世界において日本の「置いてけぼり」感が増している状況だ。GDP(国内総生産)の伸び、平均年収の推移、株価の動きなど、欧米や中国と比べると見劣りするケースが、さまざまな数字や指標で目立ってきた。日本は今後も衰退の一途をたどるのか。
日本に関するさまざまな数字・指標を分析
この記事では、GDPの伸び、平均年収の推移、株価の動きをまず紹介し、その後、日本がいま低迷している理由を探っていこうと思う。
20年前と現在のGDPの規模を比較すると?
まずはGDPの推移から。1994年ごろまでは日本もGDPは名目値ベースで順調に右肩上がりの状況が続いていたが、その後は減少と上昇を繰り返し、2018年のGDPはピーク時の1995年よりも規模が小さくなっている。
1997年と2018年のGDPランキングを比較すると以下の通りとなる。
1997年と2018年を比べると、アメリカのGDPは約2.4倍に、中国のGDPは1997年の9,620億ドルから約14.4倍になっている。そしてほぼ横ばい状態の日本は、2018年時点で日本は中国に抜かれており、「世界第2の経済大国」から「世界第3の経済大国」へ変わった。
日米の主要な株価指数を比較すると?
株価の推移も比較してみよう。アメリカの主要な株価指数のひとつである「S&P500」と日本の主要な株価指数の1つである「日経平均株価」を比較してみる。
それぞれの株価指数で1982年11月末を100とした場合、2021年4月には日経平均は364と約3.6倍になったが、S&P500は3,018となっており、なんと約30.1倍にまで指数が上昇している。この間のパフォーマンスは日経平均とS&P500で約8.3倍も違っているわけだ。
ちなみに、2021年の年初来のパフォーマンスで比較すると、S&P500はプラス22.64%となっているが、日経平均がプラス2.83%にとどまっている。いま日本人の間で米国株投資への注目度が高まっているのも、このようなパフォーマンスの違いによるものだ。
日本人の平均年収を昔と比べると?
いまの日本人の平均年収は1990年の平均年収よりも低い。1990年代には平均年収が470万円を越えた年もあったが、2020年は430万円台となっている。このような平均年収の減少が世界のほかの先進国でも起きているかというと、起きていない。
1時間当たりの賃金を消費者物価指数の変化を考慮した上で比較すると、日本は1990年代後半から下がり続けているのに対し、アメリカやドイツなど欧米各国は上がり続けている。そして、アメリカの平均年収はすでに600万円を超え、ルクセンブルクに至っては700万円台だ。
日本は隣国・韓国にも平均年収で負けている。かつて、日本は韓国よりも平均年収が高かった。日本のように世界の先進国の中で平均年収が下落傾向にある国は決して多くない。
原因は複合的、平均年収の場合は?
ここまで3つの切り口で日本の低迷を説明してきた。
これらの低迷を引き起こした原因は極めて複合的だ。平均年収に関して言えば、日本独特の終身雇用制や、日本企業の世界シェアが大きく下がってしまったことなどが、日本の低迷につながっていると言えるだろう。
終身雇用制の企業では能力が高い社員がいても、その人にだけ高い給与を払いにくい。そのため給与の上昇余地が少なく、結果としてなかなか平均年収が上がらなくなっている。
また、日本企業の世界シェアが下がっていることも、間接的に平均年収の低下に結びついている。例えば、半導体や家電の分野では、日本はかつて世界シェアで上位にいた。しかし、現在はシェアを他国の企業に奪われ、いまやランキングの上位に日本企業の名前はまばらだ。
世界シェアが下がれば当然、業績にも悪影響があり、平均年収が下がらざるを得ない。
岸田内閣の今後の経済政策に注目
そして、GDPの成長率の低迷は、日本経済の低迷に他ならない。経済が低迷すれば、平均年収も上がっていかないし、企業の業績も向上しないことから株価も上昇しにくくなる。日本はどのようにしてこの状況を打破すればいいのだろうか。
スティーブ・ジョブズのような世界的起業家が日本から生まれれば、日本経済の起爆剤となるかもしれないが、「政治」でできることもあるはずだ。新首相が誕生した今のタイミングでは、特に政治に対する期待感は小さくない。
岸田内閣は「成長と分配の好循環」をスローガンに掲げている。今後の経済政策に注目したいところだ。
文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)