(本記事は、山端 康幸氏の著書『アパート・マンション経営は株式会社ではじめなさい』=あさ出版、2021年6月17日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

不動産業には消費税計算の例外がたくさんある

知らない人は要注意!不動産業における消費税の取り扱い方
(画像=NewAfrica/stock.adobe.com)

消費税とは、商品・製品の販売や役務の提供に対してかかる税金です。具体的には、製造業者、流通業者、小売業者の各取引段階において、それぞれ10%が課税され、最終的にその商品・製品を購入し、消費するお客(=消費者)が、10%全額を負担します。

消費税は、例外事項が少ない、計算がとてもシンプルな税金ですが、不動産関連の取引だけは例外的に非課税等の扱いが多くなっているので、注意が必要です。詳しくみていきましょう。

◆消費税のしくみとは

①消費税の計算方法

消費税は次のように計算して、納税をします。

売上にかかった消費税(預かった消費税)−仕入・経費にかかった消費税(支払った消費税)=事業者が税務署に納税する消費税

次のような条件のケースでみてみましょう。

  • 事務所を店子に対して年間500万円で賃貸
    家賃収入500万円に消費税50万円(500万円×10%)を含めた550万円を受け取る。

  • 不動産管理会社に対する管理費を年間100万円支払い
    管理費100万円に消費税10万円(100万円×10%)を加えた110万円を管理会社に支払う。

この場合、事務所のオーナーが税務署に対して納めるべき消費税の額は、50万円−10万円=40万円となります。なお、支払った消費税が受け取った消費税を上回った場合、その差額が還付されます。

②消費税の計算期間と納税

会社の場合、事業年度の取引を集計し、事業年度終了日から2カ月以内に納税します。

◆消費税が課税される取引、課税されない取引がある

消費税がかかる売上・仕入を「課税売上」「課税仕入」といい、これらを総称して「課税取引」といいます。一方で、消費税がかからない商取引は「非課税取引」といいます。すでに述べたように、不動産関連取引は例外的に非課税取引が多い分野です。課税・非課税の分類を下記の表にまとめました。

知らない人は要注意!不動産業における消費税の取り扱い方
(画像=『アパート・マンション経営は株式会社ではじめなさい』より)

不動産業に関する代表的な取引について、課税取引に当たるのか、非課税取引に当たるのか、もう少し詳しくみてみましょう。

◆土地の譲渡・貸付は課税?非課税?

①土地等の譲渡

ここでいう、土地等とは、土地のほか、土地の上に存する権利、地上権、土地の賃借権、永小作権、地役権等を指します。

土地は使うことでなくなったり、消えたりするものではなく、市場における価格の変動を除けば、時間の経過とともに価値が減少することもありません。そのため、土地の売買は消費という概念にそぐわないため、消費税の対象から外されています。

②土地等の貸付

土地等の貸付も土地の譲渡と同じ理由により原則として非課税となります。しかし、土地等の貸付の形態により課税取引となる場合もあります。

【イ】土地を一時的に使用させる場合
土地の貸付は、原則として非課税ですが、貸付期間が1カ月に満たない場合など一時的に使用させる場合には、課税取引となります。

【ロ】駐車場やテニスコートなどの場合
建物や駐車場など施設の利用に伴い土地を使用させる場合には課税取引となります。したがって、駐車している車両の管理を行っている場合や、駐車場としての地面の整備又はフェンス、区画、建物の設置などをして駐車場として利用させる場合には、消費税の課税の対象となります。

このほか、野球場、プールまたはテニスコートなどの施設の利用に伴って土地が使用される場合も消費税の課税の対象となります。

【ハ】駐車場の場合
駐車場の貸付は課税取引となりますが、地面のアルファルト整備等がないいわゆる青空駐車場の場合には、非課税取引となります。

◆建物の譲渡・貸付は課税?非課税?

①建物の譲渡

原則課税取引となります。

②建物の貸付

建物の貸付は原則課税取引です。しかし、住宅の貸付は、非課税です。ここでいう住宅とは、人の居住の用に供する家屋または部屋を指し、マンション、アパート、一戸建ての住宅、社宅、寮などです。

一方で、住宅であっても、貸付期間が1カ月に満たない場合は課税取引となります。反対に、旅館やホテルのような旅館業にかかわる施設の貸付の場合には、貸付期間がたとえ1カ月以上でも課税取引となります。

アパート・マンション経営は株式会社ではじめなさい
山端 康幸
税理士法人東京シティ税理士事務所 所長。税理士。
土地活用や相続税対策に関する不動産税務を専門とする。
不動産税務専門税理士として40 年の経験を有する。
クライアントもアパート・マンション経営者が多く長期的な資産活用の税務コンサルタントを業務としている。
明治大学リバティアカデミー講師・全国宅地建物取引業協会講師・不動産コンサルティング協議会講師・賃貸不動産経営管理士協議会講師などを歴任、その他新聞社など主催のセミナーを数多く行う。

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