不動産投資においては、入居者の確保のためにも投資物件を良好な状態で維持し存続させていくことが必要です。例えば経年劣化の場合は、実費での修繕の必要があります。しかし火災などの災害における原状回復費用は、その災害の程度によって異なりますが経年劣化よりも多額の費用がかかる可能性が想定できるでしょう。
実際物件購入の契約時は、火災保険についてじっくりと検討する時間がなく後回しにされがちです。しかし火災保険こそ補償内容をしっかりと吟味し物件を良好な状態で維持するための手段として有効活用することが求められます。
不動産投資における火災保険の必要性
不動産投資を行う際に考えておきたいリスクの中に「修繕費用リスク」「自然災害リスク」があります。さらに物件購入後にかかる費用の中には、固定資産税などのほかさまざまな修繕費用や管理費用、点検費用、広告宣伝費などがあり忘れてはならない費用の一つが「火災保険料」です。火災保険は、補償内容や期間によって保険料が異なります。
そのため「所有する物件にどのような補償が必要か」「補償するための最終的な保険料はどのくらいになるのか」について考えることが必要です。しかし上述した通り最初の契約時には、検討する時間がないため、一般的な補償が付帯されている火災保険に加入し更新時も前年と同じ内容で更新する方が多いかもしれません。
不動産投資では、収入と支出のバランスが重要です。いくら立地条件が良く需要の見込める物件でも入居者がつかなければ収入は減ってしまいます。また突発的な修繕費用が発生した際には、支出割合が大きくなる点も忘れてはいけません。自然災害は、外部要因となるため、火災保険でしか対応できませんが活用することで自然災害リスクを回避することが期待できます。
なぜ火災保険が必要な具体的理由とは?
不動産投資物件を購入する際は、レバレッジ効果を最大限活用するために金融機関から融資を受けて行うのが一般的です。その際、担保となる投資物件が融資条件を満たすためには、火災保険の加入が必須となります。そのため融資実行日までに火災保険の加入証明や申込書の写しなどを金融機関に提出することが必要です。
また火災保険に加入していれば火災や台風などの自然災害、第三者による汚損や破損事故にり災した際、保険から修繕費用が支払われます。投資物件に対する火災保険においては、保険の補償範囲や特約の選択によって支払う保険料、受け取れる保険金額が大きく変わるのが特徴です。修繕費用の自己負担額を抑えることは、予定している利回りを維持するための手段となり得るでしょう。
火災保険の補償内容
不動産投資物件における火災保険の補償内容は、「基本的な補償部分」「特約部分」の2つに分けられます。
基本補償で補償される内容
基本補償で補償される内容は、大きく分けて以下のように自然災害や盗難など多岐にわたります。
- 火災、落雷、破裂・爆発
- 風災、ひょう災、雪災
- 水災
- 外部からの衝突、水濡れ、盗難
- 破損・汚損
例えば破損・汚損は、以下のようなものが対象です。
- 掃除中に壁に掃除機をぶつけて壁を破損した
- 子どもが室内でボールを投げて窓ガラスを破損した
ただし保険会社によっては、基本補償ではなく特約の対象となっているものもあります。そのため契約時には、基本補償でどこまで補償されるのかをしっかりと確認するようにしましょう。
特約で補償される内容
基本補償で補償されるもの以外で必要な補償については、特約で必ずカバーしておきましょう。
特約 | 補償内容 |
---|---|
施設賠償責任特約 | ・物件所有者の賃貸管理業務を原因とする偶然な事故により入居者等にケガを負わせた場合の補償 |
建物電気的・機械的事故補償特約 | ・投資物件に付属されている設備などについてショートやスパーク、過流電などの電気的および機械的な事故が発生した際の補償 |
臨時費用特約 | ・災害のり災時に損害保険だけでは賄えない費用を補償(一時的な仮住まい費用など) |
家賃収入特約 | ・投資物件において物件が被害に遭い入居者が居住できない期間の家賃収入を補償 ・補償期間は、物件が復旧するまででその期間、任意設定できるが保険会社によって異なる |
家主費用特約 | 投資物件内での死亡事故によりオーナーが被る家賃収入の損失および清掃や改装にかかる費用を補償 |
火災保険会社を選ぶ際の注意点
火災保険に加入する際は、代理店を通して加入するケースが多い傾向ですがまず自分に必要な補償内容を把握することが大切です。特に投資物件の火災保険は、保険料の高低だけで判断するのではなく補償内容で判断することが重要となります。例えば「希望融資金額が減額になった」「予想以上に諸経費がかかった」といった場合は、火災保険料の支払いに困りかねません。
なかには「補償を省いて保険料を下げよう」と考えるオーナーもいますが得策とはいえないでしょう。不動産投資は「収益をいかに大きくするか」がポイントです。購入する物件が中古物件であれば今後発生する修繕費までしっかりと考えておく必要があります。そのため万が一の際の修繕費は、火災保険で補てんできるように補償範囲は広げておくことが大切です。
保険は、経済的な解決策の手段となるため、資金に余裕がないからといって補償を省くことはおすすめできません。余裕がないからこそ補償を充実させておくことが不動産投資における火災保険を選ぶ際のポイントといえるでしょう。
上手な火災保険の入り方
火災保険に加入するにあたっては、まず複数の保険会社から見積もりを取るようにしましょう。また保険金額は、融資金額と同額に設定することがポイントです。評価額が高い物件については、約定付保割合で保険金額を設定するようにしましょう。また特約については、できるだけすべて付加しておくことがおすすめです。
さらに支払保険料や特約の内容、保険会社の規模などを総合的に判断し最終的に加入する保険会社を決めるとよいでしょう。
2つある火災保険の加入方法
受け取る保険金は、加入方法によって異なります。火災保険の加入方法には「再取得価格」「時価」の2通りです。それぞれの加入方法によって受け取れる保険金額に違いがあります。ここでいう「再取得価格」とは、同じレベルのものを再築もしくは再購入する際に必要な金額のことで「時価」とは経過年数による価値の減少および使用による消耗分を差し引いた金額のことです。
「再取得価格」と「時価」での保険金支払額の違い
・再取得価格
新築の物件を購入する際に「再取得価格」で契約しその保険金額が取得価格6,000万円であった場合、仮に5年後に火災で全焼したとしても保険金は6,000万円全額が支払われます。
・時価
同ケースにおいて時価で契約した場合、建物の経過年数によって価値が下がっていきます。そのため同じ5年後に火災で全焼した場合、物件価値は取得価格から減価償却額に使用による劣化額を差し引いた金額です。取得価格の6,000万円を受け取ることはできず劣化度合いによっては、かなり減額された保険金が支払われる可能性があります。
現在の火災保険においては「再調達価格」での契約が一般的で保険期間は最長10年となっています。しかし2015年10月以前の契約では、35年の長期契約ができたため、2015年10月よりも前に「時価」で契約し同じ内容で更新を続けている方は要注意です。
火災保険の対象とならないものとは?
火災保険では、さまざまな損害に対する補償が用意されていますがその補償対象はあくまでも「事故」となっている点は押さえておきましょう。「事故」とは、自然災害や第三者による破損などに伴う被害のことです。そのため自然劣化による修繕費用やメンテンナンス費用については補償の対象外となります。特に火災保険においては、保険金支払いの際、経年劣化によるものかどうかを重視します。
そのため以下のケースは、保険金の支払い対象外となることはしっかりと押さえておきましょう。
- 屋根の防水や外壁コーキング修理、ひび割れや色あせなど
- エアコンや給湯器などの付属設備の故障
- エレベータ―のワイヤーや機械市駐車場のチェーンベルトの不具合
もし意図的に第三者による破損に見せかけ「事故」として保険金を請求しようとしても保険会社は必ず調査を実施します。その調査能力は、第三者機関を活用して精査することもあり発覚してしまう可能性が高いでしょう。事故による修繕費用は、保険金で対応可能です。しかしそれ以外の修繕費用について対象外となることは、しっかりと認識しておきましょう。
(提供:YANUSY)
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