ワクチン有効性は2ヶ月で低下?! 追加接種で製薬会社はボロ儲けか?
(画像=tkyszk/stock.adobe.com)

イスラエルや英国、米国などのコロナワクチン先進国でも新型コロナウイルスのデルタ株が猛威を振るう中、ファイザーを筆頭とする製薬会社は追加接種(3回目のワクチン)の必要性を主張している。その一方で、製薬会社から新たに9人がビリオネア(純資産10億ドル/約1,104億8,534万円以上)の仲間入りを果たすなど、「世界の危機を利用したワクチンビジネス」に対する批判も高まっている。

追加接種に動くワクチン先進国 感染再拡大対策

CDC(米国疾病予防管理センター)は8月上旬に発表した報告書の中で、「新規感染者の多くはワクチン未接種者である」とした上で、「ワクチン接種者でもデルタ株に感染した場合、第三者に感染させるリスクは未接種者と同じである」「ワクチン接種者の増加に伴い接種者の感染率が上昇している」と指摘した。

再感染を食いとめる切り札として期待されているのが、追加接種である。3回目のワクチンを提供することで、有効性を維持する意図だ。

すでにイスラエルは、追加接種を開始した。英国やドイツ、フランス、オランダなど一部の欧州諸国が9月開始を目途に、高リスクグループを優先とする3回目の接種を検討しているほか、米国でも同様の動きが見られる。

ファイザー「ワクチンの有効性は2ヵ月ごとに低下する」

実は追加接種の必要性に関しては、デルタ株が世界各地に拡散する以前から議論されていた。ファイザーとジョンソンエンドジョンソンは比較的早い段階から、「免疫抗体は時間の経過と共に低下する」という理由で追加接種の可能性を示唆していた。

可能性が現実味を帯びてきたのは、デルタ株のまん延と共により広範囲なデータが収集されたことに起因する。ファイザーは最新の分析調査で、有効性がピーク時の96%から6ヵ月後には84%に低下したというデータを提示し、「ワクチンの有効性は2ヵ月ごとに低下する」と結論付けた。

米エモリー大学の免疫学者ラフィ・アーメド博士は、「どのようなワクチンでも、時間の経過と共に抗体価とT細胞力価は低下する」ため、「追加接種はより強い免疫応答を誘発するはずだ」と述べている。

製薬会社側の主張を裏付ける、追加用量の試験結果も報告されている。治験参加者が2回目の接種を受けた数ヵ月後に、ファイザー、モデルナ、アストラゼネカ、シノバックのワクチンをそれぞれ追加投与したところ、感染を阻止する中和抗体のレベルが急上昇したというのだ。

WHOは反論「十分なデータを収集できていない」

しかし、すべての科学者が現時点における追加接種の必要性に同意しているわけではない。WHO(世界保健機関)のワクチン責任者キャサリン・オブライエン博士など一部の科学者は、「追加接種の必要性を判断するための十分なデータを収集できていない」として、製薬会社の主張に疑念を唱えている。

また、「どの層が3回目の接種を必要とするのか」という点も曖昧だ。追加接種を実施あるいは予定している国では、コロナに感染すると重症化するリスクの高い高齢者や基礎疾患性患者などを対象としているが、これらの層が実際に追加接種を必要とするかについては明らかになっていない。「仮に追加接種が必要でない層にまで実施された場合、貴重なワクチンを無駄にしてしまう」との批判もある。

WHOのデータによると、8月4日の時点で高所得国の51%以上がワクチンを接種済みであるのに対し、低所得国では1.4%にも満たない。同機関はワクチン格差をこれ以上拡大させないためにも、主要国への追加接種を中止し、ワクチンの不足が深刻な低所得国に寄付するよう呼びかけているが、一刻も早い経済の正常化を目指す主要国にとっては、悠長に構えている余裕はない。

BioNTech、モデルナのCEOの純資産が4,400 億円超え

追加接種議論が加速する一方で、製薬会社による過度の利益創出主義への批判も高まっている。

7月の決算報告によると、モデルナの4~6月期決算の売上高は44億ドル(約4,860億6,247万円)と前年同期の約66倍に増加し、最終利益は27億ドル(約2,982億7,890万円)と赤字から黒字に転じた。

一方、ファイザーは通期の売上高を780億~800億ドル(約8兆6,167億~8兆8,377億円)と予想している。そのうち335億ドル(約3兆7,009億円)がワクチンの販売によるものだ。第2四半期の売上高は前年同期比から92%増加し、190億ドル(約2兆989億円)だった。両社がワクチンの販売増加に、多大なる恩恵を受けていることは言うまでもない。

「莫大な開発費がかかるから製薬会社は儲からない」という声もあるが、実際にはコロナ禍で続々とワクチンビリオネアが生まれている。

世界のすべての人々がワクチンに平等にアクセスできるように促進する非営利組織People’s Vaccine Allianceがフォーブス誌の長者番付を分析した結果、最近だけでもワクチン製薬産業から少なくとも9人がビリオネアの仲間入りをしており、資産総額が193億ドル(約2兆1,319億円)に達した。

この中にはそれぞれ、純資産が40億ドル(約4,423億1,221万円)を超えた、モデルナのステファン・バンセルCEOとBioNTechのウグル・サヒンCEOも含まれる。他にも、ワクチン銘柄を大量保有する8人が一足先にビリオネアになっており、資産総額はさらに322億ドル(約3兆 5,564億円)増えたという。

「世界を救うためのワクチン」のはずが…?

追加接種が広範囲で実施された場合、各社のトップを含む大株主の資産はさらに増加するだろう。「世界を救うためのワクチン」を高所得国が買い占め、製薬産業のトップが私腹を肥やす。さらに、People’s Vaccine Allianceが指摘しているように、開発資金の大部分が公的資金で賄われている事実を考慮すると、何とも腑に落ちない話ではないだろうか。

文・アレン琴子(オランダ在住のフリーライター)

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