企業事例から学ぶ戦略・戦術のポイント
戦略・戦術の考え方については、大企業の事例も参考になる。多くの事例に目を通せば経験不足も補えるので、策定にあたって不安を抱えている場合はぜひ読み進めてほしい。
【事例1】コスト削減によるコストリーダーシップ戦略の実践/ユニクロ
アパレル大手のユニクロは、世界中の市場でシェアを獲得するためにコストリーダーシップ戦略を実践した。コストリーダーシップ戦略とは、価格面で市場優位性を築く戦略であり、同社はコストを抑えることで安価な製品の提供を実現している。
同社がこのような戦略を実現できた背景には、「SPA」と呼ばれる戦術がある。これは、商品の販売まで(企画・生産・物流・販売)を自社だけで行う手法であり、ユニクロはSPAによって大幅なコスト削減と、独自製品の開発を成功させた。
参考:FAST RETAILING「ユニクロのビジネスモデル」
SPAはあくまで、コストリーダーシップ戦略を成功させるための手段であり、戦術が戦略の達成に結びついている。経営資源が豊富な大企業ならではの計画だが、中小企業でも考え方自体は参考になるだろう。
【事例2】ひとつの戦略に対して多角的な戦術を展開/ローソン
大手コンビニチェーンのローソンは、”新しい便利”を追求した「新・マチのほっとステー
ション」という戦略を打ち出している。これは、グループ全体での持続的な成長を目的として、顧客や従業員、加盟店スタッフなどの利便性を高めるための戦略だ。
戦略を実現するための戦術としては、次のような施策が検討されている。
- 個客を起点としたサプライチェーンの改革
- ベンダー物流の改革
- グループデータの一元利活用
- 理想型の店舗を追求
参考:LAWSON「ローソングループ Challenge 2025の概要」
上記の通り、ローソンはひとつの戦略に対して多角的な戦術を展開している。戦略・戦術は必ずしも1対1である必要はなく、場合によっては複数の戦術を実践した結果、ひとつの戦略を達成できることもある。
【事例3】国内市場での生き残りをかけた集中戦略/スズキ
国内大手の自動車メーカーである『スズキ』は、市場で生き残るために「集中戦略」に取り組んでいる。
集中戦略とは、進出する市場や地域、ターゲットをあえて絞り、特定の顧客のみを引き入れる戦略のこと。スズキはこの戦略を成功させるために、一般的な乗用車に加えてトラックやワゴンの開発にも力を入れてきた。また、同社は新興国市場にも進出をしており、いまやインドで走る自動車の半分はスズキ車と言われている。
参考:スズキ「スズキ、2030年度に向けた成長戦略を発表」
スズキは国内最大の自動車メーカーではないが、その立場を自覚することで効果的な戦略・戦術を打ち出している良い例だ。仮に優れた競争力や経営資源がなくても、同社のように工夫をすれば業界で生き残ることが可能になる。