「職業レディネステスト」で職業適正を判断

社員を採用する際や、入社後に自社内の適正な職務に配属して活躍してもらうためには、職業レディネスがあるか否かが重要となる。

職業レディネステストとは何か?

「職業レディネステスト(VRT:Vocational Readiness Test)」とは、以下の3つの検査によって「基礎的志向性」と「職業志向性」を計るフォーマル・アセスメントのことであり、労働政策研究所・研修機構が改訂を進めている。

A検査(職業興味):特定の職業や仕事への興味度を測定
B検査(基礎的志向性):日常生活での行動や意識から基礎的志向性を測定
C検査(職務遂行の自信度):職業や仕事を遂行できるか否かの自信度を測定

「志向性」とは、何らかのものに対して持つ意識のことであり、対象に対する志向性が高いほど「レディネスがある」と判断できる。

なお、フォーマル・アセスメントとは、これまでのデータの蓄積によって評価尺度が標準化されており、信頼性と妥当性が高い検査方法である。

職業レディネステストの評価尺度

職業レディネステストの判定に用いられる尺度は以下の通りである。

・基礎的志向性尺度

以下の3つの尺度と、さらに細分化された8つの下位尺度に分類される。

1)対情報関係志向(D志向:Data Orientation)

数値や文章情報などを取り扱う仕事に対する志向性を判定する。

2)対人関係志向(P志向:People Orientation)

人との交渉やサポートなど、コミュニケーションを取りながら行う仕事に対する志向性を判定する。

3)対物関係志向(T志向:Thing Orientation)

手作業でモノづくりをしたり、機械や装置を扱ったりするような仕事に対する志向性を判定する。

・職業志向性尺度

「ホランド・タイプ」の6つの分類に基づいて、職業に対する興味度や自信度を数値化する。数値が高いほど「志向性がある」と判断するが、全体のバランスを見て判断する必要がある。

職業レディネステストの4つの留意事項

(1)職業経験を積んでいる社員の検査には向かない

職業レディネステストは、一般的に高等学校や大学でのキャリア教育で用いられるものであり、入社して職業経験をある程度積んでいる社員に対しては、テストの効果がないとされている。そのため、自社の新卒採用時や採用直後の職業志向性の判断に使用することが望ましいだろう。

(2)テスト実施者の事前理解が重要

職業レディネステストのようなフォーマル・アセスメントは、検査実施要領に従って実施しなければ、検査の信頼性を担保できない。職業レディネステストを実施する担当者は、その目的や検査の内容を事前にしっかりと把握しなければならない。

(3)受験者に対しての説明が必要

職業レディネステストの実施そのものや検査結果に対して不信感や不満を抱える社員もいるだろう。検査実施前にテストの目的や意義について説明した上で、あくまで判断指標の一つであり、個別にフィードバックを行う旨を伝えなければならない。

(4)他のフォーマル・アセスメントと組み合わせる

職業レディネステストだけでは、基礎的志向性の判断が難しい場合もある。そのため、性格診断に用いられる「Y-G性格検査」など、他のフォーマル・アセスメントツールも活用することで、さまざまな視点から社員の特性を判断することが望ましい。