個人投資家の運用先のひとつとして注目が集まる「ソーシャルレンディング」。ファンドのテーマはさまざまですが、太陽光発電も人気のテーマです。この記事の前半ではソーシャルレンディングの基礎知識、後半では太陽光発電ファンドを得意にする有力2社の違いにフォーカスします。
ソーシャルレンディングとは?大手サービスは?
最近よく聞くソーシャルレンディングとはどんな仕組みか、この分野の大手にはどんなサービスがあるかなどを確認しましょう。
ソーシャルレンディングとは?
ソーシャルレンディングとは、事業資金を借りたい「借り手」と手元資金を運用したい「投資家」 をマッチングするサービスで、近年広がっているクラウドファンディングの1形態です。
クラウドファンディングは、インターネット上でプロジェクト内容や事業者の概要などを情報発信し、不特定多数の投資家から資金を集める手法です。クラウドファンディングの種類には、購入・寄付・融資・投資・不動産投資などがありますが、このうち「融資型」がソーシャルレンディングです 。
富士キメラ総研によると、国内のクラウドファンディング市場規模は1,775億円と推計されますが(2019年時点)、このうち約9割をソーシャルレンディングが占めています。以前は、クラウドファンディングといえば、購入型や寄付型のイメージが強かった面もありますが、融資型のソーシャルレンディングの存在感が急速に増しているのが最近の流れです。
不動産や太陽光発電のソーシャルレンディングが増加している
ソーシャルレンディングのファンドテーマはさまざまですが、金融機関にお金を預けても低金利で増えない状況が続くなか、ローリスクで安定的な利回りが期待できる不動産(担保型)や太陽光発電に対する融資が増加しています。
ソーシャルレンディングのプラットフォーム(仲介企業)の大手4社は次の企業です。このうち、今回テーマにする太陽光発電ファンドに強いソーシャルレンディングは、「SBIソーシャルレンディング」と「クラウドバンク」です。
ソーシャルレンディング大手4社の特徴
サービス名(運営企業名) | 提供資金 | 特徴 |
---|---|---|
SBIソーシャルレンディング | 371億円 | 金融大手SBIグループ 融資型CFの最大手 |
クラウドバンク (日本クラウド証券) | 170億円 | 証券会社を買収して発足 累計応募総額1,200億円突破 |
クラウドクレジット | 146億円 | 新興国向け融資型が中心 5%超の利回り案件が多い |
オーナーズブック (ロードスターキャピタル) | 74億円 | 不動産融資に特化 運営企業は東証マザーズ上場 |
(参考:日本経済新聞2020年2月13日付)
太陽光発電ソーシャルレンディング有力2社の比較
ソーシャルレンディングのサービスで太陽光発電ファンドを主力にするのは「SBIソーシャルレンディング」と「クラウドバンク」です。両者を比較すると、SBIソーシャルレンディングの方が募集金額が大きく、高利回りで運用期間が長い傾向にあります。具体的な両者の違いを見ていきましょう。
規模の大きいファンドが中心の「SBIソーシャルレンディング」
SBIソーシャルレンディングは、この分野の最大手で、金融大手のSBIグループが100%出資する子会社です。
・運営企業やサービスの特徴
SBIソーシャルレンディングは、不動産担保をテーマにしたファンドに強いプラットフォームですが、最近では太陽光発電への融資も積極的に展開しています。
競合他社に対する同社のアドバンテージは、経済界や金融業界で影響力のあるSBIグループの信用力を生かしてビジネス展開できる点です。一例では、地銀や環境系NPOと連携して、再生可能エネルギーを利用する発電事業に融資を行っています。
SBIソーシャルレンディングの融資残高の構成を見ると(2020年12月末時点)、太陽光発電関連のファンド(メガソーラーブリッジローンファンド)が26.6%。全体の4分の1以上を占めています。
・同社の太陽光発電ファンドの傾向
SBIソーシャルレンディングの太陽光発電ファンドは、2021年1月25日時点で累計36号まで立ち上げられています。このうち、2020年10月から運用されている「SBISLメガソーラーブリッジローンファンド33号(通称:かけはし)」の内容は次の通りです。ほかのファンドもほぼこれに近い内容です。
予定運用期間 | 約15ヶ月 |
出資額 | 40億8,760万円(募集額41億円) |
出資単位 | 1口5万円 |
貸付金利 | 年間9.5% |
年間管理手数料 | 年間1.5 % |
分配日 | 毎月(15日) |
上記のデータに補足すると、貸付金利9.5%から管理手数料1.5%を差し引くと、名目利回りは年間8%になります。
規模がコンパクトなファンドが中心の「クラウドバンク」
クラウドバンクは、日本クラウド証券が運営するソーシャルレンディングのサービスです。
・運営企業やサービスの特徴
日本クラウド証券の歴史は、もともと「みどり証券」の社名で活動していましたが商号変更を行い、その後、クラウドバンクの子会社化・吸収合併を経て現在に至ります。クラウドバンクの融資に強い事業領域としては、不動産担保型、海外中小企業支援、そして、太陽光発電になります。
クラウドバンクの累計応募金額は、2021年1月現在で1,200億円を突破しています 。5年前の2016年と比較すると、応募金額が約12倍に増加しており、ソーシャルレンディングの分野で存在感を増しています。
・同社の太陽光発電ファンドの傾向
クラウドバンクの太陽光発電ファンドは、2021年1月時点で累計2067号まで立ち上げられています。「太陽光ファンド第2067号」の内容は次の通りです。
予定運用期間 | 6ヶ月 |
出資額 | 5億5000万円(募集額も同じ) |
出資単位 | 1口1万円 |
目標利回り | 年間5.1% |
年間管理手数料 | ― |
分配日 | 毎月(月末締め翌月10日以内) |
太陽光発電ソーシャルレンディング投資のリスク
最後に、太陽光発電ファンドを含む「ソーシャルレンディングのリスク」について触れたいと思います。クラウドファンディングを通した融資の流れは、今後も拡大していくと見込まれますが一方でリスクもあります。
ソーシャルレンディングの配当金の債務不履行・延滞の割合は?
投資家がもっとも警戒すべきリスクは「配当金の支払い延滞」です。ソーシャルレンディングの配当金の原資は、事業から生まれるリターンです。当然ながら事業がうまくいかなければ、配当金の支払延滞が発生するリスクが高まります 。
参照までに、SBIソーシャルレンディングの償還額に対する「債務不履行の割合は0.17%」「配当金の延滞率は0.02%」です(2011年3月から2019年9月までの累計額)。この割合を「低いと見るか、高いと見るか」は投資家によって異なると思いますが、現実的に少なくない額の損失が発生しているのです。
集めた資金を目的外で利用する「資金管理の不備リスク」も
投資家から集めた資金の目的外流用や管理の不備など「資金管理の不備リスク」にも要注意です。これは過去に、maneoマーケットが集めた資金を、一部の事業者(投資先企業)が目的外流用したケース、あるいは、サービス運営企業5社の内部管理体制の不備が発覚したケースがあります。目的外流用では、投資家の訴訟にまで発展しています。
これを機に、行政処分などによってソーシャルレンディングの情報開示が進んだ面もありますが、投資を行うときはサービス運営企業と事業者の信頼性を確認するのが必須といえるでしょう。 (提供:Renergy Online)
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