本記事は、手塚貞治氏の著書『武器としての戦略フレームワーク』(日本実業出版社)の中から一部を抜粋・編集しています。

ひらめき,思考
(画像=PIXTA)

並列化思考の基本

並列化思考とは?

並列化思考」とは、〝物事の要素を並列に並べて網羅する思考パターン〟です。列挙すること自体は誰にでもできるので、一見簡単です。しかし、「並列に並べる」という以外に基準がないため、何でも列挙してしまいがちです。

たとえば、ビジネスに必要なスキルを考えてみましょう。マーケティングや会計という分野であれば、いろいろ列挙できそうです。しかし、本当にビジネスに必要なスキルというのは、「お客様の懐に入る力」とか、「場を読んで発言するセンス」とか、「優先順位を見極める目」とか、そういうものかもしれません。とはいえ、これらを「並列に並べる」のは、容易なことではありません。

つまり、「何を並列とみなせるか」はやさしいようで、まったくやさしくない命題なのです。

さらに、どこまで列挙すれば網羅できるかについても、明確な基準があるわけではありません。したがって、「本当の意味でMECEを確保しているか否か」を絶えず確認しながら検討するという姿勢が、きわめて大切です。

以上のように、並列化思考には絶対的な基準がありません。

「何でも挙げれば勝ち」の世界になりがちです。そこで本書では、下の図に示したような切り口で整理してみます。

武器としての戦略フレームワーク
(画像=武器としての戦略フレームワーク)

「事実」による分類

公知の"「事実」によって分類する"という切り口は、特に余計なことを考えなくてもけっこうです。「タテ」と「ヨコ」、東西南北、日本の47都道府県、春夏秋冬などです。

もちろん、この中でも、東西南北以外に東南とか北西といった方角はありますし、365日を明確に春夏秋冬で切ることはできないという点では連続性があるわけですが、このあたりは一般慣習上で分類できるとみなします。

「法則」による分類

「事実」の次に確実なのが、公知の"「法則」による分類"です。いちばんわかりやすいのが、自然科学の法則に基づくものです。たとえば、次のような法則が挙げられます。

「速度」=「距離」÷「時間」

この法則がある以上、「距離」と「時間」の並列性は担保されます。

社会科学の場合は、法則というものの厳密性が随分ゆるくなってしまいますが、会計・財務などの定量性のある法則であれば、基準として明確です。

たとえば、「売上高」と「利益」、「資本」と「負債」、あるいは製造原価の3要素「材料費」「労務費」「経費」や、財務3表のB/S(貸借対照表)・P/L(損益計算書)・C/F(キャッシュフロー計算書)といった切り口であれば、客観的な並列性が担保できると言えます。

「それ以外」による分類

それ以外の分類"を見ていきましょう。ここに入るものは、基本的に「曖昧(あいまい)なもの」です。

対象物が2つの場合は、比較的容易です。「二項対立」という観点を基準に並列化することができます。たとえば、「定量」と「定性」、「理想」と「現実」、「善」と「悪」、「主観」と「客観」といった形です。もっと単純に言うと、ある言葉が浮かんだときに、その対義語がすぐ浮かぶようなら、OKということです。

そして、問題は、対象物が3つ以上の場合です。ここは一筋縄ではいきません。しかし、3CCや4Pなど、いわゆる戦略策定上のフレームワークは、このゾーンに入るものばかりです。また、「5つの○○」「7つの△△」といったフレーズもよく使われるものですが、まさしくこのゾーンに該当します。

このゾーンの並列化をどうすべきかが、本章のメインテーマとなります。

武器としての戦略フレームワーク
手塚 貞治
株式会社日本総合研究所 リサーチ・コンサルティング部門 プリンシパル。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。NTTを経て現職。専門は成長企業に対する経営戦略、事業計画策定、IPO支援、IR支援、ワークショップ支援など。著書に『戦略フレームワークの思考法』『「フォロワー」のための競争戦略』『「事業計画書」作成講座』(以上、日本実業出版社)、『経営者のためのIPOを考えたら読む本』(すばる舎)などがある。

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