本記事は、今蔵ゆかり氏の著書『自分も幸せ まわりも幸せ 上機嫌に働く67のコツ』(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

解説
(画像=miya227/stock.adobe.com)

上機嫌は周りをプラスに巻き込む

”あの人がやると雑巾がけをしていても、カッコイイ仕事に見える。“

これは、数年前に読んだ本の中で、今でも印象に残っているフレーズです。

面倒な仕事でも、その人がはじめると不思議と影響されて、「よし、私もやるか!」と重かった腰がすっとあがってしまう、そんな経験はありませんか?

たとえば、普段はやる気にならない、面倒なデスクの片づけや、部屋の掃除。気づくと書類やファイルが山積みになり、まるでミルフィーユ状態。こうなると、ますます嫌気がさして、フットワークは重くなるばかり。

そんななか、上機嫌にサクサクと片づけをはじめる人がいます

それにつられて、気づけば自分も片づけはじめている、なんてことがあるはずです。

職場とはまったくシーンが異なりますが、こんな実話もあります。

母親に再三「片づけなさい!」といわれても知らんぷりだった子供が、母親のある作戦によって、自分からすすんで片づけはじめたお話です。

母親の作戦はこうです。床には数体のぬいぐるみが転がっています。

「みて! ○○ちゃんのクマさん、イスに座らせてあげたよ。クマさん嬉しそうね。ママ今度はうさぎさんも喜ばせちゃおう」。そういって、楽しそうに片づけをはじめるのです。すると効果はテキメン。横で見ていた子供は、「ママが楽しそうだから私もやりたい」と動き出したといいます。

これこそが、上機嫌の巻き込み力です。

数年前にウォーターボーイズというドラマがありました。男子高校生がひょんなことから、シンクロナイズド部を結成し、大会に出場するまでの努力や喜びを描いた青春物語です。

結成当初は「男のシンクロなんてバカじゃないの」と白い眼で見る人ばかりでしたが、楽しくひた向きに練習に取り組む姿に、みるみる応援する人が集まってくるのです。

ラスト、プールでの演技のお披露目シーンでは、拍手喝さい感動の渦。

仮に彼らが渋々やっていたら、これほど応援されることはなかったでしょう。

上機嫌で楽しそうだったから人は魅了されたのです。

例え話がビジネスシーンから脱線してしまいましたが”上機嫌には周りをプラスに巻き込む力がある“ことが、ご理解いただけたのではないでしょうか。

人間の最大の罪は不機嫌である

ドイツの詩人ゲーテは、人間の罪についてこう語っています。

「人間の最大の罪は不機嫌である」。不機嫌であることこそ大罪です。

大罪だなんて、少し大げさのようにも感じますが、「なるほど、そうかもしれないな」と腑に落ちた話がありますので、ご紹介しましょう。

数年前に2日間かけて、怒りの感情マネジメント方法を学ぶ機会があり、そこで得た言葉です。

”怒りは連鎖する。“私たちは怒りの連鎖を止めるように努めなければならない。

教えてもらったのは、ある定食屋さんでの話でした。

お昼休み、お客さんがざるそば定食の食券を買い、イスに座りました。店員さんが「ざるそば定食でよろしいでしょうか?」と確認すると、お客さんは「食券を見ればわかるだろうが!」と急に声を荒らげました。店員さんはムっとした気分を抑えきれず、怒鳴り声でそば職人さんにオーダーを伝えました。そば職人さんは「なにキレてるんだ?」とムッとしました。そして気分が悪いまま帰路に着きます。気晴らしにビールを飲もうと冷蔵庫を開けるも、ビールがありません。「おい! ビールがない!」と思わず奥さんを怒鳴りつけます。怒鳴られた奥さんはイラッとして「さっさと宿題をしなさい!」と息子さんを怒鳴ります。翌日、息子さんは学校で友達とトラブルを起こし、お母さんは学校に呼び出されます。

お母さんが息子さんに理由を聞くと、昨夜怒鳴られたことでモヤモヤしていたとのこと。

その話をお父さんに報告すると、「実は昨日、店員さんにキレられてイライラしてしまい、八つ当たりしてしまったんだ」と。翌日、店員さんにキレていた理由を聞くと、お客さんの態度にムカついたことが原因だったとわかりました。

不機嫌が延々と繋がっていることが、ありありとわかりますね。

この話は、フランチャイズのお店の研修で使われている実話だそうです。

不機嫌はこのように伝染していきます。だから最大の罪なのです。

ということは、その逆もまたしかりです。

誰かが上機嫌でいることは、周りにも上機嫌が伝染していくということです。

あなたが上機嫌でいることで、自分も周囲も幸せにすることができるのです。

気分にムラがある人は敬遠される

芸能人の中には、特別目立った存在ではなくても、何年も息長く活躍されている人がいます。一方、爆発的に売れっ子になったのに、気づけば姿を消している人もいます。

業界で仕事をする知人に聞いたのですが、長く仕事がもらえる人は、スタッフさんの評判がすこぶるいい人なんだそうです。

何年たっても謙虚さを忘れず、自分自身をニュートラルに保てる人であるようです。

売れっ子になった途端に豹変し、干されてしまう残念な話はよく耳にしますね。

天狗になってしまい、スタッフさんに暴言を吐き、気分次第で振り回し、わがまま放題。

こうなってしまうと、悪評判が広がるのは時間の問題です。

「この人とは一緒に仕事をしたくない」。スタッフさんからは敬遠されてしまうのです。

「うちの職場にも、いるいる!」と読みながら頷かれている方もいらっしゃるでしょう。

私の以前の職場にも、気分に超ムラがあり、周囲を振り回す上司がいました。

「この企画、なかなか面白いから進めて」と承認を得たはずが、翌日機嫌が悪くなると、「あの企画は却下、やり直しだ」。そしてまた機嫌がよくなると、「やっぱり最初の企画でいこう!」と二転三転。心の中で思わず「どっちやねんっ」です。

その度に段取りは狂うし、たまったものではありませんでした。

今日の機嫌はどうかな? と気は使うし、二転三転しないかとヒヤヒヤものでした。

実はその人の直属の上司(部長)もまた、部下の気分のムラにてこずっていたのです。

ある日、部長がビジネスパーソンの心得として話をしてくれました。

「○○さん、どうやら今日は機嫌があまりよくないようだね。正直、彼には仕事を頼みにくくてね、つい安心できる人を頼りたくなる。人間誰だって、機嫌のいい日も悪い日もある。それをイチイチ顔に出すことなく、気分を安定させること。それがビジネスパーソンとしてのマナー。自分の器を大きくすることでもあるんですよ」。

もしあなたが「まるで私だ」と落ち込むようだとしたら、こんな風に考えるといいですよ。

機嫌が悪くなる自分に対して、”悪い“とジャッジする必要はありません。

大事なことは、機嫌が悪い自分に気づき、「切り替えよう」とすることです。

不機嫌スイッチをオフにして、上機嫌スイッチをオンに切り替える。

気づいたら即チェンジです。それでオッケーなのです。

仕事はそこそこでも上機嫌な人が愛される

”こんな人と一緒に働きたい。“誰にでも、理想像があります。

明治安田生命保険相互会社が実施している「理想の上司・新入社員」アンケートの調査結果を見ると、時代に沿った理想像が明確に見えてきます。2020年の結果を見てみましょう。

まず、「理想の上司」の回答で上位を占めたものは、”的確さ“”親しみやすさ“です。

  • 1位、的確に指示してくれる
  • 2位、親身になってくれる
  • 3位、適切な距離感がある

有名人では、男性が5年連続で内村光良さん、女性では4年連続で水卜麻美さんが、それぞれ1位独走中です。

また、「理想の上司を漢字1文字で表すと?」の1位は”優“でした。次に”頼“”柔“が多く、やはり優しい親しみやすさ、頼りがいが求められていることがわかります。

視点を変えて、上司が求める「理想の新入社員」、こちらの結果も気になるところです。

アンケートでは新入社員とされていますが、一般社員の方も該当するでしょう。

3位をグンと引き離して、1・2位が全体の半数を占めています。

  • 1位、親しみやすさ
  • 2位、明るさ
  • 3位、実力

理由としては、職場においてはコミュニケーション力が必要不可欠であるから。そのため”親しみやすさ“”明るさ“”謙虚さ“”理解力“が求められるのです。

有名人では、男女別に、プロ野球選手の大谷翔平さん、プロゴルファーの渋野日向子さんがそれぞれ1位でした。さわやかな笑顔でインタビューに応じる親しみやすさと、実力を持つお二人。その魅力に心を鷲掴みにされた人は、日本中に何万人いることでしょうか。

渋野日向子さんは、そのとびきり素敵な笑顔が”しぶこスマイル“とネーミングされ、子供からお年寄りまで幅広く愛されています。実力もさることながら、上機嫌なしぶこスマイルこそが、彼女の魅力を最強にしていると私は確信しています。

”上機嫌“は人を魅了し、コミュニケーションを円滑にするための必殺技です。

ちなみにアンケートの中で、”仕事ができる“を理想にあげた人の割合はどれくらいだったと思いますか?

その回答率は全体の16.6%と、”そこそこ“の割合でした。

仕事ができるけれど、不機嫌でとっつきにくい人よりも、仕事はそこそこでも、上機嫌で親しみやすい人(もちろん最低限の仕事力は必要です)が圧倒的に愛されるのです。

上機嫌に働く67のコツ
今蔵ゆかり(いまくら・ゆかり)
オフィスY’s room 代表/人材育成・セルフマネジメント・仕事効率化コンサルタント。
大阪府出身。新卒で、TSUTAYA の本部会社である、カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社設立時に入社。役員秘書、営業企画等を経験。社員10名の頃から社長の傍らにて、「成果をあげる仕事術」「マインド」「段取り力」等の大切さをみっちり学ぶ。アメリカン・エキスプレス・インターナショナル, Inc. に移り、加盟店営業部・法人営業部などの業務に従事。2009年に独立し、オフィスY’s room を設立。一流の人からの学び、培った経験をベースに、「先読み力」「選択力」「整理力」「感情コントロール」を組み合わせた、独自のセルフマネジメントメソッドを構築。現在は、講師として、全国の企業・商工会議所・クリニックなどで研修・講演に登壇しており、受講数は5600社の企業・57000人にのぼる。即実践でき、具体的で再現性ある内容が好評を得ており、講演のリピート率も高い。会社・社員・お客様が上機嫌になる職場づくりをサポートをしている。経営者・管理職・院長・働く女性の上機嫌マネジメント個人コンサルティングも行っている。モットーは「上機嫌な人は仕事もプライベートもうまくいく」。著書に『みんなに必要とされている人の“ひと工夫” の習慣』(クロスメディア・パブリッシング社、中国語翻訳版もあり)。

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