本記事は、平石直之氏の著書『超ファシリテーション力』(アスコム)の中から一部を抜粋・編集しています
Q そもそもファシリテーターとは?
A ファシリテーターの立ち位置は、ひとつにあらず。顔ぶれによって柔軟にアレンジを。
●ファシリテーターとはサッカーのボランチのようなもの
活発な議論を促したり、対立する意見を調整したり、会議をスムーズに進行させることがファシリテーターの役割ですが、じつはその立ち回り方にはいくつものバリエーションがあります。じつをいうと私も、アベプラ出演の際には、その日の出演者の顔ぶれやテーマによって、微妙に立ち位置を変えるように心がけています。
たとえば声が大きく口数の多い論客がそろっている日には、純粋に進行に徹します。
難しいテーマに対し、複数の識者が登場する日なら、私も質問者の1人になることで、内容を噛み砕いて視聴者に伝えられるよう配慮します。
初登場の方や、どちらかといえばおとなしめの出演者が多い日であれば、私自身も積極的に意見を述べて、議論を活性化させることもあります。
つまり、状況によってファシリテーターが担う役割は変化します。
立場を柔軟に変えることで、議論はより効率的に、そして機能的なものになるはずで、単なる司会者との違いはまさにこの点にあると私は考えています。
これは会議においても同様でしょう。出席者の顔ぶれや議題により、ファシリテーターに求められる動きは変わります。
さまざまな意見を出し合う活発な議論が求められているのか。それとも時間内にアジェンダをクリアすることを優先すべきなのか。あるいは、重いテーマについての話し合いを、できるだけ穏便にこなす必要があるのか。
その会議の本質を見極め、それに自分自身をアジャストさせることができれば、ファシリテーションのレベルは大きく上がります。
サッカーに例えるならば、ファシリテーターとは、ボランチのポジションによく似ています。
ゲーム(会議)が始まる時点では、守備寄りのミッドフィルダーとしてゲームメイクに専念し、チームメイト(参加者)がそれぞれの持ち味を活かして活躍できるよう、采配を振ります。
しかし、その日のスタメンによってはいつもより攻撃的な動きが求められることもあるでしょうし、守備に専念すべきときもあるでしょう。
何より、展開が激しく入れ替わるようなら、ボランチはその都度ベストな立ち位置を模索することになります。これはまさしくファシリテーターの役割そのものと言えます。
実際、アベプラでもテーマによって私の視点は大きく異なります。
たとえばビジネスパーソンの悲哀を語るときには会社員の立場から意見を述べますし、コロナ報道について語るときには、メディア側の人間として意見を述べるようにしています。
このように、ファシリテーターがフレキシブルに立ち回れるようになれば、会議のクオリティーは間違いなく向上するでしょう。
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