本記事は、阿部淳一郎氏の著書『ロジカルティーチング ガツガツしていない若手社員を伸ばす技術』(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています
「仕事よりもプライベート重視」の人の割合は?
「若手とのジェネレーションギャップを感じるんですよ」
こういったことを、若手育成術の研修等の場で、よく耳にします。一人ひとり個性も能力も背景も異なりますから、「イマドキの若者」と一括りにできるものではないというのが私の考え方です。
とはいえ、大まかな傾向値や生きてきた時代背景、就活状況を知っておくと、育成を担ううえで役立つこともあるのではないでしょうか。
そこで、この章では、イマドキの若者の仕事や学びに対する価値観や行動パターンを、調査データに基づきつつ、大学・新卒採用、若手育成に関わる私の実感値も踏まえてお伝えしていきます。
「新人・若手は『誰もが』、一刻も早く成長するために仕事に一心不乱に取り組み、一人前になって貢献するという熱い思いにあふれている」こういった前提に基づいて、育成に取り組んでいる上司・先輩方も多いように私は現場で感じています。
ただ、「誰もが」という点に「ずれ」があります。データ上は、そういった思いを持った人は4人に1人程度です。
次のデータは、春に新入社員に取った「仕事とどう向き合いたいか?」というアンケート調査の結果です。(図4)
▼「残業をしてでもキャリア・能力を高めたい」という回答をした人は約24% ▼「残業よりも自分の時間を確保したい」という回答は約76%
つまり、新人の4人中3人は「仕事よりもプライベート重視」という回答です。
これは私の現場感覚ともフィットしています。大学生の就活支援をしていると「ワークライフバランス」を重視したい傾向が強い学生の多さを顕著に感じます。
「ブラック企業」という言葉が浸透していることもあり、これを避けたい思いが強く、「ワークライフバランス」というキーワードを重視する学生が非常に多いのです。
企業が「ワークライフバランス」を推進する目的は、端的にいえば「生産性を高めるため、従業員が仕事とプライベートのバランスを取れるような工夫をし、心身ともに健康に仕事に取り組めるようにしよう。
そのためには、業務効率を高め、短い時間で高い成果を出してもらおう」ということのはずです。
しかし、こういった背景など一切考えることなく「ワークライフバランス重視の企業=仕事づけにならなくていい企業」という認識のみをしている学生が大半のような印象を受けます。
ちなみに、次のようなデータがあります。(図5)
大学1・2年生が就職したいと思う企業・業種の1位は「地方公務員」です。これは、私の現場感としても同感です。特にコロナ禍になってから、公務員志望の学生が飛躍的に増えた印象があります。
もちろん、地域に貢献する地方公務員の仕事はとても素晴らしいものだと思います。しかし、「地域に貢献する」といった観点がまったくない人が大半なのです。
そういった人たちの志望理由は、「不況下でも安定しているから」「ワークライフバランスが実感できそうだから」「シフト勤務ではなく土日祝休みだから」「ノルマに追われるような仕事ではなさそうだから」といったもの「のみ」しかない場合がほとんどです。
もちろん「安定」や「ワークライフバランス」は、とても大切なことでしょう。ただ、「これが全て」でそれ以外に理由がないのです。
とはいえ、勘違いしてはいけないのは、「自分の時間さえ取れればいい。極力仕事をサボりたい」と思っている人は少ないという点です。
次のデータは、「働くことを通じた『成長』を重要だと感じている人の割合」のデータです。(図6)
10代・20代の平均では8割以上の人が、「成長は重要だ」と考えています。
一方で、下のデータ(図7)からも分かるように「子供が生まれたときには育児休暇を取得したいか」との問いに対して、男性の約8割が「そう思う」と回答しており、その割合は年々増加しています。(女性は98.2%が「そう思う」と回答)
つまり、「仕事を人生の絶対的中心に置きたいわけではない。人生の一部にしかすぎないものであり、プライベートも大切にしたい」と考えている人がが増えていることが分かります。
「オンタイムはきちんと真面目に仕事はしよう。成長もしたい」という価値観の人が多くを占める時代に変化していると考えられるのではないでしょうか。
※画像をクリックするとAmazonに飛びます