会社に関する法律は「専門的で分かりにくい」というイメージを持つ人も多いのではないだろうか。しかし会社法は、会社経営するうえで必要な知識であり経営のトップから法務担当、新入社員に至るまで知っておいてほしい知識が含まれている。大企業にも中小企業にも影響を与える会社法の最低限の知識を紹介していく。
目次
会社法とは一体何か
会社法第3条によると「会社は、法人とする」とある。また同法第105条では、株主の権利について以下の3つの権利があると記載。
- 剰余金の配当を受ける権利
- 残余財産の分配を受ける権利
- 株主総会における議決権
つまり会社は法人かつ営利を目的とする経済的な存在である。「営利を目的とする」とは、事業活動で得た利益を株主に分配することだ。最初に会社法の成立した背景と会社の種類から見ていこう。
会社法とは?
会社法は、会社の設立から組織、運営、管理に至るまでを定めた技術的な法律だ。2006年5月1日に施行され会社経営そのものに大きな影響を与える重要な内容が多く含まれている。「商法(第2編)」「有限会社法」「株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律」が統合され、「会社法」として単体の法律として再編成したものだ。
2014年6月に改正会社法が成立し2015年5月に施行されている。改正の目的は、親会社の規定の整備、コーポレートガバナンスの強化など多岐にわたる。今後も法改正内容のチェックはかかせない。2021年3月施行の改正では「取締役に対する報酬の付与や費用の補償等に関する規定の整備」「監査役会設置会社における社外取締役の設置の義務付け」などが行われている。
また2023年4月施行の法改正では、株主総会関連で「電子提供措置制度の創設」を予定している。詳しくは法務省のホームページを参照されたい。
4種類ある会社の違い
「会社」は、以下の2種類に分けられ、いずれも法人であり事業の行為は、商行為とされている。
- 株式会社
- 持分会社(合名会社、合資会社、合同会社)
会社法が施行される前は「有限会社」と呼ばれる会社があった。会社法施行に伴い廃止されたが現在も「特例有限会社」として存続している。特例有限会社は、会社法上の分類では株式会社であるが商号は「有限会社」と称することが必要だ。株式会社と持分会社の違いは、出資者の地位が「株式か」「持分か」にある。
・株式
流通させることが可能であり投資家から資本を集めた大規模な事業を行える。株主(=社員)がすべて有限責任となることも出資者を広く募ることを可能にしている。
・持分
譲渡するのに社員の同意が必要となるなどの制約があり、流通を目的にしていない。出資者(=社員)が同時に従業員となることから分かるように少人数の仲間で集まって事業を行う会社というイメージだ。
- 有限責任:出資者の会社債権者に対する責任は、出資した金額が限度
- 無限責任:出資者の会社債権者に対する責任は、個人の全財産を失ってでも返済する必要がある
【株式会社の特徴】
株式会社の大きなメリットは、不特定多数の人から資金を集めることができることだ。大きな資本を集めることができるため、大規模な会社を作るのに適している。株式会社の以下の特徴を考えると資金を集めやすく会社の中でも圧倒的に株式会社が多い理由が分かるだろう。
・株主平等原則
誰でも株主となることができ株主は株式数に応じて平等に扱われる。
・有限責任
株主の責任は、株式の引受価額を限度に負い、会社の債権者などから直接請求されることはないため、安心して株主になれる。
・株式譲渡自由の原則
株主は、株式を自由に譲渡できるため、投資した資金をいつでも回収できる。
・善意取得
株券は、流通する有価証券だ。善意で取得したものであれば重大な過失がない限り権利のない者から取得しても株主としての権利が取得できる。
・所有と経営の分離
株主総会で選んだ取締役や執行役、取締役会で選んだ代表取締役や代表執行役に会社の経営を任せ出資者である株主(所有者)と区別されている。
【持分会社の特徴】
「社員」とは出資者のことである。株式会社では「株式」と呼び、持分会社では「持分」と呼ぶが、いずれも出資による社員の地位という点では大きな違いはない。持分会社の特徴は、原則、社員であれば誰でも業務執行権を持つことだ。社員が2人以上いる場合、持分会社の業務の意思決定は社員の過半数で決定する。また利益や損失の分配も自由に定款に定めることが可能だ。
定款の変更は、原則総社員の同意で行うことができ、出資割合に応じて議決権が与えられる株式会社とは内容が大きく異なる。株式会社では、株主が誰でも業務執行権を持つことはない。