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コモディティ投資の「コモディティ(Commodity)」とは、直訳すると「商品」のこと。投資の世界でいう商品とは、天然資源や農産物などといった実物資産のことを指す。株や債券等の伝統的な金融商品への投資だけでなく、リスク分散の観点からコモディティへの投資に注目している方は多いのではないだろうか。株や債券とは異なる形で価格が動くこと、実物資産ゆえにインフレに強いことなど、コモディティ投資は富裕層にとって、有力な投資対象となっている。この記事では、コモディティ投資の基本からメリットとデメリット、さらにそれぞれのコモディティの特徴や具体的な投資方法、税金についての詳細を解説する。
1.コモディティ投資とは?
最初に、コモディティ投資の基本をマスターしておこう。
1.1. コモディティとは?
コモディティ投資の「コモディティ(Commodity)」とは、直訳すると「商品」のことだ。これだけだとあまりにも範囲が広すぎるが、投資の世界でいう商品とは天然資源や農産物などといった実物資産のことを指す。
具体的には金や銀、プラチナといった貴金属、大豆やトウモロコシなどの穀物、原油や天然ガス等のエネルギー資源が、いずれもコモディティに分類される。
1.2. コモディティ投資の概要
コモディティを売買して利益を狙うのがコモディティ投資だが、その方法はさまざまだ。個人投資家がコモディティ投資をするには、以下のような選択肢がある。
- 現物取引(貴金属であればインゴットやコイン、宝飾品など)
- 投資信託
- ETF
- 商品先物
- CFD
コモディティ投資は実物資産への投資を意味するが、その投資方法としては現物取引だけでなく、実物資産を対象とした投資信託やETFもあり、流動性において投資しやすい環境にあるといえる。いずれも証券会社などに口座を開設することで手軽に取引を始めることができる。
2.コモディティ投資のメリット、デメリット
コモディティ投資のメリットとデメリットを整理する。コモディティ投資は、株や債券などの従来からある投資商品とは異なる特徴を持つため、投資を検討するにあたり、メリットだけでなくデメリットもしっかり押さえておきたい。
2.1. コモディティ投資の3つのメリット
コモディティ投資には主に3つのメリットがある。リスク分散やインフレ対策になる点は、特に資産防衛や事業防衛の観点から注目に値する。
[コモディティ投資のメリット1:分散投資に有効]
コモディティは、株式投資やFXなどの投資商品とは異なる変動要因で価格が動いているため、投資によりリスクの分散効果が得られる。たとえば金(ゴールド)は、株と逆相関性があるといわれており、経済の不安定要因が大きくなると株が売られて金が買われやすくなる。こうした逆相関性を活かすと投資のリスクを分散化することができる。
[コモディティ投資のメリット2:インフレ対策になる]
インフレになるとお金の価値が下がり、実物資産の価値が上昇する傾向がある。コモディティはいずれも実物資産なので、コモディティを保有しておくことはインフレ対策になると考えられる。バブル景気の崩壊以降、日本経済は緩やかなデフレ状態が続いているが、近年では徐々に資源価格が高騰する動きが見られる。2021年に起きたウッドショックはその典型で、今後もインフレの到来を感じさせるような出来事が続くかもしれない。コモディティ投資は、それに備えることができる手軽な手段の1つなのだ。
[コモディティ投資のメリット3:本業のリスクヘッジになる]
経営者にとって、事業で使用するエネルギーや材料の価格高騰はリスク要因だ。しかし、コモディティ投資をしておくことで、リスクヘッジにつながる。商品先物は取得価格を固定することができる。これは多くの企業が採用しているリスクヘッジの手法の1つだ。
2.2. コモディティ投資の4つのデメリット
メリットの一方で、コモディティ投資で知っておくべきデメリットを4つ、解説する。
[コモディティ投資のデメリット1:価格変動が読みづらい]
コモディティの価格はそれぞれの商品によって価格の変動要因が異なり、その値動きを予測するのは困難だ。ただ、それゆえにリスク分散効果があるともいえる。
[コモディティ投資のデメリット2:投資先が限定的]
コモディティの投資銘柄には、株式や投資信託のように数千を超えるラインアップがあるわけではない。そのため、投資先の選択肢が少ないことをデメリットに感じる投資家もいる。
[コモディティ投資のデメリット3:金利や配当といったインカム収入がない]
コモディティはそれ自体が収益を生み出すわけではないので、保有しているだけで金利や配当が発生するわけではない。よって、株式などにある配当や分配金といったインカム収入は期待できない。
[コモディティ投資のデメリット4:景気変動にとても敏感]
コモディティの価格は景気変動に強い影響を受ける。2020年4月に原油先物がマイナス価格になったことが市場に衝撃を与えたように、時にはその価格変動が大きすぎて思わぬ損失を招くようなこともあるので、注意が必要だ。
3.コモディティ投資のリスク
コモディティ投資には特有のリスクが3つある。これらは確かにリスクではあるのだが、その特性をきちんと理解することで、チャンスにもつなげられる性質のものでもある。
3.1. コモディティ投資のリスク1:為替変動リスク
コモディティはそれぞれの産地で生産され、輸出される。そのため取引には為替リスクが付きまとう。コモディティ自体の価格では有利な取引ができていても、為替差損が生じる場合があるので、為替レートの動向もしっかりチェックをしよう。
3.2. コモディティ投資のリスク2:天候リスク
コモディティのうち農産物は、天候がその年の作柄に影響を及ぼす。天候不順であれば価格高騰、逆に天候に恵まれて豊作であれば価格下落といった具合だ。数ある金融商品の中で天候の影響を受けるものは珍しいので、コモディティ投資特有のリスクといえる。
3.3. コモディティ投資のリスク3:カントリーリスク
カントリーリスクとは、投資対象としている国や地域の政治的、経済的、社会的なリスクのことだ。政情が不安定になったり、紛争が起きたりするとリスクが一気に高まることがあるほか、経済政策の変更によって、投資に規制がかけられることもリスク要因となる。コモディティ投資では投資先によってはカントリーリスクがあることを忘れてはいけない。
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ZUU Advisorsで自分にピッタリ合った資産アドバイザーを探す4.コモディティの種類と特徴
コモディティ投資の対象となるものには、大きく分けて以下のようなものがある。これらはいずれも個人投資家が手軽に売買可能だ。
4.1. 主なコモディティ投資の種類1:エネルギー
エネルギーの中でも特に活発に売買されているのは、原油と天然ガスだ。原油から生成されるガソリンや灯油は企業活動の「血液」ともいえる資源である。暖房用の燃料として利用されるエネルギーの場合、季節も価格変動の要因となることがある。
4.2. 主なコモディティ投資の種類2:金(ゴールド)
金(ゴールド)は普遍的な価値をもつ安全資産として、コモディティ投資対象の中でも代表格のような存在だ。金の他にもプラチナや銀、パラジウムなどもコモディティ投資の対象商品に含まれる。
4.3. 主なコモディティ投資の種類3:農産物、穀物
世界的に利用される農産物として、大豆やトウモロコシはコモディティ投資対象として広く知られている。理由はいずれも人間の食糧だけでなく家畜の飼料、バイオエタノールの原料にもなるからだ。
5.コモディティに投資できる商品と投資方法
個人投資家がコモディティ投資を始める方法として、ここでは4つの方法を解説しよう。
5.1. コモディティ投資を始める方法1:ETFや投資信託への投資
投資信託やETF(証券取引所に上場している投資信託)の中には、コモディティを運用資産としているものがある。たとえば、以下のような銘柄がある。
- SPDR ゴールド・シェア(GLD):金価格と連動するアメリカのETF
- インベスコ DBアグリカルチャー・ファンド(DBA):農産物価格と連動するアメリカのETF
- eMAXISプラス コモディティインデックス:コモディティ価格の世界的な推移を指数化した「ブルームバーグ商品指数トータルリターン」と連動する投資信託
これらはほんの一例で、この他にもさまざまなコモディティの価格と連動するETFや投資信託がある。これらは証券会社の口座があれば簡単に売買が可能なので、とても手軽なコモディティ投資商品といえる。
5.2. コモディティ投資を始める方法2:商品先物への投資
投資信託やETFと同じく、証券会社の口座で商品先物を売買することができる。レバレッジの仕組みを使って実際の資金よりも規模の大きな投資ができる特徴がある。
5.3. コモディティ投資を始める方法3:現物金への投資
金(ゴールド)の投資は、証券会社だけでなく金地金(きんじがね)を取り扱っている会社でも可能だ。純金積立といって、金を一定額ずつ購入して積み立てていく商品もある。
5.4. コモディティ投資を始める方法4:商品CFD(Contract for Difference:差金決済取引)
ここまでの投資方法は、いずれも何らかの形で実物資産に投資をするものだが、CFDは商品価格や先物価格を「参照」する投資商品だ。そのため、実資産のやり取りは一切ないが、その一方で買いだけでなく売りからもエントリーできるなど、レバレッジを機動的に活用できるといったメリットがある。
6 .コモディティ投資に掛かる税金は?
コモディティ投資は投資手法の一種なので、利益が発生すれば納税義務が生じる。ここではコモディティ投資に関わる税金について解説する。
6.1. コモディティ投資で掛かる税金1:ETFや投資信託への投資
ETFや投資信託での利益は、株やFXで出した利益と同じ扱いになる。譲渡所得として申告分離課税の対象となり、税率は20.315%だ。
6.2. コモディティ投資で掛かる税金2:商品先物、CFDへの投資
商品先物およびCFDで利益が出た場合は、雑所得として取り扱われる。こちらも前項と同じく申告分離課税の対象となり、税率は20.315%だ。
6.3. コモディティ投資で掛かる税金3:現物金への投資
所有している金の価格が上昇し、売却によって利益が出た場合、譲渡所得があるとして総合課税の対象になる。総合課税なので、他の所得と合算して申告することになる。
ただし、現物金の場合は保有期間によって課税額が異なる。保有期間が5年以内であれば売却益から50万円の特別控除分を差し引いた分が課税対象額となり、5年を超えている場合は50万円を差し引いた分のさらに半分が課税対象額となる。つまり、現物金は5年以上保有した方が税金の面では有利になる。これは現物金だけでなく、プラチナや銀の現物であっても同様だ。
まとめ: 資源価格が高騰する中、ポートフォリオの多様化を
コロナ禍からの経済再起動などさまざまな思惑が重なって、資源価格が高止まりしている。これが世界的なインフレ圧力になるとの指摘も多く、コモディティ投資への注目度は今後ますます高くなるだろう。資産防衛の観点からもポートフォリオの多様化はリスクヘッジに有効な手段となり得る。当記事で紹介したように投資の選択肢も広くなっているので、利益を狙うよりもまずはリスク分散の目的で始めてみるのがよいだろう。