本記事は、中村基樹氏、西村聖司氏、河上祐毅氏の著書『CHANGE LEADER 「多様性」と「全員参加」を実現させるリーダーシップの身につけ方』(クロスメディア・パブリッシング)の中から一部を抜粋・編集しています。

苦悩,ビジネスマン
(画像=PIXTA)

成功体験が通用しなくなった

令和の重要課題

私たちが直面する現代は、これまでの成功体験が必ずしも通用はしません。なぜなら、さまざまな変化が同時に起こりすぎているからです。

世の中で重要課題といわれるもので、パッと考えるだけでも、次のようなキーワードが思いつきます。

  • 温暖化抑制、2050年カーボンニュートラル
  • 成熟化社会、大量生産・大量消費の終焉、モノからコト体験
  • デジタライゼーション、グローバリゼーション
  • 少子高齢化、社会保障費増大、労働人口減少
  • 大規模災害、台風・地震・津波などへの備え
  • コロナ禍、新たな生活様式、非接触・非対面

この中でも、デジタライゼーションはとても重要なものの1つです。第1章で述べたGAFAMの急成長も含め、ベンチャーにおいても、デジタライゼーションを足がかりに伸びてきた会社が増えています。さらに、前述したいくつもの課題を解決するドライバーとなるのも、デジタライゼーションなのです。

しかし、日本はデジタライゼーションの波に乗り切れていないという現実があります。

日本においても、このデジタライゼーションという観点で、グローバルレベルで世界中の企業と取り組みをしてきた企業は、その先見の知恵を得たいという要望から頼られていますが、その数は多くありません。

残念ながら、世界と比較すると、日本国内で世界を相手にできるスタートアップ企業がなかなか育ちづらいという現実も、このデジタライゼーションの普及が進んでいないところにも原因があるのではないでしょうか。

ほかにもカギを握るのは、大規模災害やコロナ禍などの危機への対応です。今まさに新型コロナウィルスで世界中が苦しい状況にありますが、自然災害を含め、予期しない突発的な事象にさらされたとき、私たちがどうすべきかという点も問われています。

政府の認識

政府は「我が国の課題と政策運営の基本方向」の中で、次のように提言しています。

第1部 我が国の課題と政策運営の基本方向 ―内閣府

2.高次な成熟経済社会への転換
第2の潮流は、我が国経済社会が一つの段階を終え、より高次な成熟経済社会へ転換しつつあることである。
 我が国経済は、主として海外からの技術導入とその応用により、新しい製品・良質な製品を大量に生産し、内外の市場に販売するというパターンにより、急速な発展を遂げてきた。しかしながら、新製品開発をもたらすような独創的な技術を自ら創出していかなければならないことや、単にモノを製造するばかりでなく、製品・サービスの適切な組合せにより消費者ニーズに対応しなければならないことなど、従来型の発展パターンを続けることは困難となっている。特に、かつて日本が競争力を持っていた大量生産型商品分野においては、東アジアを中心とした海外諸国の競争力の向上が著しい。こうした環境変化の下で、日本経済は、その新たな発展をもたらすような、より高次な経済社会への転換を迫られている。
 さらに、大量生産・大量消費・大量廃棄型の社会経済活動や生活様式のあり方を問い直し、生産と消費のパターンを持続可能なものに変革していく必要がある。
 他方、従来の大量生産指向型経済成長の効率的実現の基礎となっていた企業中心的、集団主義的考え方や行動様式自体、従来型成長パターンを脱却し、新たな経済社会へ転換を図っていく際の阻害要因となりつつあり、また、人々の意識も、そうした考え方や行動様式から脱却し、より個性的で自由な生き方を求めるようになっており、その観点からも、より高次な経済社会への転換が求められている。

この内閣府の発表は、社会的な課題を述べたものですが、一通り読むと、これからの私たちにも欠かせない観点がいくつもあると感じるのではないでしょうか。

「大量生産・大量消費から大きく変わり、消費者が何を求めているかに寄り添わなければならない」「そのためには、多様な考え方を取り入れて、企業を運営していかなければ実現できない」―きっと皆さんも、賛同するところがあるはずです。

成功体験から脱却しよう

日本の戦後最大の成功体験は、高度成長期を支えた大量生産・大量消費でした。これを可能にしたのが、終身雇用に代表される、集団主義的な考え方や行動様式に基づいたシステムでした。

しかし、皆さんもご存じの通り、これはすでに相当前から機能しなくなってきています。東日本大震災、新型コロナウィルスの蔓延など、突発的な事象を目の当たりにして、より変容した世の中に対応しなければいけないと社会全体が気づき始めています。

また、企業もどれだけ多様な組織運営ができるか。そして、個性的で自由な生き方、働き方を組織として認められるかがカギになるでしょう。

多様な組織運営と個人の生き方への取り組みは、どちらかを選択すればいいというものではなく、同時に解決しなければならない問題です。私たち自身が全員、働き手であると同時に消費者です。企業として多様な組織運営をしなければ、多様な人材を集めることもできないですし、そういった人材でなければ、多様な消費者のニーズにも応えられないでしょう。

かつての成功体験にしがみついていては、持続的な成長は得られないのです。

CHANGE LEADER 「多様性」と「全員参加」を実現させるリーダーシップの身につけ方
中村基樹
ムーンプライド株式会社代表取締役CEO。
アクセンチュアの通信・メディア・ハイテク本部マネジング・ディレクターとして活躍後、起業。コンサルティング人材・起業家ネットワークを活かし、さまざまな企業の課題解決、新たな価値創出に邁進中。
趣味は、お気に入りのスマートウォッチ、イヤホン、シューズで走ること。
西村聖司
ムーンプライド株式会社代表取締役CMO。
アクセンチュアのCRM戦略グループや通信・メディア・ハイテク本部で、ハイテクメーカーを中心に業務改革や営業力強化等に従事後、起業。中小企業診断士としても活躍中。
休日は、小劇場やミュージカル、ジャンル問わず音楽ライブに足を運びつつ、長年の一口馬主ライフにも余念がない。
河上祐毅
ムーンプライド株式会社取締役CSO。
アクセンチュアの戦略グループ、マクドナルドのマーケティング部門を経て起業。戦略策定やデータ分析に長け、ヘルスケア業界や通信業界に明るい。
最近の趣味は、日曜プログラミングに加え、コテンラジオやThe Pitchなどの音声メディアや書籍を通じて、これまで知らなかった世界に没入すること。

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