本記事は、手塚貞治氏の著書『武器としての戦略フレームワーク』(日本実業出版社)の中から一部を抜粋・編集しています。
時系列化思考の基本
時系列化思考とは?
「時系列化思考」とは、”ある物事を時間の流れの中で考える思考パターン”です。もう少し具体的に言えば、ある事象をプロセスとして把握し、その中の1つひとつをモジュールに分解して分析する思考パターンです。「起承転結」などという言葉が昔からあるのは、時間の流れの中で考える思考パターンが人間には自然にあるからでしょう。
たとえば、高校生のA君の学習効率向上というテーマを、時系列化思考で考えてみましょう。A君は数学が嫌いではないのですが、イマイチ試験の点数が伸びません。授業態度も真面目で熱心に質問もするし、内容も理解できているつもりです。
そこで、数学の学習ステップを考えながら解決策を検討することにします。まず、標準的な学習の流れをひとつのプロセスとして図示します。たとえば、下図のような感じになると思います。
それに対して、A君の現状はどうでしょうか。A君にヒアリングをしながら、いまの勉強の進め方を教えてもらったところ、上に示した図(下の図)のとおりになりました。
こうしてみると、A君の課題が明らかになりました。つまり、A君の場合は、学習内容の定着(復習)を怠っているということです。短時間ながらも予習をしたうえで授業に臨み、学校での学習態度も真面目ではあり、本人は内容を「理解」したつもりになっていることでしょう。しかし、残念ながら、授業直後の復習を怠っています。
内容をわかったつもりになっていても、実際に自分で手を動かして問題を解くという反復練習をしていないので、自分でアウトプットできるようなレベルまでには達していないということです。このように、「わかったつもりでも解けない」ということは往々にしてありますよね。
つまり、「本当の意味で学習内容が定着しているわけではない」ということです。そして、ある程度期間が経過してしまった試験前に勉強を行なっても、試験で良い結果を得るには不十分なのです。
したがって、A君の場合には、たとえば次のような処方箋を出せるでしょう。
- A君の学習効率向上のための処方箋
- ・授業を受けた日の夜に、30分間は関連した問題を解く
・先生と相談のうえ、自分のレベルに合った問題集を購入する
・授業を受けた日に問題集を解くように、あらかじめ計画を立てる
・できなかった問題はチェックをしておいて、試験前の重点課題とする
このように、時系列化思考は、時間の流れで要素を区切り、その要素ごとに課題を分析していくという考え方です。みなさんも、ごく自然に考えられる思考パターンだと言えます。
では、どのような時系列化思考の使い方があるのか、また、どのようなフレームワークをどう活用すべきかを次節から見ていきましょう。