iDeCoで資産運用する場合も、定期的なリバランス(資産の再分配)が必要です。この記事では、リバランスの方法である配分変更とスイッチングについて詳しく解説します。また、リバランスのタイミングや考え方、リアロケーションとの違いについても説明するので、iDeCoのリバランスで悩んでいる人は参考にしてみてください。

そもそもリバランスとは?

金融
(画像=tamayura39/stock.adobe.com)

リバランスとは、資産配分の再調整を行うことです。

iDeCoで資産運用する際には、最初に積立金額を決め、投資商品を選びます。たとえば、A商品を50%、B商品を50%という配分で、毎月2万円積み立てるといった形です。

この時点で、ポートフォリオ(資産配分)はA商品50%、B商品50%となります。しかし、運用するうちに、株価の変動といった影響によって、A商品とB商品の資産配分が変わってきます。

積立を始めて1年後、A商品60%、B商品40%という資産配分になっていた時、もう一度A商品50%、B商品50%に戻すことをリバランスといいます。

iDeCoの投資先は、投資信託や定期預金、保険などです。そのため、株式の個別銘柄を保有している場合やFX投資などと比較すれば、ほったらかしでもリスクが低いといえます。iDeCoで資産運用する場合、日 々株価や為替レートの値動きを自分でチェックする必要性は高くありません。

とはいえ、iDeCoでの運用は長期に渡るため、定期的なリバランスによって、資産配分の見直しを行うことが大切です。

リバランスの目的!メリットや効果は?

iDeCoでリバランスをする目的は、「リスク管理」と「合理的な運用」です。リバランスによってどのようなメリットを享受できるのか、それぞれ具体的に見ていきましょう。

リバランスの目的①リスク管理

急に値上がりした商品は、急に値下がりするリスクを含んでいます。資産総額の中で値上がりした商品の割合が高まることで、値下がりによって資産総額が大きく影響を受けます。

一度増えていた資産が一気に減るのは、想像以上に精神的なダメージにつながるものです。リバランスで値上がりした商品の割合を下げることで、値下がりした時に資産総額が受けるダメージを軽減できます。

リスク管理の観点から、リバランスには意味があるといえます。

リバランスの目的②合理的な運用

A商品とB商品があり、A商品が値上がりした場合、投資初心者の多くは「値上がりしているA商品を追加で購入したい」と思うのではないでしょうか。しかし、それは投資の原則からいうと、誤った投資判断です。

投資の原則は「安い時に買って、高い時に売る」です。値上がりしている商品を見ると、さらに値上がりすると考えてつい追加で購入したくなりますが、値上がりの状態が今後もずっと続くとは限りません。むしろ、値上がりしている時に売却することで、利益を確定させ、安定的な運用成果をあげられます。

そのため、「値上がりしている商品の割合を下げ、値下がりしている商品の割合を上げる」というリバランスによって、自然と「安い時に買って、高い時に売る」という投資の原則にのっとることになり、合理的な運用が実現します。

iDeCo(イデコ)のリバランス方法は「配分変更」と「スイッチング」の2つ

続いて、リバランスの具体的な方法を2つ解説します。リバランスには、「配分変更」と「スイッチング」という2つのやり方があります。それぞれの特徴を踏まえ、自分に合った方を選択しましょう。

iDeCo(イデコ)のリバランス①配分変更とは

配分変更とは、現在までiDeCoで積み立てた資産には手をつけず、新たに購入する商品の配分を変える方法です。配分変更には、手数料はかかりません。ネット証券やネットバンキングなら、インターネット上で簡単に手続きが完了します。

たとえば、iDeCoで毎月2万円、50%ずつA商品とB商品を購入したとします。1年後、A商品が値上がりしたことで、資産配分がA商品にかたよりました。そこで、今後はA商品を5,000円、B商品を1万5,000円購入し、当初の資産配分に近づけていくようにしました。これが配分変更です。

iDeCo(イデコ)のリバランス②スイッチングとは

スイッチングとは、これまでにiDeCoで積み立ててきた資産の一部を売却し、別の商品を購入することで、資産配分を変える方法です。スイッチングの場合、売却時手数料が設定されていると、手数料が発生するケースがあります。また、手続き完了までに1週間程度の時間が必要とされます。

たとえば、iDeCoで毎月2万円、50%ずつA商品とB商品を購入し、A商品が値上がりしたことで、1年後の資産配分がA商品にかたよったとします。そこで、A商品を6万円売却し、B商品を6万円購入すれば、資産配分は当初の50%ずつに戻ります。これがスイッチングです。

iDeCo(イデコ)でリバランスするべきタイミングは?

iDeCoのリバランスの必要性がわかったけれど、どのタイミングで行うべきか悩む人も多いでしょう。続いて、iDeCoでリバランスすべきタイミングを2つ紹介します。

iDeCo(イデコ)のリバランスのタイミング①定期的な見直し

まず、期間を決めて定期的にiDeCoのリバランスをするという方法があります。気になる人は半年に1度、そこまで気にならないという人は1年に1度ぐらいが妥当な期間でしょう。

購入している商品のリスクによっても、リバランスのタイミングは変わります。リスクが低い商品が中心なら、1年に1度で十分です。アクティブ型など、リスクの高い商品の比率を高くしている人は、半年に1度程度は行った方がいいかもしれません。

iDeCoの積み立てを始めた日、誕生日など覚えやすい日、年間レポートが届いた日など、リバランスするタイミングはさまざまです。

半年に1度よりも短いスパンで見直すと、商品の値動きに振り回されてしまうことになりかねません。iDeCoが投資である以上、多少の値動きはつきものです。過敏になりすぎず、ある程度の値動きはおおらかに見守り、リバランスをする日まで放置しておく姿勢も大切です。

iDeCo(イデコ)のリバランスのタイミング②臨時的な見直し

定期的な見直し以外は基本的に放置することとお伝えしましたが、あまりにも激しい値動きがあった場合は、この限りではありません。

あらかじめ、自分が許容できる資産配分のズレを定めておくと、臨時的な見直しをかけやすくなります。リバランスを行う資産配分のズレは、15%から20%程度が目安です。ただし、資産総額が大きくなった場合や、リスクの高い商品の比率が高い場合は、もう少し小さなズレでリバランスを行うのも1つです。

iDeCo(イデコ)のリアロケーションとは?リバランスとの違いは?

リバランスとは、当初予定していた資産配分になるよう、再調整することです。これに対して、資産配分そのものを見直すことを、リアロケーションといいます。続いては、リアロケーションを行うべきタイミングを2つご紹介します。

iDeCo(イデコ)のリアロケーションのタイミング①ライフステージの変化

ライフステージは、投資スタイルに大きく影響を及ぼします。20代で独身のうちは、攻めのスタイルで投資したいと考える人も、結婚して子どもができたら、堅実に資金を貯めたいと思うようになるかもしれません。

結婚、出産、マイホーム購入、子どもの独立、両親の介護といったライフイベントがあった場合は、必要に応じてiDeCoのリアロケーションを行いましょう。また、転職や独立など、仕事の変化によって、リアロケーションを行うケースもあります。

その都度、自分が許容できるリスク、期待したいリターンを改めて問い直し、リアロケーションを行うことが大切です。

リアロケーションのタイミングは、5年に1度程度が目安といわれていますが、ライフイベントの発生頻度によってはもっと頻繁に行うべき時もあります。また、年金の受給開始を徐々に意識しはじめる50歳以降は、さらに慎重に見直しをかけるべきという意見もあります。

ライフステージに応じてリアロケーションをする例には、次のようなものがあります。

20代の頃は高いリターンが期待できる海外株式中心の投資信託や、アクティブ型の投資信託、REITを購入して積極的に運用する。結婚後、仕事や育児が忙しく小まめにチェックできないことから、放置できるバランス型の商品にシフトする。50代になってから、リスクの小さい国内債券の割合を増やし、一部は元本保証型に切り替える。

大切なのは、「忙しいから」「面倒だから」という理由でリアロケーションを後回しにしたり、放置したりすることなく、きちんと手入れをしていく姿勢です。定期的なリバランスとリアロケーションによって、将来の資産は最大化され、自分が望む老後の生活を手に入れられるでしょう。

iDeCo(イデコ)のリアロケーションのタイミング②環境の変化

iDeCoで運用を始めると、原則60歳まで引き出せません。そのため、長期投資が基本です。

長期投資においては、国際情勢や景気動向などに気を配る必要があります。たとえば、インフレが予想されるなら、国内資産ではなく海外資産の割合を増やすことで、リスクヘッジが可能になります。

また、海外市場が好調なら海外資産を増やし、国内市場が好調なら国内資産を増やすなど、環境を読み解いて資産配分に反映させるのも重要です。

環境変化を予測するのは難しいため、環境変化にともなうリアロケーションにこだわりすぎる必要はありませんが、場合によっては資産配分の見直しを検討してもいいかもしれません。

<コラム欄>自分にぴったりの資産配分は?参考になるサイトを紹介
リバランスやリアロケーションの重要性を理解しても、具体的にどのような資産配分にすべきか悩む人も多いでしょう。資産配分の参考例が載っているサイトや、運用スタイルの診断ができるサイトを紹介します。

金融広報中央委員会の「知るぽると」では、リスク許容度を考慮した資産配分の例が記載されています。年代や投資スタイル、ライフステージに応じてどのような資産配分にすべきか、ヒントが得られるでしょう。

JIS&Tの「iDeCoポータル」はは、年金制度の基本からiDeCoの加入・運用方法までを分かりやすく紹介しているサイトです。サイト内にある「スタイル別おすすめ投資プラン」では、投資経験や貯金状況、リスクに対する考え方などの設問に答えていくと、おすすめの投資プランを提示してくれます。

また、銀行や証券会社が、おすすめの資産配分をホームページ上で公開しているケースもあるので、参考にしてみるといいでしょう。

iDeCo(イデコ)がリバランスに適している理由

続いて、iDeCoがリバランスに適している理由を紹介します。

日本では、金融商品を売却して利益が出ると、利益に対して所得税・住民税がかかります。税率は所得税15%、住民税5%です(ただし、令和19年までは復興特別所得税として2.1%が追加で課税されます)。

しかし、iDeCoで運用している場合、運用益は非課税で所得税も住民税もかかりません。そのため、スイッチングによって売却益が生じても、税金の支払いによって資産が目減りすることなく、効率的にリバランスできます。

iDeCo(イデコ)のリバランスの注意点

リバランスをする時は、厳密にやり過ぎないことが大切です。配分変更にしろスイッチングにしろ、数パーセント程度のズレは許容する心を持ちましょう。労力をかけ厳密にリバランスしたとしても、さほどリターンやリスクに影響ないことがほとんどです。

スイッチングの場合はさらに手数料も発生するため、リバランスするかはより慎重に判断する必要があります。

リバランスにこだわり過ぎると、かえって頻繁に運用状況を見るのが億劫になり、放置してしまう結果になりかねません。自分自身にとって無理なく続けられる範囲で、余裕をもってリバランスしていくことが大切です。

リバランスの手間を省きたいならバランスファンドが最適

ただし、定期的なリバランスがどうしても面倒だと感じる人もいるでしょう。それなら、バランスファンドが適しています。

バランスファンドとは?メリットや魅力を紹介

通常は、投資信託によって、投資先は異なります。投資先の種類は、国内株式・国内債券・海外株式・海外債券・国内REIT・海外REITなどです。

一方バランスファンドなら、1つの投資信託で国内外の株式や債券にバランスよく投資できます。また、常に当初の資産配分になるよう、リバランスを自動で行ってくれるのです。

たとえば、A商品とB商品を50%ずつの配分にしていたところ、A商品が値上がりして資産配分がかたよった場合、自動的にA商品を売却してB商品を購入してくれます。そのため、バランスファンドであれば、小まめに運用状況をチェックして自分でリバランスをする手間がかかりません。

バランスファンドのデメリットは?信託報酬に注意

一方、バランスファンドはインデックスファンドと比較して信託報酬が高い傾向があります。また、国内債券の割合が高い商品が多く、運用成果が上がりにくいことを指摘する専門家もいます。

バランスファンドを選ぶ時は、できるだけ信託報酬が低く、株式の割合が高い商品を選ぶのが望ましいといえます。

ほったらかしでリバランスの手間がかからないメリットをとるのか、手間がかかってもリターンを多く狙いたいのか、自分の生活スタイルや投資への興味に応じて、判断しましょう。

バランスファンドが多い証券会社は?信託報酬や特徴もピックアップ

参考として、代表的な証券会社や銀行と、取扱いのあるバランスファンド数を表にまとめました。商品名もいくつかピックアップし、信託報酬や特徴を記載しています。

・イオン銀行
イオン銀行は、バランスファンドの取り扱い数が多く、多様な商品がラインナップされています。ここでは、「マイバランス70(確定拠出年金向け)」「たわらノーロードバランス(8資産均等型)」「イオン・バランス戦略ファンド(愛称:みらいパレット)」を取り上げました。

・SBI証券
SBI証券には、サービス開始当初より提供されているオリジナルプランと、2018年スタートの新プランであるセレクトプランの2つがあります。バランスファンド数でいえば、オリジナルプランの方が多いようです。

オリジナルプランでは、「DCインデックスバランス」「iFree 8資産バランス」「野村DC運用戦略ファンド(愛称:ネクスト10)」の3つを取り上げました。

「DCインデックスバランス」は、バランスファンドの中では株式の組入比率が高いといえそうです。また、「野村DC運用戦略ファンド(愛称:ネクスト10)」は平均以上の運用成果を目指すアクティブ運用なので、信託報酬も高くなっています。

セレクトプランでは、「eMAXIS Slimバランス(8資産均等型)」「iFree 年金バランス」「セゾン・バンガード・グローバルバランスファンド」の3つを取り上げました。

「iFree 年金バランス」は、国民年金保険料を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の基本ポートフォリオに近づけるという特徴を持っています。年金積立として、選択肢の1つに入れてもいいでしょう。

・楽天証券
楽天証券は、イオン銀行やSBI証券に次いでバランスファンドの商品数が多く、ラインナップも充実しています。ここでは、「楽天・インデックス・バランス(DC年金)」「投資のソムリエ<DC年金>」「三菱UFJ DCバランス・イノベーション(KAKUSHIN)」の3つを取り上げました。

・大和証券、マネックス証券
大和証券とマネックス証券は、どちらもバランスファンド数は3つです。参考として、大和証券では「DCダイワ・ワールドアセット(六つの羽/安定コース)」、マネックス証券では「マネックス資産設計ファンド<育成型>」を取り上げて紹介しました。

大和証券では、資産配分に応じて「安定コース」「6分散コース」「成長コース」3つの商品があります。「安定コース」は債券の割合が高く、株式の割合が低いのが特徴です。「6分散コース」では、すべての資産の組入比率が等しくなっています。「成長コース」では、株式の割合が高く、債券の割合が低くなっています。また、リスク資産が増えるほど、信託報酬も高く設定されています。

・松井証券
松井証券は、商品が多すぎると選びにくいという観点から、プロがiDeCoに適した商品を厳選しています。そのため、必然的にiDeCoの取扱い商品数自体が少なく、バランスファンドの取扱い商品数は1つです。

商品数が多いことが一概にいいとはいえません。各証券会社の特徴や商品の特徴や種類、信託報酬などを比較し、自分に合った商品で運用することが大切です。

iDeCo(イデコ)のリバランスで合理的な運用を実現し、資産を最大化する

リバランスに関するポイントを簡単に下記にまとめました。

・1年に1度、運用状況を見てリバランスを行う。
・あまりにも資産配分にかたよりが生じている場合は、その都度リバランスを行う。
(〇%かい離したらリバランスするといった目安を事前に決めておくとわかりやすい)
・5年に1度ぐらいを目安として、ライフステージの変化に応じて、資産配分や運用スタイルを見直す。
・リバランスにこだわり過ぎる必要はなく、無理のない範囲で手入れを続ける。
・リバランスが面倒なら、バランス型ファンドを選ぶのも1つの選択肢。

リバランスをすることで、結果的に安い時に商品を大量に購入し、高い時に買い控えることになるため、合理的な運用が叶います。iDeCoは長期投資だからこそ、定期的なリバランスが大切といえるでしょう。

リバランスできちんと手入れすれば、老後は大きな蓄えを得られるはずです。安心して老後を過ごすためにも、年に1回程度のリバランスを忘れず行うようにしたいものです。