金融機関が金利を決定する要素
融資の金利は、金融機関独自の審査結果や蓄積されたデータで決定するため、日本政策金融公庫や信用保証協会の保証付融資などの制度融資は別にして、各金融機関のプロパー融資の金利は財務内容や企業の取引実績などで変わるため、一般的に公表されていない。
金利の計算方法
・原則的な計算方法(年利・利率)
銀行融資の金利は、元金に対する利息の割合(利率)であり「年〇〇%」などと表示される。利息は借り手が貸し手にその対価として支払う金銭で「〇〇円」と表示される。実質年率では、元金以外に支払う必要がある利息、手数料などの諸費用を含めた金利となる。基本的な金利と利息の関係は、以下の計算式を見れば分かるだろう。
- 利息=借入残高(元本)×金利(実質年率)÷365日×借入日数
・元金均等返済と元利均等返済の違い
融資を受けて返済していく方法には、利息の計算方法が異なる「元利均等返済」と「元金均等返済」の2種類がある。
【元金均等返済】
「毎月一定額の元金」を返済していく返済方法だ。原則返済初月から最終月までの「毎月一定額の元金」を返済し続け、毎月の返済額は「借入金額を返済回数で割った金額に利息を加えた金額」となる。利息部分は融資残高に対して計算するため、返済当初は毎月の返済金額が大きくなるのが特徴だ。しかし返済が進むにつれて元金が減少するため、利息が少なくなる分だけ毎月の返済金額が少なくなる。
例えば300万円を10回で返済した場合、毎月の返済額は「30万円+利息」。完済までの利息の総支払額は、元利均等返済よりも毎月確実に一定の元金が減少する元金均等返済のほうが少なくなる。事業性資金の融資では、元金均等返済となることが多い。
【元利均等返済】
利息と返済元金を含んだ「毎月の返済金額が一定」となる返済方法。原則返済初月から最終月まで借入期間中は、同額を返済し続けることになる。毎月の返済額の内訳で見ると返済当初は、利息の割合が大きく返済が進むにつれて元金を返済する割合が大きくなるのが特徴。例えば毎月の返済額が「30万円」とすれば30万円の中に返済元金と利息が含まれていることになる。
住宅ローンのように借入期間が長期に及ぶ場合には、返済計画が立てやすいように元利均等返済を選ぶことが多い。
一般的な金利を決める要素とは
銀行などの金融機関が金利を決定する際に考慮する主な要素は以下の4つ。つまり1~4までの要素の合計が理論上の金利となる。
・1.金融機関の資金調達のコスト
顧客から集めた預金に対して支払う利息や日銀から各金融機関が資金を調達する際に支払う利息、調達コストのことである。
・2.デフォルト(貸し倒れ)のリスク
企業が倒産して融資した資金を回収できなければ金融機関は大きな損失を被る。企業の信用が低い場合は、デフォルトするリスクが高くなるため、金利が高めに設定されるのが一般的だ。金利は融資先が倒産した場合の損失を補うためのものでもある。そのため金融機関は企業の信用度を独自に分類し、倒産する確率を過去のデータ・実績から計算して割り出しているのだ。
・3.金融機関の経費
設備やシステム、人件費などの事業経費と諸経費を金利に上乗せする必要がある。
・4.金融機関の利益
金融機関にとっての収益源は融資で得られる利息。利益の大半は、顧客に融資した際の利息となるため、金利には金融機関の利益が上乗せされる。
借入期間や保全(担保)によっても金利は異なる
・固定金利と変動金利の違い
借入時に決めた一定の金利が返済期日まで適用されるのが固定金利の特徴。金利上昇の局面では、有利だが返済が終わるまで金利が変わらないということは、金利下降の局面でデメリットとなる。日本政策金融公庫や信用保証協会の保証付融資のような制度融資では、固定金利が多い。また金融機関によって2年・3年・5年・10年などの一定期間、固定金利を選択できるタイプもある。
変動金利では銀行など金融機関が独自に決めた短期プライムレート(最優遇貸出金利)などを基準に、経済情勢の変化などによって常に金利の見直しが行われる。金利は市中金利(金融機関同士がお金の貸し借りをするときに適用される金利であり、市場金利などとも呼ばれる)に連動する調達コストをベースにしており、日銀の政策金利に大きく影響される。
そのため市中金利が急騰すれば利率が引き上げられることになる。プロパー融資などでは、期間1年を超える融資は、金融機関にとってリスクが少ない変動金利とするケースが多い。
・担保とは?
担保とは債務者が返済できない場合に備えて、あらかじめ不動産などの財産に抵当権や根抵当権を設定し、債務者が返済できなくなった場合には所有財産から貸付金を回収するためのもの。不動産に限らず株式のような有価証券や売掛金を担保にすることも可能だ。また連帯保証人などは、人的担保などとも呼ばれる。
融資金額が高額となる場合には、不動産担保の提供を条件にされることも少なくない。その場合は、担保とする不動産の価値が審査するうえで重要となる。不動産担保があると金融機関は「保全が取れればリスクは少ない」と判断し、低金利の融資となるケースもあるだろう。