本記事は、平石直之氏の著書『超ファシリテーション力』(アスコム)の中から一部を抜粋・編集しています

Q 時間内にすべての議論を終えるコツは?

会議
(画像=Graphs/PIXTA)

A 言いたいことがある人には先に言わせることで、その後の時間をコントロールしやすくなる。

●話したい人の口封じは逆効果! 先に言わせて、ほかの人の発言時間を確保

決められた時間内にすべての議題を消化するのは、意外に難しいことです。

会議が盛り上がればなおさらで、参加者たちが言いたいことをすべて言おうとすれば、タイムオーバーはまず避けられません。

一方で、言いたいことがたくさんある人の発言時間がそれなりに長くなってしまうのは、やむをえないことでもあります。

たとえばマンションの管理組合の会合で、建物の大規模改修を控え、その詳細を詰めなければならない場合。

スケジュールや予算、そしてどこをどのように改修するかという仕様について話し合わなければなりませんが、期間も金額も大きく、簡単には決められません。仕様にしても、住民それぞれで好みや希望は異なりますから、全戸の意見を取りまとめるのはたいへんなことです。

ただでさえ決定しにくい議題を抱えているのに、おしゃべり好きな人たちによって議論がたびたび脱線してしまい、結局、ほとんど進捗のないまま翌月の会議に持ち越し―。これではあまりにも非効率的です。

そこで、話し合うべき議題をあらかじめ整理し、論点を明確にしながら進行できるファシリテーターが必要になるわけですが、いかにして一部のおしゃべり好きの人の発言を適度に抑えていき、ほかの参加者たちの発言機会を確保していくのかが課題となります。

ここは逆転の発想です。

しゃべりたい人の口を最初から封じるのは、じつは得策ではありません。かえって不満を溜め込み、会話の隙間を見つけるたびに「ああでもない」「こうでもない」と口を挟んでくることになるでしょう。

そこで、逆に早い段階でひとしきりしゃべってもらったほうが、その後の進行が楽になります。

「では○○さん、今回の改修について、考えていることを教えていただけますか」

そう言って時間を与えれば、喜んで話し始めます。話がループしだしたり、脱線し始めたら、「なるほど〜、一方で予算についてはどうお考えですか」などと、無駄なく意見を聞き取っていきます。そして、聞くべきことを網羅できたと思ったら、「わかりました。ありがとうございます」と引き取れば、ひとまず本人に満足してもらえるはずです。

その後も他人の意見に口を挟もうとする場合は、「○○さん、わかりました。のちほどご意見をうかがいますので、しばらくお待ちください」と制すれば、最初にそれなりの発言時間を確保してもらえているので、引き下がってくれるはずです。また、その人にとって瞬間的に思いついたことを述べるのではなく、いったん考えを整理する時間にもなります。

それでも割って入ろうとする場合は、「○○さんのご意見は先ほどうかがいましたので、ほかの方のご意見もうかがっていきます。時間も限られていますので、ご理解ください」などと発言を制し、それでもなお続く場合は、「○○さん、マナー違反です」とピシャリと言わなければ、会議の秩序は保てません。

そして、参加者たちの意見をきちんと拾えたところで、「○○さん、お待たせいたしました。ここまででおっしゃりたいことがあれば、お聞かせください」と水を向ければ、言いたいことを整理した形で話してくれるはずです。

発言時間をきちんと確保していることが伝われば、「そろそろ時間が迫ってきたので、結論を出していきましょう」と、幕引きに向けての誘導もしやすくなるはずです。

全体の時間を意識しながら、どのくらいの配分で、参加者たちに意見を聞いていくのか、声の大きい人、そうでない人の様子を見ながら、会議をコントロールしていくこともファシリテーションの重要な要素の1つです。

超ファシリテーション力
平石直之(ひらいし・なおゆき)
テレビ朝日アナウンサー。「ABEMA Prime」の進行を担当。1974年、大阪府松原市生まれ。佐賀県鹿島市育ち。早稲田大学政治経済学部を卒業後、テレビ朝日に入社。報道・情報番組を中心に、「地球まるごとTV」「やじうまテレビ!」などでMCを務め、「ニュースステーション」「スーパーJチャンネル」「サンデー・フロントライン」「報道ステーション」などでは、キャスターおよびフィールドリポーターとして全国各地を飛び回る。訪れた地は全47都道府県。2004年6月から1年間、ニューヨーク支局に勤務し、イチロー選手(当時)が年間最多安打記録を打ち立てた歴史的な試合や、アメリカ大統領選を取材。帰国後に「数字が読めるアナウンサー」を目指し、独学で8カ月かけて簿記3級と2級を取得。2019年から新しい未来のテレビABEMAの報道番組「ABEMA Prime」の進行を担当。“論破王"と呼ばれるひろゆき氏との軽快なかけあいや、ジャーナリスト・佐々木俊尚氏との熱い議論など、アナウンサーという枠を超え、ファシリテーターとしての役割を存分に発揮。個性が強い出演者たちを巧みにまとめ上げる、“アベプラの猛獣使い"として番組を大いに盛り立てている。特技はテニス。学生時代はテニススクールのインストラクターのアルバイトで、コミュニケーションスキルを磨いた。自他ともに認めるスイーツ男子で、愛猫家の一面も。また、大学の卒業旅行で中国のゆかりの地をめぐった“三国志マニア"で、本、映画、連続ドラマ、ゲームなど、あらゆる形でこよなく愛する。Twitterアカウント @naohiraishi

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