社会保険は法律で加入が義務付けている

社会保険と労働保険の加入条件のポイントを整理して見ていこう。

社会保険と労働保険の加入の条件

原則条件に合致すれば強制加入であり、企業が加入するしないを選べる制度ではない。そのため社会保険と労働保険の加入条件を理解したうえで確実に手続きを行うことが必要だ。

1.社会保険(健康保険・厚生年金保険)の加入条件

(1)正社員、法人代表者、法人役員
(2)1週間の所定労働日数と1ヵ月の所定労働日数が同じ事業所(会社)で同じような業務に従事する正社員の4分の3以上であるパート・アルバイト

健康保険・厚生年金保険が適用される事業所を「適用事業所」、加入要件を満たす従業員を「被保険者」と呼び上記の条件を満たす従業員は必ず加入しなければならない。手続きは、労働者を雇用する会社が行い保険料を納めることが必要だ。年金の受給権がある従業員でも加入要件を満たせば健康保険は75歳、厚生年金保険は70歳に達するまで加入できる。

また外国人や試用期間中の従業員でも加入要件を満たせば被保険者になる点も押さえておきたい。すべての法人の事業所や常時5人以上使用する個人の事業所(一部の事業所を除く)は「強制適用事業所」と呼ばれ厚生年金保険・健康保険へ加入しなければならない。また強制適用事業所以外の事業所でも一定の条件を満たせば社会保険に加入することができる(任意適用事業所)。

任意適用事業所の場合、健康保険・厚生年金保険のどちらか1つだけの加入も可能だ。厚生年金保険の被保険者数が常時501人以上の企業を「特定適用事業所」と呼ぶ。特定適用事業所で働く週の所定労働時間が20時間以上の短時間労働者については、健康保険と厚生年金保険の適用が拡大された。

また厚生年金保険の被保険者数が500人以下の企業は、労使の合意により申し出をすることで短時間労働者について社会保険の適用対象となることができる(任意特定適用事業所)。短時間労働者とは、以下のすべての要件を満たす従業員のことを指す。

  • 週の所定労働時間が20時間以上
  • 雇用期間が1年以上見込まれる
  • 賃金の月額が8万8,000円以上
  • 学生でない

厚生年金保険の被保険者数が常時501人以上とする「特定適用事業所」の要件が今後拡大されることが決まっている。2022年10月からの改正で変更される点は以下の通り。

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その後、2024年10月からの改正では、特定適用事業所の適用要件が100人超から50人超へと変更される。そのためいずれは週20時間以上働く従業員がすべて強制加入となる可能性もあるだろう。

・2.労働保険(労災保険・雇用保険)の加入条件
労災保険と雇用保険では、保険に加入する「被保険者の範囲」が異なる。労災保険は、被保険者という概念がない。なぜならパートやアルバイトなどの短期間労働者も含むすべての労働者が対象となるからだ。一方で雇用保険の被保険者は、以下の要件をすべて満たす労働者が対象となる。

(1)1週間の所定労働時間が20時間以上
(2)31日以上の雇用が見込まれる

正社員・パート・アルバイト・派遣などの雇用形態にかかわらず労働者を一人でも雇えば労働保険の適用対象となる点は注意が必要だ。

  • 社会保険:代表者1人の法人は、加入義務がある
  • 労働保険:代表者1人の法人は、加入義務がない

上記のように社会保険では、代表者一人でも「強制適用事業所」となり加入の義務がある。一方、労働保険では、会社の役員や同居の親族は労働者とはならない。