レディネスが注目されている3つの理由

レディネスが経営においても注目されているのには、大きく3つの理由がある。

1.社員の育成効果の向上

社員の育成を進める際には、意識づけを行った上で社員自身が学ぶ意識を高めていなければならない。

グローバル化によって市場の変化が激しい中、事業を存続させるためには変化に対応する力も必要だ。そのため、経営者はもちろんマネジメント層は、社員のレディネスを高めて育成効果を高める関わり方が求められている。

2.新入社員のミスマッチの解消

新卒社員の入社後3年以内離職率は、平成以降は大学卒3割、高卒4割、中卒6割ほどで推移している。

新卒者の退職理由の一つには、「企業とのミスマッチ」がある。その解消のためには、採用試験の段階で自社の情報を共有し、入社後のイメージを持ってもらうなど「就業レディネス」を高めておくことも必要だ。

3.リスキリングによる時代の変化への対応

リスキリングとは、産業構造や技術などの大幅な変化に適応するための能力やスキルの再開発を進めることである。

DXによる経営革新が求められる中で、リスキリングの必要性が高まっており、社員への動機づけが注目されている。

レディネスのメリット

社員のレディネスを高めることで、経営にどのようなメリットがあるのだろうか。

定着率の向上

就業レディネスや職業レディネスを高めることで、社員の定着率を向上できるというメリットがある。

新入社員のミスマッチ解消ができれば早期離職を防ぐことができ、継続的に職業レディネスを高める関わりをすることで、モチベーションを高めることができるだろう。

労働生産性の向上

レディネスを高めて社員の育成やモチベーションアップができれば、労働生産性が向上するというメリットがある。

人材がさらに不足し、限られた人数でこれまで以上の成果を出すためには、労働生産性の向上が欠かせない。その際にレディネスを意識できていれば、社員個々人の成長意欲や事業への貢献意欲を高めることができるだろう。

職業レディネスを判断する際の参考、職業を分類する6つの類型

職業には、事務や経理、研究職や営業などさまざまな種類がある。心理学者で職業カウンセラーのジョン・L・ホランドの研究によると、職業や性格タイプは「ホランド・タイプ」と呼ばれる以下の6つに分類できるとされている。

レディネス

六角形モデルの対角に位置するタイプの職業や性格はかけ離れており、隣り合うタイプの職務内容は類似した部分も多い。自社の業態や職務内容がどのタイプに分類されるかを明確にした上で、社員の職業レディネス判断の参考にするとよいだろう。

1.現実的(Realistic)

機械操作やモノづくりに対する能力が高いが、対人関係の構築が苦手であり、コミュニケーションを要する仕事を好まない。製造業の生産技術やオペレータ、熟練技能系の職業適性が高いとされている。

2.研究的(Investigative)

知的好奇心が高く、ロジカル思考で物事を合理的に処理する能力が高いが、グループでの活動はあまり好まない。研究職や学者、統計などの情報処理関係の職業適性が高いとされている。

3.芸術的(Artistic)

想像力に優れ独創的であり、音楽や芸術分野に才能を発揮するが、規則や慣習への意識が薄く内向的な傾向が強い。デザインや音楽、美術、文芸関係の職業適性が高いとされている。

4.社会的(Social)

責任感が強く人間関係の構築が得意なため、人と協力して仕事をすることを好む。個人のみでの業務は苦手な傾向にある。看護師などの医療福祉系や教育関係、販売などの職業適性が高いとされている。

5.企業的(Enterprising)

リーダーシップがあり、説得力が高いので、組織を動かして新しい事業を開拓することを好む。他人に従うことは苦手である。経営企画や広報、営業などの職業適性が高いとされている。

6.慣習的(Conventional)

規則や組織内での協調性などを重視し、几帳面で自制心があるため、事務処理能力などに富む。自己主張をしたり、創造的な行動をしたりすることは苦手である。経理事務や警備、法務関係などの職業適性が高いとされている。