企業が社会保険に加入していないことで起こるトラブル

社会保険や労働保険の加入を怠ることでトラブルが発生するケースが多く見られる。なぜなら社会保険や労働保険はセーフティネットの役割を果たしており、従業員は当然利用できるものと思っているからだ。

ペナルティーを受ける

・社会保険の罰則
年金事務所から繰り返し加入指導を受けているにもかかわらず手続きを行わない場合、年金事務所は事業主に対して必要に応じて立ち入り検査を実施することが可能だ。職権により遡って加入手続きを行って保険料額を決定することもある。

また職員の質問に対して虚偽の報告をした場合や検査を拒んだ場合は、6ヵ月以下の懲役、または50万円以下の罰金が科せられる可能性があるので注意したい(健康保険法第208条、厚生年金保険法第102条)。

・労働保険の罰則
事業主が故意または重大な過失により労働保険の手続きを行っておらず、その期間に労災事故が発生した場合は、会社にとって想定外の費用の負担を強いられかねない。労災保険の給付が行われれば遡って労働保険料と追徴金が徴収されるだけでなく、保険給付にかかった費用の全部または一部が徴収されてしまう。

その他のトラブル

・1.従業員の離職リスクが高い
健康保険や雇用保険に加入できる企業で働くことを希望するケースは多い。求人に応募する者の多くは、社会保険や労働保険に加入できる会社を前提に求職活動をしている。そのため社会保険や労働保険の加入義務を果たさない企業で長く働きたいと思う従業員は少ないだろう。社会保険や労働保険加入のニーズは高く、求人応募時の会社選びで「社会保険・労働保険加入」は大きなポイントとなる。

・2.退職時のトラブルが多い
健康保険に関するものでは、出産手当金や傷病手当金がもらえないことでトラブルになるケースが多い。出産手当金や傷病手当金は、退職日まで被保険者期間が継続して1年以上あり一定の条件を満たせば退職後ももらい続けることができる。しかし会社が社会保険の加入を怠り手当金をもらうことができなければ従業員にとって大きな損害を被ってしまう。

雇用保険の求職者給付も同様に被保険者期間が大きく影響する。離職理由が「会社都合か」「自己都合か」で基本手当の日数は異なり被保険者期間によっても基本手当の日数が異なるのが特徴だ。このようにそれぞれの給付は、被保険者期間が大きく影響することから会社が社会保険へ加入していなかった場合、退職後に従業員とトラブルになるケースは後を絶たない。

雇用保険では会社が手続きを怠るようなことがあれば、過去に遡って被保険者となったことの確認がなされることがある。

・3.業務委託契約や請負契約におけるトラブル
業務委託契約や請負契約で働く場合は、個人で国民年金や国民健康保険への加入することになる。ただし会社からの指示や指揮監督のもとで働き「従業員と同様の勤務実態がある」と判断された場合、その会社で社会保険や労働保険の加入が必要になる場合もある。働いている本人は、自分が労働者だと思っているケースもあり偽装請負などはもってのほかだ。

損害賠償を請求されるなど訴訟に発展することもあるため、注意しておきたい。

・4.助成金が受給できない
雇用調整助成金や特定求職者雇用開発助成金などの雇用関係の助成金は、労働保険料の滞納があると受給できない可能性がある。仮に助成金がもらえたとしても後日受給条件を満たさないことが発覚すれば返金を求められるため、注意しておきたい。