D2Cと呼ばれるビジネス形態は、サスティナブルな社会への貢献と相性の良いものです。はたしてD2Cとはどのようなものなのでしょうか。本記事では、実際にサスティナブルなメッセージを持つD2Cビジネスの成功例とともに紹介します。

サスティナブルとは

ESG投資
(画像=new-africa/stock.adobe.com)

サスティナブル(Sustainable)とは「持続可能な」という意味で、最近よく耳にするサスティナブルな社会とは「持続可能な社会」という意味になります。持続可能な社会とは、環境や資源を保護し美しく住みやすい地球で生活し続けられる社会のことです。現代では、個人だけでなく企業や行政などの団体においてもサスティナブルな社会を実現するための貢献が求められています。

例えば個人であれば植樹をして山林を保護する活動やレジ袋を使わないことでゴミを減らし焼却処分の二酸化炭素排出を減らすことなどです。一方企業であれば地球温暖化を防ぐため工場や配送車の排ガスを減らしたり再生可能エネルギーを利用したりするなどの活動がサスティナブルな社会実現へつながります。

一般的には、環境対策が注目されますが他にも途上国の貧困是正や教育の普及、人権に配慮した社会などもサスティナブルな社会実現に必要な項目です。

D2C(Direct to Consumer)とは

D2C(Direct to Consumer)とは、ブランドが自社商品を流通業者や小売店を介さずネット上で直接ユーザーに販売する形態のことです。商品のブランディングや情報発信、広告、自社ECサイトの立ち上げと運営など販売にいたるすべての活動を自社で行います。なかには、店舗を持つD2Cブランドもありますが販売目的というより情報発信の場所としての意味が強く売上の主力はあくまで自社ECサイトです。

D2Cで注目される2つのメリット

D2Cビジネスは、問屋や広告にかかる中間経費がカットできることがメリットです。しかしこれは従来のネット通販と大きく変わりません。D2Cで特に注目されるメリットには主に以下の2つがあります。

1.ユーザーの声がリアルタイムに届く

1つ目のD2Cのメリットは、ユーザーの声がリアルタイムにブランド側に届くため、すぐに商品の改善や開発に反映できる点です。従来の販売形態では、ユーザーの声は小売店で止まってしまいブランド側には一部しか届かずしかも時間がかかっていました。しかしD2Cではユーザーから反応があればすべてがブランド側にリアルタイムで届くため、商品改善などへ短時間で反映できるメリットがあります。

2.商品の意図を正確に伝えやすい

2つ目のD2Cのメリットは、商品の意図やブランドポリシー、ミッションなどを正確にユーザーへ伝えやすいことです。従来のように商品の意図などの発信に外部の広告代理店や販売店が加われば、少なからずその真意が変わってしまうことがあります。また他社商品とともにAmazonなどのECサイトに並んでしまうとメッセージ自体が薄まってしまう可能性もあるでしょう。

手間はかかってしまう可能性はありますがD2Cによる情報発信や自社ECサイトの運営は、より正確に商品の意図などを伝えやすくなります。特にこの点がサスティナブルな社会を実現するためのメッセージを持つブランドにとってD2Cが最適な販売形態となっている理由です。

サスティナブルな社会貢献をするD2Cブランド

D2Cで発展を遂げているブランドはいくつかありますが、なかでもサスティナブルな社会貢献を打ち出して成功しているブランドを3つ紹介します。

1.Allbirds

Allbirds(オールバーズ)は、米TIME誌に「世界一快適な履き心地」と評された2016年創業のアメリカで話題のシューズブランドです。ウールやユーカリの木を使った生地、サトウキビを使ったソール、ペットボトルのリサイクルで作られた靴紐など商品に使われる素材から分かる通りプロダクトには環境負荷の低減が重視されています。

こうした取り組みへの支持者は、著名人にも多くGoogle共同創業者のラリー・ペイジらが愛用し俳優のレオナルド・ディカプリオは出資も行っています。Allbirdsでは、使用素材の配慮に加え商品ごとに環境負荷低減の割合を明確に表示。商品が製造される過程はもちろん廃棄されるまでを含め「温室効果ガスをどれくらい排出するのか」というカーボンフットプリントを数字で示すという徹底ぶりです。

こうした細やかな意図を明確にしかも細部までユーザーに伝えるには、D2Cという販売形態は最適と言えるでしょう。

2.Everlane

Everlane(エバーレーン)は、自社のECサイトでファッションアイテムを販売する2010年にアメリカで設立されたアパレルショップです。販売される商品のコストや製造工場、関税、輸送費などすべての費用をオープンにすることで「良質なものを良心的な価格で提供する」というブランディングに成功し熱狂的なファンを獲得しています。

またアルパカウールを使ったセーターやプラスチックを再生して作られたダウンジャケットなどサスティナブルなアイテムを積極的に提供。セーターなどで人気のあるカシミアは、カシミア種のヤギから採れますが、ヤギの飼育拡大によって放牧地周辺の砂漠化が起き問題となっています。一方アルパカは放牧規模が小さくウールを効率的に生産できるため、環境負荷が低いと考えて採用しているのです。

さらに技術開発の途中ですがカシミアのリサイクルにも取り組むなど環境への貢献に熱意を持って取り組んでいます。このような商品ごとの取り組みやブランドのコンセプトを自社ECサイトでダイレクトに伝えられているところがD2Cならではの成功例と言えるでしょう。

3.Cotopaxi

Cotopaxi(コトパクシ)はアメリカで2013年に創業したアウトドアグッズとアパレルを扱うD2Cブランドです。クエスティバルと呼ばれるアドベンチャーレースに参加している様子の写真を専用アプリにアップし、その評価点数を競うというイベントから始まった異色のブランドで、全米各地で開催されるこのイベントには毎回1,000人以上の若者が参加し、その体験によってCotopaxiのブランド人気が押し上げられています。

しかしCotopaxiが特に若い世代から絶大な人気を獲得しているのは、クエスティバルのイベントのおかげだけではありません。創業者のデイヴィス・スミスが子どものころに過ごしたドミニカ共和国で見た途上国の貧困問題を「何としても解決したい」というブランド・ミッションに若者たちは共感しているのです。

実際に売上の一部が貧困問題の解決へ充てられており、商品を買うことがサスティナブルな社会実現への取り組みにも参加できるとしてCotopaxiのブランド価値を高めています。こうしたアプリを活用したイベント人気と熱意ある社会問題解決のメッセージの組み合わせは、D2Cによってこそ実現できたものと考えられます。

サスティナブルとD2Cは相性がいい

紹介したD2Cで躍進しているブランドは、はっきりした商品の意図やブランドのポリシーを持っています。これはサスティナブルな社会に貢献するだけでなく多くのD2Cブランドに共通の特徴です。つまり自分たちに伝えたい明確な意図がありそれを確実にユーザーに届けたいブランドにとってD2Cは最適なビジネス形態と言えるでしょう。

サスティナブルな社会へ作り手として貢献することは、素材を選定したり製造方法を新たに考えたりするなど実際には思った以上に手間のかかることです。しかし明確な意図を熱意を持って伝えれば賛同するファンが生まれビジネスとして成立することを今回紹介したブランドは教えてくれています。

豊富な資金はまだなくてもサスティナブルな社会へのビジョンと熱意を持つ新興企業にとってD2Cはとても相性の良い手法と言えるのではないでしょうか。(提供:Renergy Online