M&Aの目的とは?売り手・買い手双方のメリットと成功させる秘けつ
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M&Aを考え始めた時、売り手・買い手それぞれのM&Aの目的が気になる経営者も多いだろう。売り手・買い手どちらの立場にせよ、相手側のM&Aの目的を知っておくことで、交渉を有利に進められる可能性がある。本記事では、M&Aの目的やメリットを、売り手・買い手それぞれの立場から解説していく。

目次

  1. M&Aの意味
  2. M&Aの売り手から見た目的2つ
    1. 1.後継者不足を解決する
    2. 2.勇退後の生活にゆとりが生まれる
  3. M&Aの買い手から見た目的3つ
    1. 1.スケールメリットを得る
    2. 2.シナジー効果を得る
    3. 3.新規事業立ち上げに必要な時間を買う
  4. M&Aの売り手にとってのメリット2つ
    1. 1.商品・サービスを後世に残せる
    2. 2.従業員の雇用を守れる
  5. M&Aの買い手にとってのメリット2つ
    1. 1.優秀な人材を得られる
    2. 2.技術力を獲得できる
  6. 売り手・買い手のM&Aの目的を達成するためのポイント3つ
    1. 1.トップ面談でお互いの考え方を知る
    2. 2.事業内容への理解を深める
    3. 3.M&A仲介会社を利用する
  7. M&Aが成功すればお互いの目的を叶えられる

M&Aの意味

M&Aは、「Mergers and Acquisitions(合併と買収)」の頭文字を取った言葉で、会社や事業の合併や買収等を意味する。一般的にM&Aでは売り手と買い手が存在し、売り手が会社や事業を買い手へと売却する。

メディアが一時、上場企業の敵対的M&Aを大々的に報じたため、M&Aに対してマイナスイメージを持つ経営者もいる。しかし、中小企業のM&Aのほとんどは友好的M&Aだ。

そもそも、株式を上場していなければ、強制的に株式を買い占められるような敵対的M&Aの心配はない。あくまで売り手が売却に同意しない限り、買い手の意思だけでは買収できないからだ。

友好的M&Aでは、M&Aによって売り手・買い手の双方がメリットを享受できる。

M&Aの売り手から見た目的2つ

続いて、M&Aの目的を紹介していく。まずは売り手の目的から見ていこう。

1.後継者不足を解決する

M&Aにおける売り手の目的として多いのが、後継者不足の解決だ。

帝国データバンクが公表する「全国企業『後継者不在率』動向調査(2020年)」によると、後継者不在率は65.1%だ。近年、後継者不在率は低下傾向にあるものの、いまだに7割弱の経営者が後継者の不在に悩んでいることが分かる。

親族内や従業員に後継者がいなくとも、M&Aによる第三者承継を選択すれば、後継者問題を解決できる。

2.勇退後の生活にゆとりが生まれる

経営の出口戦略には、親族内承継・従業員への承継・M&A(第三者承継)の3つがある。そして、承継が叶わなかった場合は、廃業を選択することになる。

「後継者がいないから廃業するしかない」と考える経営者は多いが、廃業にともない数百万円単位の廃業コストが発生することも少なくない。不動産の売却や機械設備処分の手続きなど、廃業にともなう手続きは種類も多く複雑で、時間的にも金銭的にも大きな負担となる。

しかし、M&Aを選べば廃業コストを負担する必要はない。それどころか、売却によって売却益を得ることができ、勇退後の生活にもゆとりが生まれるだろう。

M&Aの買い手から見た目的3つ

続いて、買い手から見たM&Aの目的を3つ紹介していく。

1.スケールメリットを得る

M&Aで同じ業種・業態の会社を買収した場合、買い手はスケールメリット(規模の経済)を得ることができる。

たとえば、大量仕入によってコストを削減したり、店舗数の増加によって認知度が向上したり、取引先との交渉を有利に進められたりといったメリットが挙げられる。また、大量生産によって機械の稼働率が上がったり、ノウハウの蓄積によって業務効率が上がったり、生産性が向上することもある。

2.シナジー効果を得る

M&Aで買い手がメリットを得られるのは、業種・業態が同じ場合だけではない。異なる業種・業態の会社をM&Aで買収することで、双方の強みを活かしあってシナジー効果が得られることがある。

たとえば、取り扱っている商品が違っても、ターゲットの年代・性別がほぼ同じならば、顧客リストの共有によって事業の売上が伸びる可能性がある。また、製造を行う会社が販売専門の会社をM&Aで買収することで、製造から販売まで一気通貫で請け負えるようになれば、消費者の声を製造に反映させやすくなる。結果として、売上アップにつながる可能性を高められるのだ。

3.新規事業立ち上げに必要な時間を買う

自社の既存事業と異なる新規事業に参入したいと考える経営者は多い。しかし、新規事業の立ち上げには、多大な労力やコスト、時間が必要だ。参入したい事業に関する綿密な市場調査を行い、認知度を高めて販路を拡大し、ゼロからノウハウを蓄積していかなければならない。

M&Aで参入したい事業を行う会社を買収すれば、このような労力を省ける。新規事業立ち上げにかかる時間を買うと言いかえられるだろう。

M&Aの売り手にとってのメリット2つ

売り手・買い手双方のM&Aの目的とあわせて、メリットも確認しておきたい。まず、売り手から見たメリットを2つ解説する。

1.商品・サービスを後世に残せる

M&Aで事業が存続すれば、商品・サービスを後世へと残せる。創業者であれ事業を引き継いだ経営者であれ、事業を存続させていくのは非常に大変なことだ。経営者は覚悟を持って経営に臨んでおり、長年経営する中で、自然と商品・サービスへの愛着もわくだろう。

これまで大切に守り続けてきた商品・サービスを後世に残せるのは、売り手にとってはM&Aの大きなメリットだ。同時に、商品・サービスを愛する顧客の幸福を守れるのだ。

2.従業員の雇用を守れる

廃業を選択した場合、従業員は新たな勤め先を探さなければならない。年齢やスキルにもよるが、必ずしも全ての従業員に好条件の転職先が見つかるとは限らない。長く勤めてくれた従業員の今後が気になり、健康状態に不安を感じつつも、事業を継続している経営者もいるだろう。

M&Aで第三者に事業を引き継げば、基本的に従業員は同じ職場で働ける。雇用契約は会社と従業員の間で結ばれており、M&A後も契約が継続するからだ。信頼できる買い手に従業員を託せれば、安心して心置きなく勇退生活を満喫できるだろう。

M&Aの買い手にとってのメリット2つ

M&Aは、買い手にもたくさんのメリットをもたらす。ここでは、買い手から見たM&Aのメリットを2つ紹介していく。

1.優秀な人材を得られる

会社や事業の成長スピードは、優秀な人材を得られるか否かにかかっているといっても過言ではない。業種にもよるが、優秀な人材の確保は経営において優先度の高い事項だ。M&Aによって、買い手は買収先の会社の優秀な人材を確保できる。

特に、特定の資格や技術力を持つ人材は、普通に募集しても得られないことも多く、新規人材の採用にかかるコストを削減できるのだ。

2.技術力を獲得できる

買収先の会社が持つ技術力を得られるのも、買い手のメリットだ。代表的なものに特許がある。M&Aによって特許権を引き継ぐことで、事業を強化したり新規事業に参入したりできるだろう。

また、買い手の事業内容やM&Aの目的次第で、特許以外にも開発力やノウハウなど、さまざまな無形資産がM&Aのメリットとなる。買い手は、自社が成長するために必要な技術力を整理した上で、買収先の企業の調査をしっかりと行わなければならない。

売り手・買い手のM&Aの目的を達成するためのポイント3つ

売り手・買い手にはそれぞれのM&Aの目的がある。M&Aをスムーズに進めて成功させるためには、お互いのM&Aの目的への理解が欠かせない。ここでは、M&Aの目的を達成するための具体的なポイントを3つ紹介する。

1.トップ面談でお互いの考え方を知る

M&Aでは、まずはお互いに名前を明かさず(ノンネーム)、M&A仲介会社を通して候補探しするのが一般的だ。気になる候補先が見つかって双方が合意したら、社名を明かし(ネームクリア)、トップ面談へと進む。

トップ面談では経営者同士が面談し、M&Aの目的や事業への想い、M&Aで得られるメリットや効果について話し合う。

この時、お互いの考え方を知ることに焦点を当てることが大切だ。売り手が自社を売り込もうと考えたり、買い手が価格など条件面で有利に事を運ぼうとしたりすると、かえってM&Aはうまくいかなくなる。

トップ面談では、お互いの経営感などの価値観に触れ、率直な考えを伝えることが大切だ。同時に、相手の話によく耳を傾け、M&Aに懸ける想いを知る。このように価値観のすり合わせを行うことで、その後のM&Aがスムーズに進み、結果的にお互いの目的を達成することへとつながる。

2.事業内容への理解を深める

M&Aを考えた時、「本当に売却できるだろうか?」「高く売れないのではないか?」と不安になる売り手は多い。また、買収先企業の条件を絞り過ぎて、なかなかいい候補先を見つけられない買い手もいる。

M&Aでは、お互いの事業内容への理解を深めることが欠かせない。売り手側は、買い手の事業を深く知ることで、自社の持つノウハウや技術力、情報が思わぬところで買い手の事業にいい影響を及ぼすと気づくことがある。また、そのことが買い手にうまく伝われば、買い手にも納得感が生まれ、好条件でM&Aが成立するかもしれない。

また、買い手側が買収先を探す時も、初めから条件を狭めすぎるのではなく、売り手の事業内容を広い視野で理解するようにしたい。そうすれば、スケールメリットやシナジー効果に気づきやすくなり、M&Aによる事業成長の可能性が見えてくるだろう。

3.M&A仲介会社を利用する

M&Aの手続きは複雑で、税務・法務・労務などの高度な専門知識が必要とされる。また、利害関係が対立する売り手・買い手だけで条件交渉を進めようとすると、トラブルが発生してM&Aがとん挫することもある。せっかく見つけたM&Aの候補先との縁を、逃してしまうのはもったいないことだ。

M&Aを成功させるためには、専門家であるM&A仲介会社を活用することが大切だ。M&A仲介会社なら、豊富な実績をもとにM&Aのフェーズに合ったアドバイスをしてくれる。また、業種・業態への理解が深いM&A仲介会社なら、思わぬスケールメリットやシナジー効果を提示してくれ、結果的に良いM&Aに結び付くこともある。

M&A仲介会社を選ぶ時は、実績数を重視して選ぶことが大切だ。特に、買い手と売り手各々の業種でのM&Aの実績があるM&A仲介会社だと頼もしい。また、税務・法務・労務などに関して、専門家としっかり連携しているか否かも要チェックだ。あわせて、担当者の熱意や意欲、人柄、相性も確認しておきたい。

M&Aが成功すればお互いの目的を叶えられる

M&Aが成功すれば、売り手にとっても買い手にとってもたくさんのメリットがある。また、売り手・買い手にとどまらず、従業員の生活や顧客の幸福も守れる可能性がある。お互いのM&Aの目的を理解し、M&A仲介会社も活用しながら、M&Aを進めていくようにしたい。

文・THE OWNER編集部

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