本記事は、今蔵ゆかり氏の著書『自分も幸せ まわりも幸せ 上機嫌に働く67のコツ』(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています。
上機嫌は周りをプラスに巻き込む
”あの人がやると雑巾がけをしていても、カッコイイ仕事に見える。“
これは、数年前に読んだ本の中で、今でも印象に残っているフレーズです。
面倒な仕事でも、その人がはじめると不思議と影響されて、「よし、私もやるか!」と重かった腰がすっとあがってしまう、そんな経験はありませんか?
たとえば、普段はやる気にならない、面倒なデスクの片づけや、部屋の掃除。気づくと書類やファイルが山積みになり、まるでミルフィーユ状態。こうなると、ますます嫌気がさして、フットワークは重くなるばかり。
そんななか、上機嫌にサクサクと片づけをはじめる人がいます。
それにつられて、気づけば自分も片づけはじめている、なんてことがあるはずです。
職場とはまったくシーンが異なりますが、こんな実話もあります。
母親に再三「片づけなさい!」といわれても知らんぷりだった子供が、母親のある作戦によって、自分からすすんで片づけはじめたお話です。
母親の作戦はこうです。床には数体のぬいぐるみが転がっています。
「みて! ○○ちゃんのクマさん、イスに座らせてあげたよ。クマさん嬉しそうね。ママ今度はうさぎさんも喜ばせちゃおう」。そういって、楽しそうに片づけをはじめるのです。すると効果はテキメン。横で見ていた子供は、「ママが楽しそうだから私もやりたい」と動き出したといいます。
これこそが、上機嫌の巻き込み力です。
数年前にウォーターボーイズというドラマがありました。男子高校生がひょんなことから、シンクロナイズド部を結成し、大会に出場するまでの努力や喜びを描いた青春物語です。
結成当初は「男のシンクロなんてバカじゃないの」と白い眼で見る人ばかりでしたが、楽しくひた向きに練習に取り組む姿に、みるみる応援する人が集まってくるのです。
ラスト、プールでの演技のお披露目シーンでは、拍手喝さい感動の渦。
仮に彼らが渋々やっていたら、これほど応援されることはなかったでしょう。
上機嫌で楽しそうだったから人は魅了されたのです。
例え話がビジネスシーンから脱線してしまいましたが”上機嫌には周りをプラスに巻き込む力がある“ことが、ご理解いただけたのではないでしょうか。
人間の最大の罪は不機嫌である
ドイツの詩人ゲーテは、人間の罪についてこう語っています。
「人間の最大の罪は不機嫌である」。不機嫌であることこそ大罪です。
大罪だなんて、少し大げさのようにも感じますが、「なるほど、そうかもしれないな」と腑に落ちた話がありますので、ご紹介しましょう。
数年前に2日間かけて、怒りの感情マネジメント方法を学ぶ機会があり、そこで得た言葉です。
”怒りは連鎖する。“私たちは怒りの連鎖を止めるように努めなければならない。
教えてもらったのは、ある定食屋さんでの話でした。
お昼休み、お客さんがざるそば定食の食券を買い、イスに座りました。店員さんが「ざるそば定食でよろしいでしょうか?」と確認すると、お客さんは「食券を見ればわかるだろうが!」と急に声を荒らげました。店員さんはムっとした気分を抑えきれず、怒鳴り声でそば職人さんにオーダーを伝えました。そば職人さんは「なにキレてるんだ?」とムッとしました。そして気分が悪いまま帰路に着きます。気晴らしにビールを飲もうと冷蔵庫を開けるも、ビールがありません。「おい! ビールがない!」と思わず奥さんを怒鳴りつけます。怒鳴られた奥さんはイラッとして「さっさと宿題をしなさい!」と息子さんを怒鳴ります。翌日、息子さんは学校で友達とトラブルを起こし、お母さんは学校に呼び出されます。
お母さんが息子さんに理由を聞くと、昨夜怒鳴られたことでモヤモヤしていたとのこと。
その話をお父さんに報告すると、「実は昨日、店員さんにキレられてイライラしてしまい、八つ当たりしてしまったんだ」と。翌日、店員さんにキレていた理由を聞くと、お客さんの態度にムカついたことが原因だったとわかりました。
不機嫌が延々と繋がっていることが、ありありとわかりますね。
この話は、フランチャイズのお店の研修で使われている実話だそうです。
不機嫌はこのように伝染していきます。だから最大の罪なのです。
ということは、その逆もまたしかりです。
誰かが上機嫌でいることは、周りにも上機嫌が伝染していくということです。
あなたが上機嫌でいることで、自分も周囲も幸せにすることができるのです。
気分にムラがある人は敬遠される
芸能人の中には、特別目立った存在ではなくても、何年も息長く活躍されている人がいます。一方、爆発的に売れっ子になったのに、気づけば姿を消している人もいます。
業界で仕事をする知人に聞いたのですが、長く仕事がもらえる人は、スタッフさんの評判がすこぶるいい人なんだそうです。
何年たっても謙虚さを忘れず、自分自身をニュートラルに保てる人であるようです。
売れっ子になった途端に豹変し、干されてしまう残念な話はよく耳にしますね。
天狗になってしまい、スタッフさんに暴言を吐き、気分次第で振り回し、わがまま放題。
こうなってしまうと、悪評判が広がるのは時間の問題です。
「この人とは一緒に仕事をしたくない」。スタッフさんからは敬遠されてしまうのです。
「うちの職場にも、いるいる!」と読みながら頷かれている方もいらっしゃるでしょう。
私の以前の職場にも、気分に超ムラがあり、周囲を振り回す上司がいました。
「この企画、なかなか面白いから進めて」と承認を得たはずが、翌日機嫌が悪くなると、「あの企画は却下、やり直しだ」。そしてまた機嫌がよくなると、「やっぱり最初の企画でいこう!」と二転三転。心の中で思わず「どっちやねんっ」です。
その度に段取りは狂うし、たまったものではありませんでした。
今日の機嫌はどうかな? と気は使うし、二転三転しないかとヒヤヒヤものでした。
実はその人の直属の上司(部長)もまた、部下の気分のムラにてこずっていたのです。
ある日、部長がビジネスパーソンの心得として話をしてくれました。
「○○さん、どうやら今日は機嫌があまりよくないようだね。正直、彼には仕事を頼みにくくてね、つい安心できる人を頼りたくなる。人間誰だって、機嫌のいい日も悪い日もある。それをイチイチ顔に出すことなく、気分を安定させること。それがビジネスパーソンとしてのマナー。自分の器を大きくすることでもあるんですよ」。
もしあなたが「まるで私だ」と落ち込むようだとしたら、こんな風に考えるといいですよ。
機嫌が悪くなる自分に対して、”悪い“とジャッジする必要はありません。
大事なことは、機嫌が悪い自分に気づき、「切り替えよう」とすることです。
不機嫌スイッチをオフにして、上機嫌スイッチをオンに切り替える。
気づいたら即チェンジです。それでオッケーなのです。
仕事はそこそこでも上機嫌な人が愛される
”こんな人と一緒に働きたい。“誰にでも、理想像があります。
明治安田生命保険相互会社が実施している「理想の上司・新入社員」アンケートの調査結果を見ると、時代に沿った理想像が明確に見えてきます。2020年の結果を見てみましょう。
まず、「理想の上司」の回答で上位を占めたものは、”的確さ“”親しみやすさ“です。
- 1位、的確に指示してくれる
- 2位、親身になってくれる
- 3位、適切な距離感がある
有名人では、男性が5年連続で内村光良さん、女性では4年連続で水卜麻美さんが、それぞれ1位独走中です。
また、「理想の上司を漢字1文字で表すと?」の1位は”優“でした。次に”頼“”柔“が多く、やはり優しい親しみやすさ、頼りがいが求められていることがわかります。
視点を変えて、上司が求める「理想の新入社員」、こちらの結果も気になるところです。
アンケートでは新入社員とされていますが、一般社員の方も該当するでしょう。
3位をグンと引き離して、1・2位が全体の半数を占めています。
- 1位、親しみやすさ
- 2位、明るさ
- 3位、実力
理由としては、職場においてはコミュニケーション力が必要不可欠であるから。そのため”親しみやすさ“”明るさ“”謙虚さ“”理解力“が求められるのです。
有名人では、男女別に、プロ野球選手の大谷翔平さん、プロゴルファーの渋野日向子さんがそれぞれ1位でした。さわやかな笑顔でインタビューに応じる親しみやすさと、実力を持つお二人。その魅力に心を鷲掴みにされた人は、日本中に何万人いることでしょうか。
渋野日向子さんは、そのとびきり素敵な笑顔が”しぶこスマイル“とネーミングされ、子供からお年寄りまで幅広く愛されています。実力もさることながら、上機嫌なしぶこスマイルこそが、彼女の魅力を最強にしていると私は確信しています。
”上機嫌“は人を魅了し、コミュニケーションを円滑にするための必殺技です。
ちなみにアンケートの中で、”仕事ができる“を理想にあげた人の割合はどれくらいだったと思いますか?
その回答率は全体の16.6%と、”そこそこ“の割合でした。
仕事ができるけれど、不機嫌でとっつきにくい人よりも、仕事はそこそこでも、上機嫌で親しみやすい人(もちろん最低限の仕事力は必要です)が圧倒的に愛されるのです。