本記事は、平石直之氏の著書『超ファシリテーション力』(アスコム)の中から一部を抜粋・編集しています

Q トチったり、言い間違えたり、会議でミスってしまったときは?

会議
(画像=mits/PIXTA)

A 失敗もチャーミングに! しくじったあとの振る舞いが大切。

●何事もなかったかのように次に進むか、お詫びが必要か、速やかに判断を

大前提として、ちょっとした言葉の端を言い間違えてしまったり、期せずしておかしな言葉になってしまったり、いわゆる〝噛む〞ことを恐れすぎる必要はありません。

ミスが出てしまうことは、訓練を積んだプロのアナウンサーでもしばしば起きることです。

むしろ、ささやかな言い間違いを気にしすぎるあまり、ファシリテーターがその後もオドオドと落ち着かなくなってしまうようでは、会議全体の雰囲気に影響してしまい、そちらのほうがよほど問題でしょう。

とはいうものの、実際にミスをしたときの気まずさと情けなさを経験すると、なんとか失敗を避けたいと思う気持ちもよくわかります。

そんなときに思い起こすのは、かつて先輩アナウンサーから教えられた、「どうせ噛むならチャーミングに噛め」という言葉です。

これは画面内における見栄えの問題でもあり、言い間違えてしまったりした様子が変に痛々しく見えるようではいけません。その様子を見ている人たちにとっても、居心地の悪いものとなってしまうからです。

実際、テレビでアナウンサーがミスをする姿は珍しいものではなく、事後の対応が上手な人こそ、その人への信頼感や安心感が深まるものです。

つまり、重要なのは失敗しないことではなく、しくじった直後の振る舞い方なのです。

気にならない程度の小さなミスであれば、何事もなかったかのように、堂々とそのまま次へと進めていけば、動じない姿勢がミスをカバーしてくれます。一方で、気まずいレベルのミスが出たときには、速やかに「失礼しました」とひと言お詫びをして本題に戻れば、参加者たちもあとを引きずらずに内容に集中できるでしょう。

さらに、話しているテーマや失敗の内容次第では、ミスを笑いに転換できたり、場を和ませたりできるケースもあります。人間は失敗するものだという前提に立ち、ミスしたときには、内面に込み上げてくる恥ずかしさを乗り越えて、「いまこそが見せ場だ」という強い気持ちで対処したいものです。

また、言い間違いを恐れるあまり、あらかじめ進行のシナリオをしっかりと文章化して会議に臨む人もいるかもしれませんが、これには一長一短があります。

「本日は○○について議論したいと思います―」と手元に原稿を用意しておけば、たしかに安心感にはつながりますが、その反面、どうしても堅苦しい雰囲気になってしまいます。

最低限の原稿を準備しておくにしても、「さあ、それでは始めましょうか」と、できるだけ自然体で、そして会話をするかのように自分の言葉で進行することができれば、ちょっとしたミスもおのずと気にならなくなるのではないでしょうか。

過度にミスを恐れる必要はありません。ミスをしても動じない。お詫びが必要なときは速やかに。どうせ失敗するならチャーミングに。

そんな意識を持って、ぜひリラックスして会議に臨んでください。

超ファシリテーション力
平石直之(ひらいし・なおゆき)
テレビ朝日アナウンサー。「ABEMA Prime」の進行を担当。1974年、大阪府松原市生まれ。佐賀県鹿島市育ち。早稲田大学政治経済学部を卒業後、テレビ朝日に入社。報道・情報番組を中心に、「地球まるごとTV」「やじうまテレビ!」などでMCを務め、「ニュースステーション」「スーパーJチャンネル」「サンデー・フロントライン」「報道ステーション」などでは、キャスターおよびフィールドリポーターとして全国各地を飛び回る。訪れた地は全47都道府県。2004年6月から1年間、ニューヨーク支局に勤務し、イチロー選手(当時)が年間最多安打記録を打ち立てた歴史的な試合や、アメリカ大統領選を取材。帰国後に「数字が読めるアナウンサー」を目指し、独学で8カ月かけて簿記3級と2級を取得。2019年から新しい未来のテレビABEMAの報道番組「ABEMA Prime」の進行を担当。“論破王"と呼ばれるひろゆき氏との軽快なかけあいや、ジャーナリスト・佐々木俊尚氏との熱い議論など、アナウンサーという枠を超え、ファシリテーターとしての役割を存分に発揮。個性が強い出演者たちを巧みにまとめ上げる、“アベプラの猛獣使い"として番組を大いに盛り立てている。特技はテニス。学生時代はテニススクールのインストラクターのアルバイトで、コミュニケーションスキルを磨いた。自他ともに認めるスイーツ男子で、愛猫家の一面も。また、大学の卒業旅行で中国のゆかりの地をめぐった“三国志マニア"で、本、映画、連続ドラマ、ゲームなど、あらゆる形でこよなく愛する。Twitterアカウント @naohiraishi

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