正直なところ「ベンチマークの設定はなく、でも投資の着眼点は明確で分かり易い」という筆者でさえも「自信をもってお薦め出来る(日本の)投資信託」を見つけるのは容易ではない。当然、パフォーマンスも納得出来るもので無ければならないのだから。恐らく、このような状況は筆者がバークレイズでISSヘッドをしていた時も、多分それ以前もあまり変わっていない。現実問題として、筆者はISSヘッド時代にロンドン本社と何度も協議を重ね、外国籍の投資信託を特別に一度に15本も導入した経験がある。リーガル費用などが非常に高くつくので、最初はロンドンも「本当に残高を集められるのか?」と渋ったが、粘り強く交渉を続け、陥落させた。

日本の投資信託事情がこうなってしまった理由は、恐らく「アクティブ運用」という運用スタイルが曲解され、敬遠され、運用会社自体もそうした投資信託の新規開発にも、新規設定にも及び腰になってしまったからだと思う。何でもかんでも「手数料が安い投信≒良い投信」という安易な発想も向かい風を増幅している。毎度のことながら、販売会社がその気になってくれない限り、運用会社も赤字覚悟で冒険をすることは出来ないからだ。今では何らかのインデックスが絡んだパッシブ運用(ESG投資も含む)、ETF、ブルベア型、或いはレバレッジ型の投資信託が主流だろう。

投資は楽しみながら行うべきもの

投資信託,選び方
(画像= Graphs / pixta, ZUU online)

ただ筆者は「投資は楽しみながら行うべきもの」と考えている。それはレバレッジ投信の日々の値動きに「ワクワク、ドキドキ」して楽しむという心臓に負担を掛ける自虐的な楽しみ方ではなく、純粋に「良いなぁ」と思う会社の株式に投資し、その会社と同じ夢を見ながら、その成長を共に謳歌するという投資だ。そういう会社への投資でリターンが上がると自然と笑みがこぼれ、投資が楽しくなる。それが「知っている会社であり、分かっている会社」の成長をみる意義だ。

投資だから反対に値下がりして評価損となる時がある。「知っている会社であり、分かっている会社」ならば「もうちょっと頑張れ」と持ち堪えられるが、「知らない会社、分からない会社」だと、値上がり時は「凄いね」と思えるが、値下がり時は「なんか話が違う。なんだっけ、この会社」と狼狽するだけだ。これは個別株投資をする場合でも、投資信託を通じて投資をする場合でも一緒。

たとえば「GAFA」と呼ばれる銘柄群がある。「グーグル」「アマゾン」「フェイスブック」「アップル」の頭文字を並べたものであることは多くの人が承知しているだろう。しかし、「GAFA」のビジネスモデルをきちんと説明しろと言うと、意外と「適当で曖昧な知識」の人が多いのも事実だ。その延長線上に「だから私は個別株を止めて、インデックス運用のETFが良いと考え、S&P500連動型とナスダック総合指数連動型を買いました」という人が居る。時々心配になるのは、そういう人の何割がそのETFの中身を理解しているかということだ。つまり、どの程度「GAFA」が占有しているかということ。実際、ナスダックの時価総額の約4割が「GAFA」で、これにマイクロソフトを加えると約半分になる。充分に分散されたインデックス運用のETFを買ったと思いきや、実は半分はこの5銘柄への集中投資なのだ。

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ところで、前回の「ベンチマークも設定せず、業種分散も考慮しないポートフォリオで大丈夫」という話は筆者の仲間内でも中々刺激的だったようだ。諸手を挙げて賛成という投信会社の商品開発の人に「ならば何故こういう商品を作らないの」と問い返すと「良いと思っても耳年増になった周りの賢人達を説得するのが難しく、また簡単には現状販売会社がそんな話は聞いてくれない」という。別の人からは「だから面白い投資信託が生まれない一方で、能書きだけのファンドしか出て来ない」とも言われた。実はこの方はポートフォリオ理論などアカデミックな世界の専門家だ。筆者の猿知恵ではそっちの議論で勝つ自信は無い機関投資家だが「投資は楽しみながら行うもの」という点は賛同してくれる。恐らく、職務上で関わる運用があまり楽しみがあるスタイルではないからだろう。

そこで、筆者が大言壮語の口から出まかせを言った訳ではない証を示すために、下記に一枚のチャートを用意した。まずはご覧あれ。