本記事は、平石直之氏の著書『超ファシリテーション力』(アスコム)の中から一部を抜粋・編集しています

論点整理に欠かせない要約のコツは、「見出し」を考えるイメージ。

要点
(画像=bee/PIXTA)

●すべてを頭に入れておこうとするのはむしろ混乱のもと

実際の会議で、アジェンダに沿って議論を深めていくには論点や狙いを明確にしておかなくてはならず、そのためにも事前の準備は欠かせません。

あらかじめその日のテーマに関する情報収集にあたる際、ただ単に集めるだけでは頭がパンパンの状態になり、人の意見を聞いても、何が重要なのかや、その話が論点からズレているのかなどを判断することができません。

そこで、膨大な資料や情報のなかから、大切なものを抽出して整理する「要約」が必要になります。ファシリテーターがこれをおろそかにすると、複数の人の意見を的確にまとめることができず、議論が迷走してしまいます。

この点については私の場合、ツイッターでその日の番組の告知を考えることが、とても役立っています。今日はどのようなテーマが設定されていて、それについて何を話し合うのかを140字にまとめる作業は、まさに論点整理そのもの。コツはテーマごとの「見出し」を考えるイメージです。

こうした要約力は、日頃から意識的に鍛えることで、その精度は上がっていきます。事前にその日のアジェンダを要約して箇条書きにする習慣をつけるだけでも、会議の進め方は格段に変わるはずです。

ポイントは、いったん情報を集めたあとは、枝葉をバッサリ切り落とし、幹(議論の核)となる本当に大切な最低限の要素だけを残し、頭がスッキリした状態で本番に臨むことです。せっかく集めた情報なので、あれもこれも覚えておきたいとなりがちですが、詰め込みすぎると何が重要なのかが自分でもわからなくなり、ファシリテーションの迷いや混乱につながるので注意が必要です。すべてを頭に入れようとしなくても、集めた情報に一度でも目を通しておくことで、「そんなこともあったな」と会議の場で意味を持ってくるはずですので、そこは自信を持って臨んでください。

こうして論点を頭に叩き込んだうえで、次に、本番で議論を整理しながら深めていく、発言者への問いかけの言葉を用意しておきましょう。

具体的には、次のような言葉で「言い換え」を促していきます。

「たとえばどのようなことですか?」
「具体的に言うと?」
「なぜそう思うのですか?」
「ほかにはどんなことが挙げられますか?」

こうした合いの手を挟むことで、相手の発言はより具体的になり、思いの背景を知ることができ、その場にいる全員が共有しやすくなります。

ファシリテーションの理想は、できる限りの準備で論点や狙いを明確にして、本番では頭をスッキリさせた状態で、参加者たちの声に耳を傾けるイメージです。

資料や情報を集めるだけでは混乱のもとです。会議までの持ち時間を逆算して、最後に頭を整理する時間をきちんと確保することが成功の秘訣です。

超ファシリテーション力
平石直之(ひらいし・なおゆき)
テレビ朝日アナウンサー。「ABEMA Prime」の進行を担当。1974年、大阪府松原市生まれ。佐賀県鹿島市育ち。早稲田大学政治経済学部を卒業後、テレビ朝日に入社。報道・情報番組を中心に、「地球まるごとTV」「やじうまテレビ!」などでMCを務め、「ニュースステーション」「スーパーJチャンネル」「サンデー・フロントライン」「報道ステーション」などでは、キャスターおよびフィールドリポーターとして全国各地を飛び回る。訪れた地は全47都道府県。2004年6月から1年間、ニューヨーク支局に勤務し、イチロー選手(当時)が年間最多安打記録を打ち立てた歴史的な試合や、アメリカ大統領選を取材。帰国後に「数字が読めるアナウンサー」を目指し、独学で8カ月かけて簿記3級と2級を取得。2019年から新しい未来のテレビABEMAの報道番組「ABEMA Prime」の進行を担当。“論破王"と呼ばれるひろゆき氏との軽快なかけあいや、ジャーナリスト・佐々木俊尚氏との熱い議論など、アナウンサーという枠を超え、ファシリテーターとしての役割を存分に発揮。個性が強い出演者たちを巧みにまとめ上げる、“アベプラの猛獣使い"として番組を大いに盛り立てている。特技はテニス。学生時代はテニススクールのインストラクターのアルバイトで、コミュニケーションスキルを磨いた。自他ともに認めるスイーツ男子で、愛猫家の一面も。また、大学の卒業旅行で中国のゆかりの地をめぐった“三国志マニア"で、本、映画、連続ドラマ、ゲームなど、あらゆる形でこよなく愛する。Twitterアカウント @naohiraishi

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