THE OWNER特別連載「経営者のお悩み相談所 〜経営コンサルタントが一問一答!〜」第16回目は「コロナ禍、オフラインでの接点を増やすことが難しい中、適度にチームの一体感を出す会議のやり方がわからない」という経営者のお悩みについてお答えします。

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【ご質問】
コロナ禍になって、感情の共有がチームで減っていると思っています。会議に対して効率化だけを求めると、短い時間×多い会議となり、より感情の共有が減ると思います。 適度に一体感を出す会議のやり方を教えていただきたいです。
【ご回答】
会議の冒頭に価値判断を含む近況報告を行うことや、会議の終わりに結論を出さない課題共有を行うことをお勧めします。また、単に会議に絞った一体感創出策ではなく、業務全般を見直すことが効果的です。
ご質問ありがとうございます。オンライン会議の増加による組織内での共感減少への対応策についてのご質問と思います。

会議内では、例えば、持ち回りで出席者の一人または数名に会議冒頭で最近の出来事とどう思ったかを話させたり、本題終了後に結論を出さない課題共有時間を設けたりといったアイディアが考えられます。

また、会議運営のみに注目するのではなく、会議以外でも共感減少への対応策を検討していくことで、より効果が高まります。

杉野 洋一(すぎの よういち)
杉野 洋一(すぎの よういち)
(同)Initiatives代表。IT系企業、会計ファームにて広くクライアントを支援する傍ら、韓国・インドにて教育・指導・通訳に従事するなど多様な文化・企業環境において活躍。中小企業診断士として独立後は中小企業を中心に「真にクライアントに寄添う経営支援」を信条とし、目標制度や管理会計に取り組んでいる。▶https://initiatives.jp/

会議内で共感を促進する方法

【第16回】適度に一体感を出す会議のやり方を教えてください!
(画像=THE OWNER編集部)

最近、在宅勤務やオンライン会合が増えてきました。オンライン会議は、効率よく要件を決める際には効率が良いが、参加者同士の仲を深めるようなことはなかなか難しいという声も多くあります。

このような状況下で、どのような対策が考えられるのか、まずは会議内での対処策について検討してみます。

例: 感情・価値判断を含む近況報告

感情を共有するためには誰かが感情を開示する必要があります。誰かが感情を開示しなければ、そもそも感情を共有することはできません。そこで、意図的に感情や価値判断を開示する仕組みを作ることを考えてみます。

具体的には、会議の冒頭数分間を使い、持ち回りで参加者1人または数人に感情や価値判断を伴う近況報告をさせてはどうでしょうか。「価値判断を伴う」というと難しく聞こえてしまいますが、ここでは、どう感じたかや何故そうしたのかを話してもらいます。

例えば、「今日は買い物の後、犬の散歩に行った」という事実だけを近況報告しても、その人の感じ方や考え方に対する理解は深まりません。しかし、「犬が好きだ」とか「犬の散歩は良い運動になる」という話であれば、少しづつでも共感は可能です。話が発展するかもしれません。ここから共感を積み重ねていきます。

例: 結論を出さない課題の共有

今度は感情を開示される側から開示する側に働きかける方法を考えてみます。

例えば、仕事上の課題を話させ、相手からアドバイスや自分の考え方を話してもらうのはどうでしょうか。他の人の課題に対して、自分だったらどう対処するかというのも感情・価値判断の開示になります。

気を付けなければいけない点は、課題解決を目的とするのではなく、課題の解決は最終的に本人に任せることです。押しつけや命令になってしまうと、感情・価値判断の共有になりません。課題解決は別途会議を開催して話しましょう。

会議内ということに拘らなければ、朝礼時間に持ち回りで話してもらうのも一つの方法です。

会議外で感情・価値判断を共有する方法

会議内での対処策をお話ししましたが、対応策を会議内に絞る必要はありません。会議に限らなければ感情・価値判断を共有する方法をより多く見つけることができます。ここでは例を2つ挙げたいと思います。

例: ありがとうカード

「ありがとうカード」はある社員が他の社員からしてもらった良いことをカードなどに記載して投函し、 それを廊下に貼り出すなどして発表する活動です。「サンクスカード」とも呼ばれます。感謝の気持ちを共有する活動ですので、肯定的な感情の共有が可能です。

ポイントは、「ありがとうカード」をたくさん受け取った社員の評価が高いのではなく、 「ありがとうカード」をたくさん投函した社員の評価が高いということです。つまり感謝を受けることよりも、同僚に対して感謝の気持ちを持つことが大事という意味です。

この施策も感情の共有に近しい事例です。

例: 部署横断プロジェクト

感情・価値判断の共有に対し、本気で同じ仕事をやり遂げた経験に勝る方法はありません。それを経営側で意図的に作ります。

部署横断プロジェクトは、特定の課題を設定し、複数の部署からメンバを選抜し、課題解決に当たる活動です。若手社員の能力開発として、研修よりも有効であると言われています。

プロジェクトの主題は、「新商品開発」「次期基幹システムの選定」のような会社に大きな影響を与えるものもありますが、「忘年会の企画」のような軽めのテーマも良いでしょう。

うまく運営でき、何らかの成果が得られれば、参加者同士で成功体験や達成感の共有に繋がります。

業務における共感とは?: 組織的共感と個人的共感

感情・価値判断の共有ということで議論してきましたが、そもそも社内の共感について改めて考えてみます。ここでは社内の共感は、組織的共感、個人的共感に分けて考えてみます。

組織的共感

組織への共感のことです。Philosophy(理念)、Vision(目標)、Mission(使命)等への共感。組織成立の3条件 【共通目的】【貢献意欲】【意思疎通】でいうところの共通目的に当たります。これがないとそもそも組織やチームとして機能しません。各自がバラバラに業務遂行を行っている状態です。各自の気持ちを一つにまとめていくためには、メンバ各自の組織的共感が不可欠です。

個人的共感

個人間で感じる共感のことです。共感する、つまり他者の感情に賛同すること(情動的共感)だけでなく、理解する、受容する(認知的共感)といったものも含まれます。個人的共感は信頼の土台となるもので組織・チームの生産性を向上させます。

経営学という観点で考えると、組織的共感の方が個人的共感より圧倒的に取り上げられる割合が多くなります。

今回のご質問は、「感情の共有」とありますので、個人的共感を意識したものとご推察します。但し、在宅勤務やオンライン化で減少しているのは個人的共感だけではなく、組織的な共感も同様と思います。

改めて業務体制を見直してみることをお勧めします。

会議内で組織的共感を促進するためには、やはり、今後の目標と今までの達成を確認することが重要になります。また、会議外であれば、上司や経営者との1on1ミーティングも幅広く採用されている手法です。

一体感の作り方は沢山ある

本稿の内容を以下の表にまとめてみました。

適度に一体感を出す会議のやり方を教えてください!
(画像=THE OWNER編集部)

このように区分を作って考えてみると、新しい着想が出やすいかと思います。
如何だったでしょうか。ご参考になりましたか。引き続き質問を受け付けておりますので、ご不明な点があれば、またお問い合わせください。

(提供:THE OWNER