これまで未上場企業への投資は、ベンチャーキャピタルや未上場企業投資のマーケットにコネクションのある一部の富裕層などに限定されていた。その状況を一気に変えようとしているのが「株式投資型クラウドファンディング(Equity Crowd Funding:ECF)」。投資家はクラウドファンディング(CF)のスキームを通じて、これから大きな成長が期待できる未上場企業に“小口資金で”投資することが可能となる。今回の特集は、株式投資型CF事業を展開する2社の代表にインタビューを行い、その魅力や将来への展望などを語ってもらった。

株式投資型クラウドファンディング
(画像=PIXTA、ZUU online)
安田次郎氏
安田次郎 Jiro Yasuda
ユニコーン代表取締役CEO
国際証券(現三菱UFJモルガンスタンレー証券)にて、本邦企業の資本政策・資金調達やIR戦略の立案、執行に従事。その後、クレディ・スイス証券、リーマン・ブラザーズ証券の株式資本市場部に籍を置き、国内外における株式及び株式関連の資金調達(IPO含む)において数多くの主幹事案件を担当した。野村證券移籍後は、第三者割当型の資金調達や、事業会社が保有する株式の売却や自社株買いなどの案件について、デリバティブ(金融派生商品)を活用したソリューション提供業務を手掛けた。2019年2月より現職。

新たな間接金融の手法として注目度が上がっている「株式投資型クラウドファンディング」

株式投資型クラウドファンディングはクラウドファンディングの一種で、2015年5月の金融商品取引法改正によって解禁された。実際に案件1号がスタートしたのは2年後の2017年4月。まだ産声を上げたばかりの金融商品だ。2017年以降、成立件数や募集総額がジワジワと増え、2021年10月の段階で成立件数は累計で258件、調達金額も同84億円程度まで拡大した。従来、個人や企業が事業を行う際、資金調達の方法として最もメジャーなのは間接金融(銀行融資)だが、株式投資型CFは銀行融資に代わる資金調達の1つであり、新たな直接金融の手法として注目度が上がっている。

株式型クラウドファンディング市場の推移

そもそも「クラウドファンディング」とは、「群衆」を意味する「crowd」と「資金調達」を意味する「funding」が組み合わさってできた造語。個人や事業者がCF事業者を介して不特定多数の人々から事業資金を調達する手法だ。一口にクラウドファンディングといってもいくつかの種類がある。プロジェクト起案者の商品開発や販売を金銭的に支援し、その支援に対して商品やサービスを受け取る「購入型」、起案者の取り組みなどに寄付を行う「寄付型」、企業に融資し、金利や特典を受け取る「融資型(ソーシャルレンディング)」などだ。ECFも、そうした数あるクラウドファンディングの中の1つである。

ECF事業を展開するユニコーンの安田次郎CEO(最高経営責任者)は、現在のECF市場について次のように述べる。

「右肩上がりで伸びているとはいえ、日本の市場規模は100億円以下と小さく、資金を調達する事業者側、支援・出資する投資家側ともに、まだECFの存在そのものが広く知られていないのが現状でしょう。海外に目を向けると、英国ではECFの投資額が2018年に10億ポンド(約1500億円)を突破するなど、ベンチャーキャピタルの投資額と肩を並べるほど普及が進んでいます。英国のECFでは実際に大きなリターンが発生した実績が複数ありますから、それがさらにECFの普及を促している側面があるでしょう」

現在、新型コロナウイルスによって多くの経済活動に支障が出ているのは周知の通りだが、安田氏は「ECFはコロナ禍の環境にもマッチしている」と指摘する。どういうことか。