本記事は、中村基樹氏、西村聖司氏、河上祐毅氏の著書『CHANGE LEADER 「多様性」と「全員参加」を実現させるリーダーシップの身につけ方』(クロスメディア・パブリッシング)の中から一部を抜粋・編集しています。
目指すべきは「脅威にも強い社会」
「脅威にも強い社会」とは
現在、新型コロナウィルスで世界が未曾有の危機に見舞われています。しかし、これは歴史の観点からみると、あくまで1つの危機に過ぎず、これまでの人類は地球上のさまざまなリスクと戦い、克服してきた、あるいは変化してきた歴史があります。感染症や自然災害など、人の力ではどうにもならない事象について、私たちは今後どう対処するべきなのでしょうか。
1つの答えとしては、脅威に強い社会になることです。
実現の方向性としては、分散化とオンライン化がカギとなってくるのではないかと考えています。アクセンチュアが発表した「都市の『デジタルツイン』の構想と可能性」というレポートでは、次のように述べています。
「例えば、台風や大雨などの災害時には、河川水位・治水設備の稼働状況、孤立地帯、避難施設の収容状況などのモニタリングが考えられる。こうしたデータを踏まえて、堤防の決壊リスクの分析や決壊時の人的・社会的被害のシミュレーション、避難施設や災害時物資の過不足の分析などが行える。また、これらのモニタリング、分析・シミュレーションの結果をもとに、治水設備の自動制御、避難の呼びかけ、避難ルート・移動手段の確保、災害時物資の確保・輸送など、オンライン/オフラインの手段を通じて、リアル空間へのフィードバックまで実現しうる。」
国のレベルでいうと、内閣府が令和2年に発表したスーパーシティ構想があります。これも都市の「デジタルツイン」についての方向性を述べたものと言えるでしょう。
デジタルツインを推進することで、脅威に対して柔軟に、迅速に対応できるようになっていくはずです。
リモートワークとオフィスワークを選択できる社会に
コロナ禍により、人の過密がリスクとして顕在化しました。世界的に見ても、都市への過密傾向は見られるようで、世界人口の55%が都市部に生活しており、2050年には68%になるといわれています。
日本では、首都圏の1都3県に全国の人口の約3割の人が住んでいます。新型コロナの影響で、東京都からの転出者数が過去最高になったとはいえ、転入超過数はいまだに全国1位です。
しかし今後、現在の状況が収束したとしても、満員電車に乗ってオフィスで働く、というスタイルは、(もちろん職種など、個々人の事情により差はあるものの)もはや持続可能とはいえないと私たちは考えます。
一方、完全在宅勤務のワークスタイルでは、経済発展、幸福度の観点で考えると、あまり望ましいとはいえません。そうではなく、個人それぞれが、いかに過密になることを抑制しつつ、快適に暮らしながら、やりがいを持って仕事をしていけるか。それが今、問われているのではないでしょうか。
その実現方法として、まずはリアルのオフィス空間と同様の環境を、バーチャルで違和感なく実現させることが求められます。バーチャル化できない部分については、個社単位で考えるのではなく、複数社横断でのサポートをつくっていくのも必要になるでしょう。
一方で、巣ごもり生活が長続きしないよう、できれば徒歩圏内、遠くても30分以内で移動できるところに分散型のオフィスをつくり、人が集う良さも損なわないような仕組みを設けることも必要になります。会社、個人の状況に応じて、リモート、オフィスを柔軟にスイッチしながら仕事を進めることが望ましいでしょう。
さらにいえば、地方都市も含めた街づくりを見直し、東京一極集中を抑制することも必要になるでしょう。過密でない豊かな住環境のもとで、これまで以上にやりがいを持ち、生産性の高い仕事ができる社会が実現できれば、未来はもっと明るくなるのではないでしょうか。
アクセンチュアの通信・メディア・ハイテク本部マネジング・ディレクターとして活躍後、起業。コンサルティング人材・起業家ネットワークを活かし、さまざまな企業の課題解決、新たな価値創出に邁進中。 趣味は、お気に入りのスマートウォッチ、イヤホン、シューズで走ること。