エコツーリズムは地域の自然や文化などを生かした観光振興策として、世界で盛んに行われてきました。しかしコロナウィルス感染拡大で観光自体が大きな転換期を迎えています。インバウンド需要が激減する中でエコツーリズムを含めた観光はどう変化するのでしょうか。

エコツーリズムは環境・観光・地域の3本柱

ESG投資
(画像=vitalii-vodolazskyi/stock.adobe.com)

エコツーリズムは環境保全、観光振興、地域振興の3つを柱として、旅行者や地域住民、観光業者、研究者や行政が協力しながら行う観光への取り組み方です。実際に行われているツアーの姿から自然との触れ合いや環境保護をイメージされる方も多いと思いますが、地域経済や歴史・文化なども含めた広範囲な考え方です。

訪れた旅行者へ自然の素晴らしさや地域文化、歴史などを伝え、感動してもらったうえで地域経済も活性化するという好循環を目指しています。

エコツーリズム推進法

日本では高度経済成長期から旅行のパッケージ化による通過型観光が主流となり、時間をかけて自然と触れ合うような観光が大きく減少しました。さらに観光地のゴミ問題や環境破壊も大きな問題となっています。

これを解消すべく環境省が主になり国土交通省、農林水産省、文部科学省と協力し、2008年に「エコツーリズム推進法」が成立しました。これに合わせてエコツーリズムを推進するための国の支援も行われています。地域などが計画を申請し認定を受ければ、環境保護のために利用制限ができたり観光税を導入できたりするようになったのです。

エコツーリズムの代表的な取り組み

現在どのようなエコツーリズムが行われているのか、国内外の代表的な取り組み例を2つご紹介します。

鹿児島県 屋久島

1993年に日本初のユネスコ世界自然遺産登録となった鹿児島県屋久島は、縄文杉を筆頭に素晴らしい自然に恵まれています。その自然に触れ合い時には遊びながら、環境を守ることの大切さを知ることができる日本有数の自然ツアー発達地です。

屋久島では以前より杉林はもちろん、ウミガメなどの生態系全体を含めた環境保護に熱心に取り組んできました。200名以上いると言われるガイドを通じ、屋久島固有の自然や文化とともに環境保護や地域資源の保全についても観光客へ訴えてきたのです。

しかし世界自然遺産登録後は観光客が急増し、歩道以外への踏み込みや休憩利用による環境被害が深刻になっていきました。またトイレを含む共用施設のオーバーユースによる損傷などの問題も発生しています。さらに利用者集中による混雑で、自然体験の質の低下や屋久島の自然文化に理解を深めることができないといった懸念も起きています。

こうした状況に対し2004年に島内関係者による「屋久島地区エコツーリズム推進協議会」を設置し、環境保護の対策に乗り出しています。具体的にはし尿持ち帰りや登山口への車両乗入れ規制などを行い、2016年には「山岳部利用のあり方検討会」を設立して50年後のビジョンを定め、施設整備や利用者誘導策などを検討しています。

フィリピン ボホール島

フィリピンのボホール島は同国のエコツーリズムの聖地と呼ばれ、年間50万人以上の観光客が訪れる人気の観光地です。自然が多く残され美しい山や森林、河などが目を楽しませるだけでなく、世界最小の霊長類であるメガネザルのターシャや夜には美しい蛍を見ることができるなど、生物たちも豊かな環境になっています。

しかし1990年代後半から観光施設が増えて開発が進み環境汚染が心配されてきました。しかしその手付かずの自然を保護するために2003年にフィリピン初の観光経済区に指定され、特定の入域者に観光税が課されるようになったのです。環境保護と地域経済活性を両立させることは難しいのですが、ボホール島はしっかりと体制を整えれば決して不可能ではないという好例を見せてくれています。

コロナウイルスによる観光の変化

コロナウイルス感染拡大はエコツーリズムに限らず観光業界に深刻なダメージを与えています。入国制限により外国人観光客の姿は消え、インバウンドに依存していた観光地や施設は先が見通せない状態です。このまま何も策を講じなければ観光業界は大きく衰退する恐れがあります。

サスティナブルツーリズムという考え方

そこでぜひ今後の指針として注目していただきたいのが、サスティナブルツーリズム(持続可能な観光)という考え方です。サスティナブルとは持続可能なという意味であり、2015年に国連で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)とともに広く世界で共有されている考え方です。

将来を見通し立ちはだかる問題を解決し、状況をより良くしながら持続していこうというもので、まさに今の観光業界にも求められているものです。

仏サスティナブルツーリズム協会の声明

観光大国と呼ばれるフランスではサスティナブルツーリズム協会が、「コロナ以前と同じような観光の姿に戻るのではなく、業界存続のために財政支援を受けるなら環境や社会に貢献したものになるべき」という意味の声明を出しています。

確かにこれまでの観光の姿は決してサスティナブルであったとは言い難いでしょう。例えば航空機を利用した観光は排気ガスによる環境負荷が大きく、その燃料も化石燃料であり再生可能エネルギーを活用すべきとするサスティナブルな考えに逆行するものです。また世界の端まで足を伸ばして旅行すること自体、車両を含め多くのエネルギーを使いゴミなどの廃棄物も増やすと言えます。

しかも集団で移動したり観光地に集まったりすることはコロナなどのウィルス感染リスクを高める行為であり、これからはそうした姿を改めていく転換期と考えられます。

今後はサスティナブルでエコなツーリズムへ

ではコロナ以降のサスティナブルツーリズムとはどんな姿なのでしょうか。

コンパクトで環境に配慮した観光

観光地の収益だけに目を向ければ、どうしてもより多くの旅行者を集めるという考え方になってしまいます。しかし感染拡大防止や環境への負荷を考えると、それはサスティナブルな観光の姿とは言えないでしょう。これからは少人数で時間をじっくりかけて地域の自然や文化に理解を深めるようなスタイルが、観光業界の持続には必要だと考えられます。

国内の旅行者に目を向ける

インバウンドは確かに一度に大量の観光客を集められるため、効率良く収益をあげるためには良い方法でしょう。しかしこれからは少人数でコンパクトな観光が求められるとすると、今まで以上に国内の旅行者へ観光資源をアピールし集客をしていくべきではないでしょうか。

旅行者自身も乗り物を乗り継いでより遠くの観光地へ移動するよりも、近くにまだ知らない素晴らしい自然や歴史を見られる場所があるとわかれば、積極的に足を運んでくれるはずです。

フランスで人気の観光スタイル

先程紹介したフランスでは自転車で旅をするツアーや、ハイキング、キャンピングカーやバイクを使ったツアーなど、できるだけ環境負荷の小さな観光スタイルが注目されているようです。こうしたツアーは四季の表情が豊かで美しい自然の多い日本でも十分に堪能できるはずですし、健康的なスタイルとして関心を持つ方も多いのではないでしょうか。

エコツーリズムはサスティナブル

将来のサスティナブルな観光の姿を考えると、まさにエコツーリズムと重なる部分が非常に多いことがおわかりだと思います。環境に配慮し地域の自然や文化が存続していくことは、もともとエコツーリズムの基本的な考え方です。

またじっくりと地域の自然や文化に触れ、ゆとりを持って景色などを楽しむスタイルはコロナ以降の観光にまさに最適と言えるでしょう。

しかしエコツーリズムが抱える地域経済との両立や、観光資源の保護の難しさといった問題は、容易に解決できるものではありません。財政的な支援ももちろん必要ですが、まずは私たち自身が身近な観光地に目を向け、より自然に負荷のかからない観光スタイルを考えてみることから始まるのかもしれません。(提供:Renergy Online


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