日本に独占企業は存在する? 独占禁止法についてや世界シェアが高い中小企業も紹介
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ある事業領域を複数社で争うか、1社単独で独占できるかによって、事業者側の利益率や利益額は大きく変わるはずだ。日本には独占禁止法が存在するが、独占企業というものが存在するのだろうか。

そこで今回は、独占企業とは何か、独占禁止法とは何か、独占禁止法が禁止していること、日本で独占に近い状態となっている業界、世界シェアが高い中小企業などを解説していこう。

目次

  1. 独占企業とは何か
    1. 独占と寡占の違い
  2. 独占禁止法とは何か
  3. 独占禁止法が禁止していること 主な3点
    1. 1.市場を独占しようとする行為を禁止
    2. 2.事業者が共同して、競争を制限することを禁止
    3. 3.公正な競争を阻害するおそれのある行為を禁止
  4. 日本で独占に近い状態となっている業界は?
    1. 携帯通信サービス
    2. 航空業界
    3. たばこ産業
  5. 「世界シェアが高い」中小企業3社
    1. 合同会社アマイケ
    2. 株式会社エンジニア
    3. 株式会社西村鐵工所
  6. 日本にも独占に近いと言える業界や企業は存在する

独占企業とは何か

独占企業とは何だろうか。ひと言で言えば、ある産業や市場において、他の競争者を排除して、1社のみが利益を享受している企業のことだ。独占企業になると、他の競争者がいないため、自らの利益を最大化できる価格を設定しやすい。したがって、独占企業は高収益体質となることが多い。

独占と寡占の違い

「独占」に似た言葉に「寡占」がある。寡占とは、ある産業において、少数の企業の市場シェアが高く、その少数の企業によって実質的に支配されている状態を指す。つまり、1社によって利益を享受している状態を「独占」、複数社によって利益を享受している状態を「寡占」と呼ぶ。

独占禁止法とは何か

独占状態は、企業にとっては高収益の源泉となり得るが、消費者にとっては必ずしも有益ではない。事業者間の激しい自由競争によって、サービスや製品の品質が向上し、価格が安くなったり、イノベーションが起こりやすくなったりする。しかし、独占状態や寡占状態であると、そのようなことが起こりにくい。

また、自由競争による事業者間の淘汰が発生しないと、事業者にとっても短期的な業績は向上しやすいとは言え、中長期的な競争力が衰退してしまう。「消費者から他社と比較される」という状況がないと、性能向上や新技術の開発を行うインセンティブが枯渇するためだ。

さらに、事業者の中長期的な競争力が衰退するということは、国力の低下にもつながりかねない。そこで、日本では独占を禁止する「独占禁止法」が存在する。独占禁止法の正式名称は「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」だ(本稿では「独占禁止法」と呼称することにする)。

公正取引委員会ウェブサイトによると、独占禁止法の目的は、公正かつ自由な競争を促進し、事業者が自主的な判断で自由に活動できるようにすることだ。市場メカニズムが正しく機能していれば、事業者は自らの創意工夫によって、より安くて優れた商品を提供して売上向上を目指せる。また、市場メカニズムが正しく機能していれば、消費者はニーズに合った商品を選択することができる。

このような考え方に基づいて、独占禁止法のように競争を維持・促進する政策は「競争政策」と呼ばれている。また、独占禁止法の補完法として、下請事業者に対する親事業者の不当な取扱いを規制する「下請法」がある。

独占禁止法が禁止していること 主な3点

それでは、独占禁止法は具体的にどのような行為を禁止しているのだろうか。独占禁止法が禁止していることはいくつもあるが、今回は主要な3つについて解説していこう。

1.市場を独占しようとする行為を禁止

独占禁止法では、市場を独占しようとする行為を禁止している。具体的には、事業者が単独もしくは他の事業者と手を組み、不当な低価格販売、差別価格による販売などの手段を用いて、競争相手を市場から排除したり、新規参入者を妨害したりする行為を指す。

また有力な事業者が、競合相手の株式を取得したり、役員を派遣したりすることによって、事業活動に制約を与え、市場を支配しようとすることも禁じられている。ただし、正当な競争の結果、ひとつの事業者が市場を独占するようなことになった場合は、違法とはならない。

2.事業者が共同して、競争を制限することを禁止

複数の事業者がお互いの利益を守るため、価格改定や入札頻度などについて密に連携し、市場での競争を制限することがある。独占禁止法では、このような行為を禁止している。具体的には「カルテル」や「入札談合」などが該当する。

カルテルとは、複数の事業者が連携し、本来、各事業者が自主的に決めるべき商品の価格や販売・生産数量などを共同で取り決め、競争を制限する行為を指す。正式な書面の有無に関わらず、紳士協定や口頭合意などであっても、事業者間で何らかの合意があった場合はカルテルと見なされる。

入札談合とは、国や地方公共団体などの公共工事などに関する入札の際、入札に参加する事業者たちが事前に連携し、受注事業者や受注金額などを決めてしまう行為を指す。本来入札は、国民の税金をより有意義に使うため、事業者間による自由で活発な競争を促進することを目的としている。したがって入札談合は、税金の無駄遣いにつながり、公共の利益を損なう非常に悪質な行為と見なされている。

3.公正な競争を阻害するおそれのある行為を禁止

独占禁止法では、自由な競争を妨げる行為、競争の基盤を侵害するような行為を「不公正な取引方法」として禁止している。「不公正な取引方法」には、法律で定められているものと公正取引委員会が指定して定められているものがある。

例えば、取引拒絶、差別対価・差別取扱い、不当廉売、再販売価格の拘束、優越的地位の濫用、抱き合わせ販売、排他的条件付取引、拘束条件付取引、競争者に対する取引妨害、不当顧客取引、不当高価購入、競争会社に対する内部干渉などが挙げられる。

日本で独占に近い状態となっている業界は?

日本には独占禁止法があるので、原則として完全な独占企業となるのは難しいが、結果として近い形になっている業界はある。特に、初期投資が莫大にかかったり、認可がないと営業できなかったりするなどの参入障壁が高い産業では、その傾向が強くなりやすい。

では、日本で独占に近い状態になっている業界にどのようなものがあるのだろうか。例えば、以下のようなものが挙げられる。

携帯通信サービス

携帯通信サービスは特定の少数の事業者が市場を独占している典型的な例だ。携帯通信サービスの三大キャリアと言えば、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社が挙げられる。近年、楽天が携帯通信サービスに参入し、三大キャリアの独占状態に風穴を空けた。

とはいえ、楽天はNTTドコモの通信回線を借りてサービスを提供している場合が多い。通信産業は初期投資および維持のコスト負担が重く、また許認可の問題もあるため、新規参入が難しい産業と言えるだろう。

航空業界

航空業界も通信産業と同じく、初期投資および維持のコスト負担が重いため、少数の事業者による独占状態となりやすい。近年はLCCが人気であるが、日本の航空業界は、JALとANAが2大巨頭として独占に近い状態を保っている。

たばこ産業

たばこ産業には「たばこ事業法」という法律があり、認可性の産業であるため、参入障壁が高い。したがって、独占的に事業を行える産業と言える。たばこ産業を独占的に行っているのがJT(日本たばこ産業)だ。

「世界シェアが高い」中小企業3社

独占企業というと、日本を代表するような大企業をイメージしがちだ。しかし、以下に紹介する企業もある意味では「独占している」と言える。世界的に活躍する、日本が誇るべき中小企業を見ていこう。いずれも世界で認められる技術や商品を有しており、高い世界シェアを誇っているという。

合同会社アマイケ

石川県七尾市に本社を置き、自社ブランド織物・商品の卸売や小売、織物の請負加工などを行っている企業だ。

アマイケを代表する商品には、世界のトップメゾンを魅了した世界最軽量の極薄生地「天女の羽衣®」が挙げられる。天女の羽衣®は国内外の有名トップメゾンや、パリオペラ座をはじめとする数多くの有名劇場でも活用されている。ファッションシーン以外においても、オリンピックメダリストのウエアや、日本を代表するミュージシャンやダンサーの舞台や衣装として数多く採用されているという。

株式会社エンジニア

大阪府大阪市に本社を置き、主にネジ外しペンチを製造・販売している企業だ。

代表的な商品はネジ外しペンチ「ネジザウルス」だ。用途に合わせてさまざまなタイプのネジザウルスがあり、2002年の発売以来、累計500万本以上の大ヒットを続けているという。経済メディアでも特集されている、知る人ぞ知る大ヒット工具だ。

株式会社西村鐵工所

佐賀県小城市に本社を置き、CDドライヤー(伝導加熱型液体乾燥機)、I-Bコンベヤ(バケットエレベーター)などを製造している企業だ。

西村鐵工所が製造するCDドライヤーを筆頭に、国内特許23件、海外商標6件、国内商標3件、海外輸出実績も多数あり、国内外から高い評価を受けている。

日本にも独占に近いと言える業界や企業は存在する

ここまで、独占企業とは何か、独占禁止法とは何か、独占禁止法が禁止していること、日本で独占に近い状態となっている業界、世界シェアが高い中小企業などを解説してきた。中小企業経営者においては、独自の技術を生かした唯一無二を目指すのはとても重要なことだ。自社のどの商品を強化すれば市場独占に近づけるか、改めて考察してみても良いだろう。

文・菅野

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