所得証明書に関する3つの注意点

所得証明書に関する3つの注意点を解説する。

注意点1.定義や内容は市区町村によって異なる

所得証明書は全国で共通して使われる呼称ではない。理由は、住民税が地方税のひとつであるからだ。地方税の概要は全国で同じだが、細かい名称は自治体が決められる。したがって、全国一律の国税である所得税と異なり、名称が市区町村によって変わるのだ。

もし窓口で請求するのなら「住宅ローンの所得証明として使える用紙が欲しい」などと、使用目的まで一緒に伝えるのが望ましい。窓口担当者に理解してもらいやすいし、発行ミスを防げる。

注意点2.証明年度と所得の対象年度が異なる

市区町村の窓口で所得証明書を出してもらうとき、証明年度と証明する所得の対象年度が違う点にも注意したい。たとえば、2021年6月に所得証明を出してもらうと、証明年度は2021年度となるが、証明する所得の対象年度は2020年度となる。

なぜ、証明年度と証明する所得の対象年度が異なるのだろうか。理由は住民税の仕組みにある。

年末調整や確定申告を通じて、個人の所得額や扶養等の情報は税務署に届く。その後、所得情報は各市区町村に伝送される。そして、所得が発生した翌年の3月後半から5月上旬にかけ、所得情報を元に住民税の所得割額が計算され、6月上旬に住民税の決定通知書が個人や勤務先に届く。

つまり、住民税の課税年度は今年の4月から翌年3月でも、その計算基準となる期間は前年の1月1日から12月31日なのだ。

所得証明書は、金融機関における住宅ローンの審査や、保育園の入園を申請する場面で必要となる。申請にあたって、証明が必要な所得の対象年度を確認しておきたい。

注意点3.申告しないと証明書は発行されない

年末調整や確定申告で所得や税金を申告しないと、税務署や市区町村に所得情報が届かない。結果、市区町村では所得証明書を発行できなくなる。

「給与所得と退職所得以外の所得の合計額が20万円以下なら確定申告しなくてよい」といわれるが、あくまで税務署に対する所得税の確定申告だけだ。副業などの所得が20万円以下であっても、住民税は市区町村で確定申告しなくてはならない。

また、「課税所得額が0円なら申告しなくても問題ない」ともいわれるが、申告しないでいるとローンやクレジット、保育園などに関する公的サービスの申請で困る可能性がある。

いざというときに備えて、年末調整や確定申告の手続きは済ませておこう。