新型コロナウイルスの感染拡大が国内で過去最悪の水準となり、2度目の緊急事態宣言が発出された。百貨店各社は営業時間短縮の要請の対象外ではあるが、感染拡大の防止に向けて閉店時間の繰り上げに動いている。すでに業績悪化が鮮明な百貨店各社としては、つらい決断だ。

2回目の緊急事態宣言と百貨店

緊急事態宣言
(画像=eyetronic/stock.adobe.com)

日本政府が2度目の緊急事態宣言を出したのは、1月7日だ。最初は東京・埼玉・千葉・神奈川の首都圏の1都3県を対象とし、1月13日にはさらに大阪・京都・兵庫・愛知・岐阜・栃木・福岡の7府県を追加した。

2度目の緊急事態宣言を出さざるを得なくなった理由は、これまで以上に感染者数が増え続けており、収束する兆しが見えてこないからだ。1月7~9日の3日間は全国での感染者数が1日当たり7,000人台となり、予断を許さない状況がいまも続いている。

菅義偉首相は、今回の緊急事態宣言の発出にあたり、4つの柱を発表した。「飲食店の午後8時までの営業時間短縮」「テレワークによる出勤者数7割減」「午後8時以降不要不急の外出の自粛」「スポーツ観戦、コンサートなどの入場制限」だ。

この4つの柱において、百貨店への休業要請や時間短縮要請は含まれていないが、対象地域の住民に対して午後8時以降の不要不急の外出の自粛を求めていることから、百貨店各社が自主的に閉店時間の繰り上げに踏み切った格好となっている。

各百貨店は実際にどのような時短営業をする?

三越伊勢丹ホールディングスはすでに、1月8日から当面の期間、首都圏の6店舗において閉店時間を繰り上げることを発表している。この6店舗の閉店時間はこれまで午後7時半か午後8時だったが、全ての店舗で午後7時閉店とした。

高島屋もすでに、一部店舗における閉店時間の繰り上げを発表している。対象となった店舗は閉店時間を30分から1時間程度繰り上げし、午後6時半から午後8時の間に営業を終了させることにした。期間については三越伊勢丹と同じく「当面の間」としている。

このほか百貨店大手のそごう・西武のほか、大丸や松坂屋などを展開するJ・フロントリテイリングなども同様に、閉店時間の繰り上げを発表している。

大手百貨店の業績は軒並み悪化している

前述の通り、今回の百貨店各社の閉店時間の繰り上げは、各社が自主的に国に協力する形で実施されているが、百貨店にとってもつらい苦渋の決断だった。1度目の緊急事態宣言における臨時休業などによって、すでに百貨店各社の業績は大きく悪化しているからだ。

三越伊勢丹ホールディングス:2020年4~9月期、367億8,600万円の最終赤字

三越伊勢丹ホールディングスが2020年11月に発表した2021年3月期第2四半期の連結業績(2020年4~9月)は、売上高が前年同期比41.8%減の3,357億100万円まで落ち込んでいる。営業利益と最終損益は前年同期の黒字から赤字に転落し、それぞれ178億1,200万円のマイナス、367億8,600万円のマイナスとなっている。

高島屋:2020年4~9月期、243億7,700万円の最終赤字

高島屋も三越伊勢丹ホールディングスと同様に厳しい状況だ。2021年2月期第3四半期の連結業績(2020年3〜11月)は、売上高に相当する営業収益が前年同期比29.1%減の4,798億8,000万円となり、高島屋も営業利益と最終損益が赤字に転落している。営業利益は105億1,300万円のマイナス、最終損益は243億7,700万円のマイナスだ。

そごう・西武:2020年3~11月期、営業利益が65億800万円の赤字

そごう・西武を展開するセブン&アイ・ホールディングスの決算発表によれば、2021年2月期第3四半期の連結業績(2020年3~11月)においては、同社の百貨店事業の売上高は前年同期比28.6%減の3,002億5,100万円にとどまり、営業利益は65億800万円の赤字となった。同社は「新型コロナウイルス感染症拡大に伴い、客数等に大きな影響が生じた結果」としている。

大丸:2020年3~11月期、売上は前年同期比42.0%減に

大丸松坂屋百貨店を展開するJ・フロントリテイリングの2021年2月期第3四半期の連結業績(2020年3~11月)によれば、百貨店事業における売上は前年同期比42.0%減の1,122億2,400万円で、220億円規模の営業損失を計上するに至っている。

経営状況の一層悪化は必至、各社は耐えられるのか

このように、百貨店各社はすでに業績が厳しい。そのような状況下で閉店時間の繰り上げによって、さらに売上が落ち、経営状況が一層悪化することは必至だ。仮に緊急事態宣言が解除され、いつも通りの営業時間に戻ったとしても、消費者の外出自粛ムードは続き、インバウンド客による消費も当面期待できない。

百貨店各社は、EC(電子商取引)サイトやアプリの強化、ライブコマースの展開などで、コロナ禍によるダメージを緩和しようと努めているが、それだけでは売上規模が元通りにならない。閉店時間の繰り上げがどれだけ百貨店の業績に影響を与えるのか、引き続き各社の決算発表に注目していきたい。(提供:THE OWNER

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)