって物件が市場に安く放出されれば、安価で物件を購入するチャンスともなります。
(3)不動産オーナーの努力不足
これまで多くの不動産オーナーのコンサルティングや不動産投資のサポート業を行ってきましたが、賃貸経営がうまくいっている人とそうでない人は、はっきり分かれます。勝ち組物件と負け組物件は、ますます二極化していくとも考えられるでしょう。この違いの原因は不動産オーナーの「経営者」としての自覚の有無によります。
不動産オーナーにとって、空室は利益をもたらさない大きな機会損失であり、決して放置してはなりません。賃貸業は入居者に対するサービス業であるにもかかわらず、快適な住環境を提供するための修繕を過度に渋ったり、場当たり的な対応しかしない不動産オーナーが多いのが実情です。
そして、ケチで空室対策をロクに行わない不動産オーナーは、必ず没落していきます。ライバルが減っていくことで、結果として大空室時代は仕組み化オーナーにはかえって有利になるかも知れません。
自らも勉強を怠らず、各分野の専門家と二人三脚で賃貸業を営んでいる経営者こそ、勝ち組物件のオーナーであることには疑いの余地もありません。
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