本記事は、阿部淳一郎氏の著書『ロジカルティーチング ガツガツしていない若手社員を伸ばす技術』(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています
「お酒の場で指導する」というスタンスがNGだといえる根拠
「昼間、ガツンと叱っても、夜、飲みながらフォローすれば絆はつくれる」
「仕事の後、お酒を飲んで語り合い、議論をしながら、お互いのことを分かりあおう」
最近は減ったように思いますが、このようなお酒の機会が、昔はよくあったのではないでしょうか。(私も20代の頃は、上司から声をかけられ、中野の居酒屋でよくお酒を飲んでいました)
しかし、こういったコミュニケーションスタイルは、(企業カルチャーに左右されますが)万人には好まれなくなってきた事実があります。
次のような調査があります。(図14)
この調査では、新入社員のうち、63.7%の人が新人歓迎会や懇親会などは「必要だと思わない」と回答しています。「普段の仕事帰り」だけでなく「新人歓迎会といったオフィシャルなもの」でさえ不要だと感じている人が多くを占めるようになってきたのです。
ちなみに、テレワークが推進され、物理的距離が離れているからこそ、コミュニケーションを図るうえで、「オンライン飲み会」を開いているケースもあるでしょう。
しかし、このようなデータもあります。(図15)
「会社のオンライン飲み会に参加したいか?」という質問に対しては、約7割の人が、「参加したくない」と回答しています。これらのデータも、私の実感値として同様です。
ここ数年、学生の就活相談で増えたのが「夜、上司から『飲みにいくぞ!』と誘われたとき断ってもまったく問題ない会社はどこですか?」という質問です。
(ちなみに「ランチはひとりで自由に取りたいです。部署の皆で連れだっていくような企業を避けたいのです。どこを見れば判断できますか?」といった質問も増えてきました)
勘違いのないようにお伝えしておくと、「上司や先輩たちとアフターファイブに色々と語り合いたい」と言っている人も一定数います。「好きな人は好き」というのが私の実感値です。だから、それを全否定しているわけではありません。
ただ、留意すべき点は「好き嫌いが明確に分かれている」という点です。「全員がそれを望んでいるわけではない」ということは理解しておく必要があると私は考えています。
とはいえ、コミュニケーションを図るうえで、飲み会・食事会という手段は有効であることも間違いないのではないでしょうか。ゆえに、最近は「ランチ」でこれを実施している企業も多いです。ランチには次のようなメリットがあります。
▼時短勤務の方も参加できるので不公平感がない ▼「お酒なし」につき、飲めない人も余計な気を使わなくて済む
ポイントは、「会社経費で、いち個人としては日常的に食べられないような、少し高級なお弁当を出す」という点です。社内で実施する場合は会社まで配達してもらいます。オンラインの場合は各自の自宅まで配達する手配をかけます。
この形であれば「皆で同じものを食べる」という一体感が生まれますし「普段のランチよりも美味しいものが食べられる」といったメリットもあります。
「上司に飲みに誘われたら、何を差し置いてでも、行くのが当たり前だ。仕事の一環だ。それが上司に対するマナーだ」
こういったカルチャーで育ってきた方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、それは勘違いです。たまたま配属された部署が、そういうカルチャーだっただけであり、まったくマナー違反ではありません。
それどころか、上司・先輩側のハラスメントに当たる可能性も高い行為です。
「時代に合った形のコミュニケーション」の理解も必要です。
「転職」に対する意識はどうなっているのか?
ひと昔前までは、「石の上にも三年」という言葉通り「どんな環境であれ、最低3年は、この会社で頑張る」というのが当たり前のカルチャーとしてあったのではないでしょうか。
しかし、この価値観は既に崩れています。その時代の感覚を持った経営者・上司・先輩の方々は、「自社でずっと頑張っていこうと考えている」ということを前提にしているかもしれません。
もちろん、そういう人もたくさんいます。しかし、全員がそうとは限りません。
次のようなデータがあります。(図16)
新卒入社後、2か月以内に、50%以上の人が「退職を検討した経験がある」と答えています。今は転職サービスにスマホひとつで簡単に登録できる時代です。
次のようなデータもあります。(図17)
2021年の4月に新卒入社し、1か月以内に転職サービスに登録した人の割合は、10年間で約26倍に増えています。
もちろん、「転職を考えた」「転職サービスに登録した」からといって、実際に転職をすることには必ずしもつながらないでしょう。
転職経験がなく、転職サービスを活用した経験もない方の中には、「まだまだ何もできない新人を他で雇うところもないだろう」と思う方もいるかもしれません。
しかし、世は人手不足です。(実際に退職するのが良いか悪いかは別にして)転職サービスの中には「第二新卒」というカテゴリーがあり、「年齢が若い」ということがひとつの武器になる事実もあります。
また、管理職研修の場などで質問するとご存じない方も多いのですが、最近は、就職・転職に関する口コミサイトが存在します。
▼OPENWORK(https://www.vorkers.com/) ▼転職会議(https://jobtalk.jp/) ▼エン ライトハウス(https://en-hyouban.com/) ▼キャリコネ(https://careerconnection.jp/)
たとえば、どこかに外食に行く際、「食べログ」等の口コミサイトを検索し、お客さんとしてそのお店に行かれた方の声を参考にされる方も多いでしょう。
同じように、就職・転職時は、これらの就職・転職口コミサイトを検索し、その会社で働く人の生の声を拾うことができます。
「今の会社は他と比べてどうなのか?」「在籍する意味はあるのか? 転職した方がよいのか?」スマホひとつで、簡単に「生の声」を集められる時代なのです。
こういった価値観を持った人が多いことも知っておいた方が良いのではないでしょうか。(とはいえ、きちんとした育成やコミュニケーションを図っていれば何の問題もありませんが……)
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