本記事は、安田正氏の著書『デキる人はこっそり使ってる! 人を動かす20の質問術』(ポプラ社)の中から一部を抜粋・編集しています

お悩み 相手が黙りこくって下を向いてしまう

質問
(画像=9dream studio/Shutterstock.com)

あなたがいつも気にかけている後輩が、出先からトボトボと帰ってきました。

やる気はあるのになかなか結果が出せなくて、「今日も契約がゼロでした」とションボリしています。

こんなときは、ひと声はげまして、頼れる先輩ぶりをアピールしたいですよね。

そんなわけで、あなたはこう声をかけてみました。

「なあ。お前、どうして契約が取れないんだと思う?」

「何がダメなのか考えてみよう」と解決策を探らせる、一見「いい質問」に思えますよね。

ところが後輩のションボリくんは、なぜか黙って下を向いてしまいました。

まるで、あなたに叱られてショックを受けたとでもいうように……。

一体、この質問の何がいけなかったのでしょうか?

ひとつの質問の中に複数の質問を混ぜていませんか?

結果が出せない後輩くんに対して「どうして契約が取れないんだと思う?」と質問することが、なぜダメなのか?

それは、「ひとつの質問の中に複数の質問を混ぜてしまっている」からです。

それは、こんなシーンを想像してみるとわかるのではないでしょうか。

あなたはテニスの初心者で、テニススクールに通い始めたばかり。しかし、なかなか上手にボールを打ち返すことができません。

すると、先生が「横を向いてボールを打ちましょう」とアドバイスをくれました。

アドバイスを聞いたスクールメイトは、スコーン、スコーンとテンポよくボールを打ち返しています。

ところが、あなたがラケットを振ってもボールはちっとも飛んでいきません。先生に言われたとおり「横を向いてボールを打って」いるはずなのに……。

そんなとき、あなたの前にやってきた先生が、こう言ったとしたらどうでしょう。

×「どうして打てないんだと思います?」

「それがわからないから困ってるんだよ!」と、イラッとしませんか?

あなたに「どうして契約が取れないんだと思う?」と聞かれた部下の反応も、それとまったく同じなんです。

●「ごちゃ混ぜ型」の質問にご用心!!

これらの質問をよく見ると、ひとつの質問の中に、たくさんの細かい質問が混じっていることがわかります。

テニスの例で言えば、「横を向いてボールを打つ」という、一見シンプルなテクニックには、さまざまな「コツ」が含まれています。

ボールが飛んでくるコースを早めに予測したり、腰をひねったり、軸足を前に出したり……。

スクールの生徒さんが、「横を向いてボールを打つ」ことがうまくできないのなら、これらの「コツ」についてひとつひとつ確認していくのが、生徒さんにとっての「いい質問」です。

ところがこの先生は、全部の質問を「ごちゃ混ぜ」にしてどうして打てないんだと思います?」と聞いてしまっていました。

ひとつひとつの質問には答えることができても、複数の質問が混ざった「ごちゃ混ぜ型」の質問になると、一気に答えるのが難しくなりますよね。

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(画像=『デキる人はこっそり使ってる! 人を動かす20の質問術』より)

さらにマズいのは、答えることのできない質問をされると、相手は「自分を否定された」ように感じてしまうこと。

「質問に答えられない自分はバカなんじゃないだろうか?」と、自己嫌悪におちいってしまいます。

だからこそ、後輩くんはあなたの「質問」を聞いたとき、黙って下を向いてしまったんですね。

質問によって、相手のやる気を引き出すどころか、これではまったくの逆効果になってしまいます。

●相手の答えを引き出すのは「スッキリ分割型」の質問

私たちは、ついラクをして「ごちゃ混ぜ型」の質問ですまそうとしてしまいますが、質問のうまい人は、質問を細かく分割します。

ひとつの「ごちゃ混ぜ型」の質問を、少なくとも3つに小分けするイメージです。

○「どうして打てないんだと思います?」
  ↓
質問を分割する
  ↓
【質問1】「軸足は前に出していましたか?」
【質問2】「打つときに腰をひねりましたか?」
【質問3】「ボールが飛んでくるコースを予測していましたか?」

いかがですか?こう聞かれると、とても答えやすいですよね。

それではもうひとつの例のほうは、どう質問すればよかったのでしょうか。これも3分割してみましょう。

○「どうして契約が取れないんだと思う?」
  ↓
質問を分割する
  ↓
【質問1】「まず、訪問件数はちゃんと足りている?」
【質問2】「自分が思っていたとおりのプレゼンテーションはできた?」
【質問3】「先方からはどんな質問があった?」

こんなふうに、質問を小分けにしてスッキリとわかりやすくすることで、相手も具体的な答えが言えるようになります。

さらに、問題点もぐっと見えやすくなってくるんです。

超一流の質問術
質問をスッキリ分ける!

分割の目安は3つ
ひとつの質問の中に複数の質問が混ざっていると、相手はどう答えればいいのかとまどってしまうばかりです。

『デキる人はこっそり使ってる! 人を動かす20の質問術』より
安田正(やすだ・ただし)
宮城県仙台市生まれ。高校時代から英語教育分野に関心を持ち、大学卒業を機に渡英。本格的にグローバルコミュニケーション教育を学ぶ。帰国後、株式会社兼松パーソネルサービスの国際化事業部部長を経て、1990年パンネーションズ・コンサルティング・グループを創業。代表取締役に就任。全く新しい英語学習メソッド「システムイングリッシュ」、グローバルビジネスに必須の「ロジカル・コミュニケーション®研修」などを次々に発表。グローバル人材育成の先達として常に挑戦を続けている。受託先は官公庁・大手上場企業を中心に1700社にのぼり、総受講生は55万人に達する。また、京都大学、一橋大学などからの講演依頼を受ける傍ら、東京大学大学院、早稲田大学理工学術院非常勤講師として教鞭をとる。2017年4月より早稲田大学グローバルエデュケーションセンター客員教授。主な著書にシリーズ累計88万部を超えた『超一流の雑談力』(文響社)や『超一流 できる大人の語彙力』(プレジデント社)などがある。

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