本記事は、山口雄大氏の著書『この1冊ですべてわかる 需要予測の基本』(日本実業出版社)の中から一部を抜粋・編集しています。

知識,勉強
(画像=PIXTA)

サプライチェーンの役割

可能な限り少ないコストで、モノの安定的な供給を可能にする

物流管理─ロジスティクスからの拡張概念

サプライチェーン(Supply Chain)は、『物流とロジスティクスの基本』(湯浅和夫著/日本実業出版社/2009年)によると、日本語では「供給連鎖」という訳語があてられ、消費者にモノを供給するためのさまざまな機能のつながりを鎖にたとえたものとされています。

以前、私が所属していたSCM部門では、化粧品の原材料の調達を担当する機能から、工場での生産を管理する機能、マーケティング部門と連携して需要を予測する機能、営業部門とコミュニケーションを取りながら全国へ供給する機能など、商品の調達・生産から販売までの情報とモノの流れのマネジメントを担っていました。

モノの流れを管理するという機能については、高度経済成長の終わりと情報管理の高度化の中で、生産性向上を目指し、1975年ごろから「物流管理」という言葉が登場したと、『物流の知識』(宮下正房・中田信哉著/日本経済新聞社/1995年)で述べられています。

その後、「物流管理」は、1960年ごろにアメリカで「ロジスティクス(Logistics)」という概念へと拡張されました。「ロジスティクス」とは元は軍事用語で、日本語で「兵站(へいたん)」と訳されます。戦場において、武器や食料など、前線で戦う兵士に必要なモノを適切なタイミングで届けるという、戦略的なサポート機能です。これが転じて、製造業においては、消費者が必要とするモノを、必要なタイミングで届ける機能を指すようになりました。

単にモノを運ぶという「物流(Physical Distribution)」の機能から、消費者に必要なタイミングで、適切な量のモノを届ける戦略的な「ロジスティクス」の機能へと拡張されたわけです。それが日本で広がっていったのは、1980年代半ばです。

そして、モノの原材料の調達から、生産、物流、販売というロジスティクスの各機能をひとつの鎖とみなし、情報連携を通じて、全体の最適な流れを考えるという「サプライチェーンマネジメント」へと進化しました。

サプライチェーンには複数の企業が含まれることも多く、「ロジスティクス」よりも企業間の連携という面で拡張された概念だと考えられることも多いですが、「サプライチェーンマネジメント」と「ロジスティクス」の明確な線引きにはまだ議論の余地があるようです。

私は、「物流管理」から戦略的な「ロジスティクス」、さらに連携を意識した「サプライチェーンマネジメント」へと、概念が進化してきたと捉えています。

この1冊ですべてわかる 需要予測の基本
山口 雄大
東京都出身。東京工業大学生命理工学部卒業。同大学大学院社会理工学研究科修了(認知科学)。同イノベーションマネジメント研究科ストラテジックSCMコース修了。早稲田大学大学院経営管理研究科修了(フロンティアの経営学)。
資生堂販売株式会社で入出庫、検品、配達等のロジスティクス実務を経験後、株式会社資生堂で10年以上にわたりさまざまなブランドの需要予測を担当。2021年現在はS&OPマネジャー。新商品の需要予測モデルや日別POSデータを使った予測システムの開発、需要マネジメントのしくみ設計や需要予測AIの構築をリードした。
2016年インバウンド需要予測の手法が秘匿発明に認定される。2019年からコンサルティングファームの需要予測アドバイザーに就任。JILS「SCMとマーケティングを結ぶ! 需要予測の基本」講座講師。日本オペレーションズリサーチ学会や経営情報学会で需要予測に関する論文発表を実施。専門誌「ロジスティクスシステム」(日本ロジスティクスシステム協会)に、コラム「知の融合で創造する需要予測のイノベーション」を連載中。
他の著書に『需要予測の戦略的活用』(日本評論社)、『品切れ、過剰在庫を防ぐ技術』(光文社新書)、『全図解 メーカーの仕事』(共著・ダイヤモンド社)がある。

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