本記事は、中村基樹氏、西村聖司氏、河上祐毅氏の著書『CHANGE LEADER 「多様性」と「全員参加」を実現させるリーダーシップの身につけ方』(クロスメディア・パブリッシング)の中から一部を抜粋・編集しています。

CHANCE
(画像=PIXTA)

10年に1度のフルモデルチェンジ

どんなスキルを身につけるべきか人生100年時代になり、定年が70歳となった場合、私たちはおよそ50年間働き続けることになります。そうなると、最初に身につけたスキルだけでは行き詰まることは先にもお伝えしました。したがって、定期的に新たなスキルを身につける必要がありますが、まずは10年に1度、意識的に大きくフルモデルチェンジするのが大切です。

仮に50年間働くとして、10年ごとにフルモデルチェンジをし続けられれば、5つもスキルを獲得できるはずです。身につけた5つの強いスキルは、長い期間仕事に従事する人にとって、最強の武器になるでしょう。

新たなスキルを身につける際に重要なのは、それが「お客様の課題解決に貢献する」スキルかどうかです。

そのために、まずは自身の仕事のお客様は誰かを意識していきます。お客様が消費者であっても、企業であっても、必ずどこかに課題があります。その解決に貢献するスキルを身につけることで、貢献している実感につながり、働きがいも感じられるのです。

そこで見つけた課題は、仕事をする上で新たな市場の開拓につながるかもしれませんし、解決できる人が少ない課題であれば、さらに市場価値があがっていくでしょう。

「お客様の課題を解決するために、自分は何を学べば良いのか」、それをいつも頭の片隅に置きながら、日々の仕事に取り組み、お客様の役に立つスキルを10年単位で探すのが大切なのです。

課題の発見をするには、まずはお客様の言葉を逃さず、しっかり受け止めることが大切です。

私たちがコンサルタントとしてお客様と相対する際も、すでにお客様の言葉の中に課題が語られていることが多いものです。消費者の場合でも、消費者調査やアンケートを行いながらも、それを聞き逃したり、目を向けられていなかったということもあるのではないでしょうか。まずはそこから意識し、真摯に向き合うことからスタートしていきます。

身につけたスキルを言語化する

ここまで、コアコンピタンスとして「論理的思考力」「コミュニケーション能力」「困難な状況に打ち勝つ力(タフネス)」を磨く大切さを伝えてきました。実際に私たちも、コンサルタントとして日々仕事をする中で、次のようなスキルを10年スパンで身につけてきた自負があります。

  • プログラミング、システム導入
  • 業務改革、BPR(業務プロセスなどの見直し)、PMO(プロジェクトマネジメントの支援)
  • 経営戦略策定、新規事業戦略策定
  • お客様担当としての課題全般への向き合い、専門家を組成しての解決
  • 起業、会社経営
  • 「xTech」の観点でのさまざまな業界の経営課題解決
  • 異業種のコラボレーションによる新たな価値創出

これらのように、自分にはどのようなスキルがあるのか、常に言語化できるようにしておくのもポイントです。言語化といっても、決して難しいものではなく、「◯◯ができるようになった」という観点から、自分にできることを増やすように意識していきます。

また、そのスキルを身につけた目的も明確にできるようにするのも大切なポイントになります。

例えば、「エンジニアリングスキル」を身につける場合、なぜそれをやるのか、自分の口でいえるようにしなければなりません。「目の前に〇〇の課題がある」「その課題解決のために、このエンジニアリングスキルを身につけなければならない」と納得できてこそ、スキルは身につくものです。そう考えず、反対に「上司にいわれたからこの技術を学ばなければいけない」という心持ちで学習するのでは、習得度も全く違ってくるわけです。

さらに、身につけるスキルの先には、「誰かに貢献する」といった思いが必ずあるべきです。職業に関係なく、課題を解決するために技術やスキルは身につけるものです。スキルや技術を身につけること、勉強すること自体が目的化してしまうと、モチベーションもあがらず、スキルアップの過程もつまらないものになってしまうのです。

5年に1度のマイナーチェンジ

お客様の課題をもとにスキルを獲得する中で、途中で向いていないことに気づいたり、世の中の流れが変わり価値がなくなってしまう、といった事態が起こることもあります。そういった場合は、冷静に状況を俯瞰して、5年に1回を目安に身につけるべきスキルを見直す必要があります。

この見直しの過程で、定めていた目標が市場から求められなかったり、自分には獲得が困難だと判明した際には、勇気を持って軌道修正をすることも大切です。一度決めたからといって、10年間も自分の力にならないスキルを磨き続けても、苦痛でしかありません。

例えば、世界経済フォーラムの“Global Future Council on Education,Gender and Work”の同席議長だったステファン・カスリエル氏やIBMは、スキルの半減期(スキルの価値が半分になるまでの期間)が5年になってきていると主張しています。時代に合わせて新しいスキルを習得することの重要性が、これまで以上に増してきているのです。

確かにこれまでも、環境の変化に対応して、人々は新たなスキルの習得を行ってきました。

19世紀は都市部に人口が集中するとともにオフィスワークをする人が増え、事務作業のスキルを身につける必要性が増しました。

また、20世紀は製造業が全盛であり、工場を円滑に運営する管理スキルや販売・マーケティングなどの専門スキルが重視されました。

21世紀に入り、コロナ禍を経てフリーランスやリモートワークが当たり前になりつつある今、プログラミング、企画、データ分析、営業などのハードスキルに加え、自律的に動き、リモートでも円滑に働くことのできる気遣いやコミュニケーションなどのソフトスキルの重要性が増しています。

コロナで我々の労働環境は大きく変わりましたが、いずれ訪れる未来の到来が早まっただけとも考えられます。

今後も新たな技術や人々の意識の変化により環境が変わり続け、おそらくそのスピードはこれまで以上に早くなることでしょう。その変化についていくためには、少し頑張れば手が届く新たな役に立つスキルが何かを常に探し続けるとともに、習得するための努力を続ける必要があります。

ソフトスキルの変化はハードスキルより緩やかだと思いますが、仕事がリモート中心に変わった人がリモート会議の運営方法を学ぶ必要があったように、環境が変われば新たなスキルが求められるようになります。こちらも常にアンテナを張り、率先して適応することを心がけていくべきでしょう。

CHANGE LEADER 「多様性」と「全員参加」を実現させるリーダーシップの身につけ方
中村基樹
ムーンプライド株式会社代表取締役CEO。
アクセンチュアの通信・メディア・ハイテク本部マネジング・ディレクターとして活躍後、起業。コンサルティング人材・起業家ネットワークを活かし、さまざまな企業の課題解決、新たな価値創出に邁進中。
趣味は、お気に入りのスマートウォッチ、イヤホン、シューズで走ること。
西村聖司
ムーンプライド株式会社代表取締役CMO。
アクセンチュアのCRM戦略グループや通信・メディア・ハイテク本部で、ハイテクメーカーを中心に業務改革や営業力強化等に従事後、起業。中小企業診断士としても活躍中。
休日は、小劇場やミュージカル、ジャンル問わず音楽ライブに足を運びつつ、長年の一口馬主ライフにも余念がない。
河上祐毅
ムーンプライド株式会社取締役CSO。
アクセンチュアの戦略グループ、マクドナルドのマーケティング部門を経て起業。戦略策定やデータ分析に長け、ヘルスケア業界や通信業界に明るい。
最近の趣味は、日曜プログラミングに加え、コテンラジオやThe Pitchなどの音声メディアや書籍を通じて、これまで知らなかった世界に没入すること。

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