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(画像=THE OWNER編集部)

上手くファンドを活用し、ファンドをパートナーとして事業承継やIPOを成功させるオーナー企業が増えています。

全4回の当連載記事では実際の事例をもとにオーナー企業がファンドを利用するメリットをインタビュー。オーナーの意向に沿って「山木工業」へ資本参画し、ご要望に沿って「上場企業の傘下にグループ入り」するまでのプロセスに関わったMCPキャピタルのメンバーが語ります。

第4回目で最終回の今回は、前回に引き続き、主担当だったMCPキャピタル永藤氏と副担当だった落合氏、山木工業 代表取締役社長 小峰良介氏に、株式譲渡に向けての過程を振り返っていただきました。
(企画・インタビュー:日本M&Aセンター 大澤卓也、山本拓宜、執筆:山岸裕一、編集構成:上杉桃子)※本インタビューは2021年3月に実施

ファンドが関わっているほうが譲渡時に信頼されやすいメリットも

――イグジット(株式譲渡)について、「このタイミングであれば株式を譲渡できる」というような指標はあるのでしょうか?

MCPキャピタル・永藤(以下、永藤):一般論として、投資時の計画の中で想定していた施策を実行、指標にしていた数字を達成できたタイミングで譲渡準備に入ろう、IPO時にはこの数字を目指そう、という数値設定はあります。

ただ本件では、譲渡オーナー様のご希望で、「大手企業の傘下に加わる」という大きな目標がありました。

山木工業様は、事業面では非常に順調に推移していたため、大手企業の傘下で事業運営していくための「基礎的な体制がある程度整った段階で譲渡の準備を始めよう」と最初から考えていました。

当初の見立てでは、東京オリンピックに向けた需要が建設業界全体を通して一気に高まり、オリンピック後に少し落ち込み、その過程の中で徐々に業界におけるM&Aニーズが高まってくる可能性があると考えていました。そのシナリオに沿ってタイミングを見計らいながら出口戦略を考えていました。

事業承継にファンドを上手く利用せよ! 「家業」から「企業」へ脱皮し東証一部上場企業グループ入りした事例を全公開
(画像=MCPキャピタル株式会社 永藤 貴弘氏/山木工業株式会社 代表取締役社長 小峰 良介氏)

――譲渡オーナー様は、イグジットにどの程度、関わったのでしょうか。

永藤:私たちが勝手に株式譲渡を行うことはありません。投資時に十分に議論しますし、特に引き続き役員として残られている場合にはIPOや最終譲渡の段階でも、譲渡オーナー様の意見を重視しています。

幹部の方々の意見も聞きつつ譲渡オーナー様と相談しながら、譲渡先企業のリストを作成して、当たっていきます。最終的に叶うかどうかはまた別の議論になりますが、基本はそのように進めます。もっとも、今回は譲渡先を大手ゼネコンに絞り込んでいましたので、元々多くの選択肢があったわけではありません。

最終的にオリエンタル白石株式会社という東証一部上場の企業にお声がけし、株式譲渡が決まりました。

――どのような工程を経たのでしょうか。

永藤:我々は、日本M&Aセンター様とは異なり、譲渡候補企業のデータベースを持っているわけではありません。ただ、ファンドという立場上、買収や売却、M&A情報などは毎日入ってきますから、マーケットのニーズは把握しております。その上で、M&Aアドバイザーから案件を紹介していただいたり、水面下で譲渡候補様へ打診を行ったりといった行動をしております。

最終的に関心を持っていただけそうな企業のリストを作成しつつ、深い検討プロセスを経て、最終的な株式譲渡まで進めていきます。

――オリエンタル白石様に声をかけた際の最初の反応はどうだったんでしょうか?

永藤:詳細はお話しできませんが、事業領域・エリア強化という観点から、山木工業様を検討いただけたと理解しております。

打診した当初から好感触で、合意に至るまで6ヶ月ほどで決着いたしました。

――早々の合意に至った理由として、ファンドが企業価値を高め、経営課題が解決されていた点も大きかったのでしょうか?

永藤:上場企業からみると、未上場の企業をグループ会社へ入れることはリスクに感じる方もいらっしゃいます。そこで、M&A検討時には、さまざま点から吟味されるんです。

今回のように、ファンドが一枚噛んでいたということもあって「きちんと精査され、社内体制が整えられている企業」と判断していただけるケースが多くあります。

事業承継にファンドを上手く利用せよ! 「家業」から「企業」へ脱皮し東証一部上場企業グループ入りした事例を全公開
(画像=山木工業株式会社 代表取締役社長 小峰 良介氏)

――譲渡オーナー様はどのような反応でしたか?

永藤:とてもポジティブにとらえてらっしゃいました。東証一部上場企業の傘下のため会社に泊が付きますし、望んでいた規模の企業傘下に加わることができましたので。

小峰:私も以前からオリエンタル白石様を存じておりましたし、先方も私が所属していた中堅ゼネコンをよく知っていただいていたのでスムーズに話がすすみました。

――グループ参画後、どのような変化がありましたか?

小峰:まさに今、社内の新体制構築の真っ只中です。まず、社員の給与を上げました。社員のモチベーションが上がっていて、いい流れにあると思います。

特にこれまで若手がチャレンジに飢えていたこともあり、想定以上に変革のスピードが早いです。

また、大手の傘下に加わったことで仕入れコストが下がる、人事採用がやりやすくなるなどのメリットも加わりました。また、直近では、グループ会社内で人材の融通を利かせられるようにしたいと考えています。

自分たちだけでは難しいIPOもファンドと組めば目指せる可能性も

――最後に、MCPキャピタル様はどのような企業のパートナーになりたいでしょうか?

永藤:ベースの事業がしっかりありながら、既存のビジネスをもう1ステージ上に持っていきたいという考えをお持ちの企業、オーナー様と取り組んでいきたいと思っています。

我々は、変革の意思を持っているオーナー様や企業を全力でサポートしますし、それを実現できるだけの実力があるという自負もございます。

MCPキャピタル・落合(以下、落合):個人的には、弊社の特徴である長期に亘るご支援とIPO実績を生かし、更なる成長を目指す2代目・3代目の若手オーナー様のパートナーにもなりたいと考えております。

事業承継にファンドを上手く利用せよ! 「家業」から「企業」へ脱皮し東証一部上場企業グループ入りした事例を全公開
(画像=MCPキャピタル株式会社 落合 正和氏)

現在コロナ禍で企業を取巻く経営環境は大きく変容しています。今後も変化してゆく環境の中で企業を発展させていきたいと考えられている経営者様はたくさんいらっしゃると思います。

そういった経営者様のパートナーとしてファンドをご活用頂くことで、一緒に新たな成長を目指し、持続的な成長のもとIPOも一つの大きな選択肢として共に歩んでいければと思います。

【編集後記】
大澤:私は長年MCPキャピタル様とプロジェクトをご一緒しておりますが、机上の空論ではなく、しっかりと現場・会社に入り込んで、泥臭く価値向上を行うファンド様だと思っております。とくに中堅企業様の経営支援に強みを持っており、投資当初は一足飛びにIPOが難しい企業様でも、粘り強くサポートし、最終的にIPOを迎えられている事例も出てきております。

時代の流れが一層早くなるなかで、自社単独で成長するのではなく、他社とパートナーシップを組んで、レバレッジをかけた成長をぜひ一つの選択肢として持っていただければと思います。その中で、事業会社だけでなく投資ファンドというパートナー候補をご検討いただく企業様が今後より一層増えていくのではないかと考えております。

もし読者の方のところに投資ファンド様からの提案があれば、入り口から拒否するのではなくまずは提案を聞いてみようというスタンスで、お話を聞いていただければ幸いです。

事業承継にファンドを上手く利用せよ! 「家業」から「企業」へ脱皮し東証一部上場企業グループ入りした事例を全公開
(画像=左から大澤氏、小峰氏、永藤氏、落合氏)

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