本記事は、安田正氏の著書『デキる人はこっそり使ってる! 人を動かす20の質問術』(ポプラ社)の中から一部を抜粋・編集しています
お悩み 相手が黙りこくって下を向いてしまう
あなたがいつも気にかけている後輩が、出先からトボトボと帰ってきました。
やる気はあるのになかなか結果が出せなくて、「今日も契約がゼロでした」とションボリしています。
こんなときは、ひと声はげまして、頼れる先輩ぶりをアピールしたいですよね。
そんなわけで、あなたはこう声をかけてみました。
「なあ。お前、どうして契約が取れないんだと思う?」
「何がダメなのか考えてみよう」と解決策を探らせる、一見「いい質問」に思えますよね。
ところが後輩のションボリくんは、なぜか黙って下を向いてしまいました。
まるで、あなたに叱られてショックを受けたとでもいうように……。
一体、この質問の何がいけなかったのでしょうか?
ひとつの質問の中に複数の質問を混ぜていませんか?
結果が出せない後輩くんに対して「どうして契約が取れないんだと思う?」と質問することが、なぜダメなのか?
それは、「ひとつの質問の中に複数の質問を混ぜてしまっている」からです。
それは、こんなシーンを想像してみるとわかるのではないでしょうか。
あなたはテニスの初心者で、テニススクールに通い始めたばかり。しかし、なかなか上手にボールを打ち返すことができません。
すると、先生が「横を向いてボールを打ちましょう」とアドバイスをくれました。
アドバイスを聞いたスクールメイトは、スコーン、スコーンとテンポよくボールを打ち返しています。
ところが、あなたがラケットを振ってもボールはちっとも飛んでいきません。先生に言われたとおり「横を向いてボールを打って」いるはずなのに……。
そんなとき、あなたの前にやってきた先生が、こう言ったとしたらどうでしょう。
×「どうして打てないんだと思います?」
「それがわからないから困ってるんだよ!」と、イラッとしませんか?
あなたに「どうして契約が取れないんだと思う?」と聞かれた部下の反応も、それとまったく同じなんです。
●「ごちゃ混ぜ型」の質問にご用心!!
これらの質問をよく見ると、ひとつの質問の中に、たくさんの細かい質問が混じっていることがわかります。
テニスの例で言えば、「横を向いてボールを打つ」という、一見シンプルなテクニックには、さまざまな「コツ」が含まれています。
ボールが飛んでくるコースを早めに予測したり、腰をひねったり、軸足を前に出したり……。
スクールの生徒さんが、「横を向いてボールを打つ」ことがうまくできないのなら、これらの「コツ」についてひとつひとつ確認していくのが、生徒さんにとっての「いい質問」です。
ところがこの先生は、全部の質問を「ごちゃ混ぜ」にしてどうして打てないんだと思います?」と聞いてしまっていました。
ひとつひとつの質問には答えることができても、複数の質問が混ざった「ごちゃ混ぜ型」の質問になると、一気に答えるのが難しくなりますよね。
さらにマズいのは、答えることのできない質問をされると、相手は「自分を否定された」ように感じてしまうこと。
「質問に答えられない自分はバカなんじゃないだろうか?」と、自己嫌悪におちいってしまいます。
だからこそ、後輩くんはあなたの「質問」を聞いたとき、黙って下を向いてしまったんですね。
質問によって、相手のやる気を引き出すどころか、これではまったくの逆効果になってしまいます。
●相手の答えを引き出すのは「スッキリ分割型」の質問
私たちは、ついラクをして「ごちゃ混ぜ型」の質問ですまそうとしてしまいますが、質問のうまい人は、質問を細かく分割します。
ひとつの「ごちゃ混ぜ型」の質問を、少なくとも3つに小分けするイメージです。
○「どうして打てないんだと思います?」 ↓ 質問を分割する ↓ 【質問1】「軸足は前に出していましたか?」 【質問2】「打つときに腰をひねりましたか?」 【質問3】「ボールが飛んでくるコースを予測していましたか?」
いかがですか?こう聞かれると、とても答えやすいですよね。
それではもうひとつの例のほうは、どう質問すればよかったのでしょうか。これも3分割してみましょう。
○「どうして契約が取れないんだと思う?」 ↓ 質問を分割する ↓ 【質問1】「まず、訪問件数はちゃんと足りている?」 【質問2】「自分が思っていたとおりのプレゼンテーションはできた?」 【質問3】「先方からはどんな質問があった?」
こんなふうに、質問を小分けにしてスッキリとわかりやすくすることで、相手も具体的な答えが言えるようになります。
さらに、問題点もぐっと見えやすくなってくるんです。
超一流の質問術 質問をスッキリ分ける!
分割の目安は3つ ひとつの質問の中に複数の質問が混ざっていると、相手はどう答えればいいのかとまどってしまうばかりです。
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