本記事は、御手洗昭治氏、小笠原はるの氏の著書『どこへ行っても恥をかかない 世界の「常識」図鑑』(総合法令出版)の中から一部を抜粋・編集しています
ジェスチャーの読み間違いは命取りに
「言葉は通じなくても、身ぶり手ぶりで伝わりますよ」と言う人がいます。これは、ジェスチャー=万国共通という考え方によるものでしょう。
しかし、「所変われば品変わる」という言葉が示すように、ジェスチャーも、地域、文化、宗教によって読み取り方は違っています。そして、その違いを知らないまま安易にジェスチャーを使ってしまえば、致命的な誤解を生むことだってあるのです。
たとえば、動物行動学者のデズモンド・モリスは、ジェスチャーの読み違いによる悲劇としてつぎの事件を紹介しています。
スカンジナビアの青年2人が、地中海のとある国でバカンスを過ごしていたときの話です。
2人ははじめ、観光客の多い浜辺で水遊びをしていました。しかし、やがて飽きてくると、遠泳にチャレンジすることにしました。
2人は泳いでいるうちに、岬を回って沿岸警備隊のいる施設まで到達してしまいました。岩の上にはなんと武装した警備員が立っており、泳いでいる2人を見つけると、「スパイではないか?」と疑い始めました。
警備員は2人を尋問するため、手招きして岸に呼び寄せようと試みました。ところが青年達は、そのジェスチャーを「回れ右をして戻れ」という指示だと思い、施設から遠ざかります。
警備員は彼らが逃げようとしていると解釈し、浜辺に向かって泳ぐ2人に向け、発砲しました。そしてその弾は命中し、青年2人は亡くなってしまったということです。
不幸な事件ですが、なぜこんなことが起きたのでしょうか?
原因は、手招きのジェスチャーにありました。
青年たちの出身地=北欧における手招きは、手のひらを上にし、自分に向けて振るのが習わしとなっています。しかし、警備員の出身地=南欧では、それとは反対に、手の甲を上にして振るのが手招きです。そして、北欧の青年たちにとって、南欧の手招きは「立ち去れ」という意味のジェスチャーでした。
手を上に振るか、下に振るか。この些細なジェスチャーの違いが、罪のない青年たちの命を奪ってしまったのです。
言葉が通じない国へ旅行する際は、こうしたリスクを念頭に置くと良いでしょう。そして、できるだけその国のジェスチャーについて調べておくことをおすすめします。
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