本記事は、手塚貞治氏の著書『武器としての戦略フレームワーク』(日本実業出版社)の中から一部を抜粋・編集しています。

思考,男性
(画像=PIXTA)

フレームワークは5つに大別できる

フレームワークの本質を理解する

ひとくちにフレームワークと言っても、実に多数のものがあります。一般の文献などで紹介されているものだけでも、数十種類はあるでしょう。しかし、それらを1つひとつ闇雲に覚えていくことには、あまり意味がありません。「それらを丸暗記して闇雲に当てはめてみる」という行為はむしろ危険でさえあります。一見、ビジュアルに整然とまとめることができるために、それだけでわかったような気になってしまうからです。

大切なのは、それらの背景にある思考パターンを理解することです。世にある数多(あまた)のフレームワークは、実は並列化思考、階層化思考、二次元化思考、時系列化思考、円環化思考という5つの思考パターンのいずれかに分類することができます。

したがって、これら5大思考パターンの本質を理解することができれば、フレームワークを正しく使うことができます。

5大思考パターン
(1)並列化思考:要素を列挙して考える
(2)階層化思考:要素のタテのレベル感を揃えて考える
(3)二次元化思考:2軸で考える
(4)時系列化思考:要素を時間の流れで分解して考える
(5)円環化思考:循環するサイクルで考える

5大思考パターンを理解する

並列化思考とは、物事を要素に分解して並列に列挙して網羅する、という思考パターンです。たとえば、経営資源とは「ヒト」「モノ」「カネ」の3要素、といったときの考え方です。列挙すること自体はすぐにでもできるので、一見すると単純ではありますが、「本当に網羅性を確保しているか否か」が問題となります。前述のMECEの観点に対して、よりいっそう留意する必要があります。

階層化思考とは、抽象と具体、全体と部分のように、タテの階層構造の中で網羅的に体系化する思考です。前著『戦略フレームワークの思考法』では、「垂直並列化」として並列化思考の一部に入れていましたが、本書では1つの思考パターンとして独立させて説明していきます。

二次元化思考とは、2つの軸からなるマトリックスを作成し、そのマトリックス平面上の位置づけから考えるということです。これは、日常生活ではあまり使わない思考パターンですので、一般には最も「コンサルタントっぽい」パターンということになるでしょう。

時系列化思考とは、ある物事を時間の流れの中でプロセス化して考えるというものです。人間にとってごく自然な思考パターンの1つでしょう。「先週はあれをした、今週はこうだった、来週は……」ということは、誰でもごく日常的に考えていることだと思います。これは、まさしく時系列化思考です。先ほどの例は、あまりにも卑近(ひきん)ですが、こうした考え方は、経営戦略の世界でも有効な武器となります。

円環化思考とは、循環するサイクルで考えるというものです。人間の思考・行動は、必ずしも直線的に一方向に発展していくものではありません。循環しながら均衡を保つものもありますし、好循環を続けてスパイラルに成長していくものもあります。そこで、本書では、この円環化思考を新たな思考パターンとして着目し、説明をしていきます。

武器としての戦略フレームワーク
(画像=武器としての戦略フレームワーク)
武器としての戦略フレームワーク
手塚 貞治
株式会社日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門 プリンシパル。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。NTTを経て現職。専門は成長企業に対する経営戦略、事業計画策定、IPO支援、IR支援、ワークショップ支援など。著書に『戦略フレームワークの思考法』『「フォロワー」のための競争戦略』『「事業計画書」作成講座』(以上、日本実業出版社)、『経営者のためのIPOを考えたら読む本』(すばる舎)などがある。

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