みずほ銀行ATMの画像
(画像=PIXTA、ZUU online)

2021年2月から10月にかけて、前代未聞の計8回に渡るシステム障害を引き起こしたみずほ銀行。事はシステムの問題にとどまらず、経営の根幹を成す経営体制にまで及んでいる――。本記事では、ZUU online年末年始特集として、みずほの将来像予測を軸に、DX化が進むメガバンクの行く末を見ていく。

怒り狂う監督官庁

「言うべきことを言わない、言われたことだけしかしない」

「自浄作用が十分に機能しているとは認められない」

「社会インフラの一翼を担う金融機関としての役割を十分に果たせなかったのみならず、日本の決済システムに対する信頼性を損ねた」

金融庁は2021年11月26日、みずほ銀行とみずほフィナンシャルグループ(FG)に対し、業務改善命令を出した。同年2月から10月にかけて、大小合わせて計8回のシステム障害を発生させたことに対する処分だ。検査中であった9月にも業務改善命令を出しており 、一連のシステム障害をめぐる行政処分はこれが2度目だ。

2回にわたってというだけでも極めて異例なことだが、その発表内容がまた異例だった。冒頭で紹介したのはその文言。再発防止策やガバナンス態勢の整備を含んだ業務改善計画の提出要望、経営責任の明確化の要求に加えて、一連のシステム障害の背景や理由についても、あのように一切の容赦もなく表現されていたのだ。これは、行政処分を出したにもかかわらずシステム障害を起こしたみずほに対する「金融庁の怒りが尋常ではないことの表れ」(他のメガバンク幹部)である。

しかもだ。金融庁のみならず、財務省もみずほに対して処分を下している。みずほ銀行に是正措置命令を出したのだ。外国為替取引が遅延した9月30日のシステム障害の際に、マネーロンダリング対策の確認作業を怠って送金を行ったことがその理由だ。1998年の外為法改正後、財務省が銀行に是正措置命令を出すのは今回が初めてのことだ。

当初みずほFGの幹部は、「通常だったら発表しないような障害まで発表しているから多いように見えるが、どの銀行でもあることだ。そこまでたいしたことではない」などとうそぶいていたが、率直に言って、事態を甘く見ていたといわざるを得ない。金融庁や財務省はとんでもなく怒っていたのだ。

社外取締役も問題視

こうした事態を受けてみずほFGは、坂井辰史社長、藤原弘治頭取が辞任すると発表。トップのほかにシステム担当の石井哲執行役とコンプライアンス担当の高田政臣執行役も辞任するとした。そして、さすがに監督官庁の怒りを重く見てか、みずほFGを牛耳り “天皇”と呼ばれるようになっていた 佐藤康博会長の退任も発表された。2022年4月に会長職を外れ、同年6月で取締役を退く。

みずほFG側はこうしたトップ交代で経営責任を明確化したという構えだが、「これにて一件落着」とは到底いきそうもない。というのも、金融庁が今回の処分で特に問題視しているのが、みずほのガバナンス、特に監督体制について、だからだ。

みずほFGは取締役13人のうち、6人が社外取締役だ。委員会等設置会社で、こうした社外取締役が中心の指名委員会やリスク委員会、監査委員会を名指しで「問題だ」と指摘しているのだ。

「金融庁は、執行側の取締役の首をすげ替えても意味がないと考えている。なぜなら、そうした取締役を決めているのが、社外取締役を中心とする指名委員会だからだ。しかも、一連のシステム障害を見過ごしてきた責任についても重く見ており、社外取締役を含めたすべての取締役を刷新しろとまで思っている節がある」と金融関係者は明かす。

それだけではない。