本記事は、北尾龍典氏の著書『手間をかけずに資産を増やす! 医師のための投資術』(ポプラ社)の中から一部を抜粋・編集しています
「医師として学ぶこと」が多すぎてお金に気がまわらない
医師の年収が高いのは、間違いありません。
ですが、「収入が高い=お金持ち」ではないのです。
「高所得者」と「お金持ち」、そして「資産家」は違います。
「高所得者」は単純に年収が高い人、「お金持ち」はお金をたくさん持っている人、そして「資産家」は、お金だけでなく金融資産や実物の資産を保有している人のことです。
ドクターのように、いくら収入が高い「高所得者」であっても、何もせずに使うだけであれば「お金持ち」にすらなれません。
せっかくの収入を活かして「お金持ち」になり、さらに資産を築くためには、お金に関するリテラシーが欠かせないのです。
ドクターのお金のリテラシーが低い、最大の理由は「お金について学ぶ時間がない」ことだと私は考えます。
新しい技術や研究結果などが絶え間なく生まれる医療の世界では、常に研究を行い学び続ける必要があります。
また、臨床では、一人一人違う人間が相手ですから、生まれる疑問もそれぞれ異なります。
日々、そうした問いと向き合うだけでなく、新しい情報を得るために論文を読むなど、私のまわりのドクターは、皆さん意欲的に学んでおられます。
また、自分の専門を深めるための勉強をしたり、もっと幅広い科目を学んで総合的な対応ができるようにしたりするなど「こうありたい」と考える姿に向けて研鑽を積む人も少なくありません。
そうして、ただでさえ忙しい毎日に、時間を見つけて学び続けるドクターにとっては、なかなかお金に気が回らないのが現実でしょう。
自分の年収は知っていても払っている税金の額を知らない
実際に、ドクターのお金のリテラシーはどんなレベルなのか。
これまで私たちが3000人以上の医師と接してきた経験から、いくつか例をあげてお話ししましょう。
まず、どこの銀行口座にいくら入っているかを把握していないケースがよくあります。
そしてお金がないわけではないのに、異なる口座を引き落としに指定して、ネットショッピングしたものの支払いが滞ったり、月々のスマホの使用料金を延滞したりしてしまうのです。
「ちょっとうっかりしただけ」とドクターは軽く考えているかもしれません。
でも、こうした支払いが滞ると、信用情報が傷つき、新しいクレジットカードに入れなかったり、住宅ローンが組めなかったりと、いざというときに困ることがあるのを、私はドクターに知っておいてほしい。
次に、所得の源泉徴収票をまともに見たことがある医師は、あまりいないと考えていいと言えます。
私がドクターに資産形成のコンサルティングを行うとき、支払っている税金の金額を伝えると、皆さん「えっ、そんなに払っていたの?」と驚きます。
ほとんどの医師は、額面の年収はいくらなのか知らず、およその手取りの金額しか気にしていません。
自分が払っている税金の額や、何が「所得控除」されたり「税額控除」されたりするかをまったく知らないのです。
また実際の手取りの収入は、病院から支払われている「支払金額」でないことを知らないドクターがほとんどです。
手取りの金額は、「支払金額」から「源泉徴収税額(所得税)」を引き、さらに「社会保険料などの金額」と翌年に請求される「住民税」を引いたものになります。
つまり「支払金額」が1500万円だったとしても、手にすることができるのはおよそ1020〜1050万円程度になるのです。
税金や社会保険制度の仕組みは、知らなければソンをするようにできています。
払わなくていいものを払っていても、税務署は親切に「こうすれば、税金が安くなりますよ」とは決して教えてはくれません。
「控除」できるものを知り、賢く課税所得を圧縮することが大切なのです。
「あの先生、お金大好き」と言われたくない
「医師は清貧であるべき」と考える人は少なくありません。
「清貧」とは本来、ムダな贅沢を好まないことです。
しかしいつの間にか、医師のように人の命を預かる職業の人は、私欲を捨ててお金を追いかけずにいることが正しいという考えに変わっています。
一般的な人たちだけでなく、ドクター自身にもそうしたイメージは定着しています。
そのため医師は「あの先生、お金大好きなのよ」とウワサされないよう、あえてお金に関心がないふりをして、お金の話をしないようにしているのです。
またそもそも日本では、あからさまにお金の話をする人に対して「ガメツイ」「ガツガツしている」と否定的にとらえます。
私はこれは、江戸幕府が封建制度を確固としたものにするために取り入れた朱子学の影響が大きいと考えています。
朱子学では「生まれもった身分は変えられないこと」、そして「貧しくても清らかであればいい」という思想を持ちます。
そして幕府は、朱子学に基づいた「士農工商」という身分階級をもうけ、金銭のやり取りがからむ、商人という身分を一番下に置きました。
つまり、朱子学を公式に採用することで、庶民が稼ぐことやお金に対して嫌悪感を持ち、身分に納得し貧しさに不満を抱かないように仕向けたと言えるのです。
でもお金は、誰にとっても生きていくために大切で必要なもの。
お金があるからこそ、食べものを手に入れ、安心して眠れる家に住むことができるのです。
実際には、お金にまったく興味がない人がいないように、お金に関心がないドクターはいないでしょう。
なぜなら、私たちと話す機会があると、次々と、
「節税ってどうすればいいのか?」 「年金に代わるものはない?」 「あの病院の何科ってどれくらいの収入?」 「この生命保険に入っているけど、どう思う?」
といった質問を投げかけてくるからです。
病院内では誰ともお金の話はできず、インターネットにあふれる情報は玉石混淆でどれを信じたらいいかわからない。
そこで私たちが有益な情報を提供し信頼していただくと、普段は抑えているお金への疑問や知りたいことをたずねてくるのです。
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