経済的自立(Financial Independence)を手に入れるために資産運用や投資をはじめる若手のビジネスパーソンが増加傾向です。この記事の冒頭では「経済的自立とはそもそも何なのか」、後半では「経済的自立を実現するにはいくら必要か」「その資金をつくるには何をしたらいいか」などについてお金の専門家の意見を参考にしながら考察していきます。

経済的自立で早期リタイアを実現する「FIRE」という考え方

経済的自由,いくら
(画像=song-about-summer/stock.adobe.com)

近年海外の若年層で「FIRE」という考え方が広がる中で「経済的自立」というキーワードは、国内でも注目されるようになりました。「FIRE」とは「Financial Independence(経済的自立)」と「Retire Early(早期リタイア)」をかけあわせた略語です。経済的自立によってリタイアを実現すること自体は、真新しい考え方ではありません。

FIREが画期的だったのは「一般のビジネスパーソンが比較的若いうちに経済的自立を獲得することを目指す」という部分です。これまでの経済的自立は「一部の資産家だけが実現できるもの」「高所得者が中高年になったら少し早めにリタイアする」というような考え方でした。「FIRE」がこれらと一線を画すのは、一般ビジネスパーソンでも複利効果を利用することで比較的若いうちに経済的自立が成し遂げられる点です。

もう一つ「FIRE」が若い世代の心を捉えた理由は、経済的自立によって得られるものです。従来の考え方では、経済的自立の獲得によって「悠々自適な生活」「自分らしい生き方」などが得られるとされていました。「FIRE」では経済的自立によって「やりたくない仕事をしなくて済む」「会社をいつでも辞められる」といった自由を得ることができます。

経済的自立を実現するには「年収の25倍」の資産が目安

FIREに関連するコミュニティや書籍において「経済的自立に必要な資産額」の目安は「年収の25倍」といわれています。例えば年収が400万円の人であれば1億円(400万円×25倍)、年収800万円であれば2億円(800万円×25倍)が目安ということです。ただし「年収の25倍」という目安には注意しなければならないこともあります。

リタイア後に「悠々自適な生活をする」といった考え方だと1億~2億円程度の余力があってもどこかで資金が枯渇する可能性は高くなります。仮に資産額が1億円あっても年間700万~800万円ペースの支出があれば十数年しかもちません。FIREでは、支出を最適化することで年収の25倍の資産をもとに長期的な経済的自立を可能としています。

支出の最適化について『FIRE 最強の早期リタイア術 最速でお金から自由になれる究極メソッド(ダイヤモンド社)』の著者クリスティー・シェン氏が具体的に挙げている例は以下の通りです。

  • 小さな家に住む
  • 物価の安い都市に引っ越す
  • 自炊する
  • カーシェアリングサービスを使う

この例を見て分かる通りFIREによる経済的自立とは、ぜいたくな暮らしをすることでなくミニマムな暮らしによって出費を抑え「資産を減らさないことでお金の制約から自由になる」という発想なのです。

本当に「年収の25倍」で経済的自立は手に入るのか

本当に年収の25倍の資産があれば経済的自立が手に入るのでしょうか。クリスティー・シェン氏がFIREを実現するための資産額は「年収の25倍」が目安と提唱している理由は「4%ルール」に基づいています。彼女は、トリニティ大学の論文をもとにどれくらいの貯蓄があって、それをどれくらいの割合で使えばその人が一生元本(元の資産)に手をつけないで済むかを考察しました。

その結果「1年間の生活費を資産の4%に抑えれば貯蓄が30年以上持続する確率が95%」ということを知りました。年間生活費を資産の4%で割るのは、25を掛ける計算と実質上は同じなことから「年収の25倍」という目安が導き出されています(こちらの詳しい解説は字数を要しますので著作をご参照ください)。ただこのような計算をしなくても経済的自立を目指す個人投資家が資産額1億円を目標にするケースは多いようです。

ぜいたくな暮らしをしなければ(あるいは、子どもの教育費がかかるといった事情がなければ)、1億円の4%となる400万円(月額約33万円)程度に年間支出を抑えることができる人も多いのではないでしょうか。そのためこういった人は「とりあえず資産1億円を目安にする」というのも一案です。

経済的自立を達成するための1億円のつくり方

経済的自立を達成するための目安額が分かりました。しかし重要なのは「その目安額を貯めるには具体的に何をしたらよいか」ということです。クリスティー・シェン氏の著作では、複利効果が強調されています。例えばアメリカの平均的な家計の年収5万2,724米ドル(税引後)の家庭で貯蓄率24%の1万2,724米ドルを貯めてインデックスファンドなどに投資して年平均6%で運用していけば30年後には資産1億円が達成できるというものです。

とはいえこの部分を読んで「こうすれば1億円貯まるのか」「実際にやってみよう」と感じる人は一部ではないでしょうか。「理屈は分かるけれど実感がわかない」というケースも多いでしょう。お金を貯めるという部分では、他の識者の意見も確認したいところです。お金をテーマにしたベストセラーが数多くある作家の橘玲(たちばなあきら)氏は、日経マネーのインタビュー(2020年1月10日付)で億万長者になるための方法としていくつかの原則を挙げています。

ちなみにここで橘氏がいう億万長者とは「1億円の資産をつくること」です。

できるだけ早いうちからお金を貯蓄・運用する

資産形成を進めるにあたって「複利効果を最大限に活かす」という考え方自体は、橘氏もクリスティー・シェン氏も同様です。ただ両者は年率の設定が違います。クリスティー・シェン氏は、著作の中で年平均6%の運用を前提にしています。しかし橘氏の場合、若いうちから資産運用をすることで年平均3%でも十分効果があるとしているのです。

結婚しているなら共働きをする

橘氏によると、パートナーが主婦を選択する場合と共働きする場合を比較すると、2億円の差になるのだとか。ただし共働きをしても夫と妻の両者が浪費する体質だと効果は限定的です。1億円を貯めるために「倹約・貯蓄する」という意識を共有していれば働き手が2人いる分、資産形成のスピードを速めることができます。

経済的自立を達成後は、リタイアすべき?長く働くべき?

クリスティー・シェン氏と橘氏の考え方を比べると経済的自立(FI)を獲得するために複利を活用することは共通ですが、両者の仕事に対するスタンスは正反対です。クリスティー・シェン氏が「Retire Early(早期リタイア)」を前提にしているのに対し橘氏は、「できるだけ長く働くこと」を経済的自立達成の条件に挙げています。

その理由として橘氏は「人生100年時代で老後が長いこと」「労働で社会とつながっていることで幸福感が得られること」などを挙げています。この仕事やリタイアに対する考え方は「どちらが正しい」ということではありません。その人が「何を大事に考えるか」によってどちらに共感するかが変わってくるでしょう。経済的自立を考えるときには「いくら必要か」「それを貯めるにはどうしたらいいか」も大切です。

しかし「何のために経済的自立を成し遂げるのか」という目標設定も重要になってきます。この部分が整理されていないと資産形成の過程で「何のためにやっているのか」という壁につきあたりかねません。経済的自立を目指す人は、このような点に注意しましょう。(提供:Incomepress


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