富裕層が金融商品でポートフォリオを組む時に、必ずといってよいほど組み込むのが債券だ。しかし、債券は株式と並ぶ2大金融商品であるにもかかわらず、株式に比べて、メディアで特集されたり、議論の的になったりすることは少ない。
そこで今回は、富裕層を中心に資産運用のアドバイスをしている株式会社Japan Asset Management代表取締役 堀江智生氏に登場してもらい、富裕層への営業現場ではどのような債券提案がされているのか、具体的に聞いていくことにしよう。
高格付けの米ドル債で安定したインカムゲインを狙う
―― 富裕層顧客に対してどのような債券提案をされているか教えてください。
まず、保有する金融資産に対して、6〜8割を債券で持つポートフォリオを提案することが多いです。
債券提案の内容は去年や一昨年から変わっておらず、「格付けがダブルA以上、残存年数30〜40年、米ドル建て、利回り2〜3%」といった利付債をオファーすることが多いですね。いわゆるシニア債(高格付けの低リスク債券)です。弊社の特徴なのかもしれませんが、「2〜3%の利回りでよいので、資産は減らしたくない」というお客様が多いためです。具体的な銘柄で言うと、アップル、マイクロソフトといった銘柄ですね。
年齢や年収によってリスクテイクの姿勢は様々ですが、たとえば金融資産で10億円を保有している人で、「リスクを取って利回り7〜8%で運用し、10年で20億にしたい」という人はあまりいらっしゃいません。もちろんゼロではありませんので、そのような場合は、劣後債などをポートフォリオに組み込むことはあります。新興国通貨は、基本的にこちらから提案することはありません。
―― 富裕層が債券運用する際は、個別銘柄で持つケースが多いのでしょうか? ETFで持つケースが多いのでしょうか?
弊社のお客様は、個別銘柄で持つケースが多いですね。少なくとも、私たちから「ETFで持ちましょう」と提案することは多くありません。ETFですと、どうしてもマーケットリスクを背負ってしまいますが、個別銘柄であれば、償還まで持ち切れば元本を確保することができます。
「資産運用は分散が大事」とよく言いますが、格付けが高ければ、そこまで分散を気にしなくてもよいと思っています。分散すると、「なんとなくの安心感」は出るかもしれませんが、それは資産運用の本質ではないと思います。それよりも「まずはちゃんと格付けを見ましょう」とお伝えしています。格付けが高い場合は、3銘柄くらいに分けて持つことが多いですね。
反対に、「利回りを上げたいので格付けが低い債券を持つ」という場合は、格付けが低い債券の1つあたりの金額を小さくして、銘柄を細かく分けるようにしています。最大10銘柄くらいに分散しますね。
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意図的に米ドルを多めに持つことを推奨
―― 2022年からはFRBが利上げを実行する可能性があります。提案内容には何か変化はありますか?