みずほ銀行、月1ペースのシステム障害 業務改善命令も意味無し?
(画像=picturecells/stock.adobe.com)

日本3大メガバンクの一角を占めるみずほ銀行が、不名誉な記録を更新し続けている。9月30日、今年8度目となるシステム障害を起こしたのだ。止まらないシステム障害に、麻生太郎金融相も「極めて迷惑な話」とご立腹である。国の介入も取り沙汰されている。

みずほ銀行が今年8度目のシステム障害を起こす

みずほ銀行では2021年、8度目のシステム障害が、9月30日に起きた。外為取引に関するシステム障害で、処理の遅延が起きていた。10月1日には外為取引のシステム障害は復旧したが、みずほ銀行に対する顧客の不信感はさらに高まる結果となった。

みずほ銀行は2002年4月と2011年3月に大規模なシステム障害を起こし、その後、再発防止策に力を入れたはずだったが、2021年は何度もシステム障害が発生する事態となっている。

2021年の1度目のシステム障害は2月28日に起きた。ATMに通帳やカードが取り込まれる事象が発生するなどし、4,000台以上のATMが一時稼働停止となった。その後も、3月3日、3月7日、3月12日にシステム障害を起こしている。

システム障害が起きるたびに、みずほ銀行は顧客にお詫びした上で、再発防止策の強化について通知を出した。しかし、その後もシステム障害の発生が相次ぎ、金融庁は9月22日、7度目のシステム障害を受け、業務改善命令を出した。

7度目のシステム障害後、金融庁が業務改善命令

金融庁の業務改善命令の概要を説明しよう。金融庁は、みずほ銀行に対しては3項目、みずほ銀行の親会社であるみずほフィナンシャルグループに対しては2項目について業務改善の要求を出している。

まずみずほ銀行に対しては、当面のシステム更改・更新の計画について再検証と見直しを行うことなどを求めた上で、再検証と見直しの結果や適切な管理態勢の確保のための計画を10月29日までに提出することを求めた。

みずほフィナンシャルグループに対しては「当行(みずほ銀行)によるシステム更改及び更新等の計画に係る再検証及び見直しの結果並びに適切な管理態勢の確保のための計画を検証すること」とし、検証結果を10月29日までに提出することを求めた。

このような点を要求したということは、事実上、金融庁がみずほ銀行のシステム運営を管理することになり、報道機関は「金融庁が強行介入」といった見出しで、業務改善命令について報じた。

ちなみに、金融庁はみずほ銀行のシステムやガバナンスの全般的な検証を継続して行っており、「その結果を踏まえて、改めて必要な行政対応について検討する」としている。

業務改善命令の8日後に、またシステム障害

業務改善命令が出されたのは9月22日だったが、みずほ銀行ではその8日後の9月30日にまた新たなトラブルが起きた。これが冒頭触れた今年8度目のシステム障害だ。この状況を受け、麻生金融相は「利用者にとって不便」とみずほ銀行を批判している。

2021年の2~9月に8回のシステム障害を起こしたということは、月に1回のペースでシステム障害を起こしていることになるが、今後、みずほ銀行のシステム障害が起きなくなる日は来るのだろうか。それは誰にも分からないが、あまり良い結果は期待できない状況だ。

再発防止に努めてもシステム障害がなくならないということは、システム全体に影響を及ぼす決定的な問題が潜んでいる可能性を疑わざるを得ない。このような問題の解消には、通常多くの時間を要する。それまでの間、月1ペースでシステム障害が続くのだろうか。

そしてシステム障害が起きるたび、みずほ銀行への信頼が顧客から失われていく。

顧客離れでみずほ銀行の業績が急速に悪化していく?

今後懸念されるのが、システム障害を引き金にみずほ銀行ならびにみずほフィナンシャルグループの業績が急激に悪化していくことだ。

顧客離れが進むと当然、金融機関としての収益力は低下していく。そして、システム改修に多大な費用を計上することになれば、状況はさらに悪化する。

ただし、だからといって経営破綻が間近だというわけではない。2021年3月期の通期決算では、みずほフィナンシャルグループは増益を果たしている。同社の証券市場部門が大きな利益を上げ、さらにはコロナ禍で企業への融資も増えたからだ。

しかし、もし証券市場部門が多大な損失を出し、コロナ禍の収束で企業への融資も減り、さらにはシステム障害で顧客が減るという「三重苦」に陥ったら、将来どうなるかは分からない。

まさかの「国有化」もあり得るのか

仮にみずほ銀行の業績が著しく悪化すれば、政府がみずほ銀行の株式を取得し、復活に向けて国有化をする可能性もゼロではない。日本でも過去に国有化の事例はある。当面は国有化という話が持ち上がることはないだろうが、それくらいの危機感を持ってシステム障害の解消に向けて取り組まなければ、みずほ銀行に未来がないかもしれない。

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)

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